近代芸談における技芸用語
主にシテ方の技芸にかかわる用語の索引。姿勢、視線などの重要と思われるトピックのほか、『能楽大事典』(筑摩書房)に立項される技術用語を対象としました。同表記・別意味の語を別に立項した場合(例:「運び」を歩き方と謡い方で別立項)も、逆に同意味・別表記の語をまとめて立項した場合(例:眼、目、目玉)もあります。
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そりかえり【反り返り】
64藤戸の切の句「岩の硲に流れかかつて」と云ふ辺だと思つたが、杖を両手で首へかけて、腰をしつかりグツと伸び上る反り返りのやうな型だつたが、とても凄くつてね。 70丁度正面の見所を後にして舞つてるんだが、流れ足やそり返りなんかしながら後へ下つてくると、今にも階段の所から白洲へ落ちやしないかと思はせるほどひやひやしたもので、その型の激しさときれいさと相俟つて、見所の入々も覚えず膝を乗出した位だつた。 喜多実『演能手記』(1939)- 260但し「大返し」のそり返りはまだ足許が確かでない。
喜多六平太『六平太芸談』(1942)- 178型は、足の拇指が反りかへるやうなハコビでね。
観世左近『能楽随想』(1939)- 100「そのまゝ海に」と三足下つて反りかへりをして下に居て地の「引く汐に」と立つて廻りながら「浮きぬ」と下に居り「沈みぬ」と立ち上ります。
- 78「舟よりかつぱと落汐の」と右へフミ込「底の水屑と沈み行く」と跡ソリカヘリ跡へタラ〳〵とさかりへタリとあぐらかき、尤膝つき下に居か吉」
喜多六平太『六平太芸談』(1942)- 49鷺を増(女面の一種)でやる――増ではソリ返りの型(獅子と乱とに特有な50型)が折合はないだらう。父の尉がいいんだが、やはり直面に限るね。