近代能楽用語索引Index of Nō-related Terms in Modern Texts

近代芸談における技芸用語

主にシテ方の技芸にかかわる用語の索引。姿勢、視線などの重要と思われるトピックのほか、『能楽大事典』(筑摩書房)に立項される技術用語を対象としました。同表記・別意味の語を別に立項した場合(例:「運び」を歩き方と謡い方で別立項)も、逆に同意味・別表記の語をまとめて立項した場合(例:眼、目、目玉)もあります。

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つまさき【爪先】

喜多六平太『六平太芸談』(1942)
  • 67はこびなんかも無論爪先きを上げないで、ただズカリズカリ歩くんだがね。
  • 203能の型に、すつと脚を上げるところがあります。ソレ、ほんものの鷺は、ああいふ風に足がまげられるから、足をおろすときも、爪先きからおろすのだ、かういふやうにと、いろいろ説明をしてくれましたので、それを真似て、足をぬくことだけは賞められるやうになりまレた。
  • 221乱拍子は、御承知の逼り、小鼓の一調に時々笛のアシラヒがはいつて、その小鼓の音と一種底強い掛声とがシテの動作と相互にせりあふといふやうな意気込みのもので、位は極めて静かなものですが、内に籠る力の実にはげしいものです。シテが一歩片方だけ踏み出して、しつかりと踵をとめます、それから爪先きをあげる、その足をやがて外へひねつて、また元に直す、それから今度はその爪先きを下ろして、踵をあげ、ついと足をひく。かういふ型を左、右の足でたがひちがひに繰り返しその型が左足から右足へ戻るたびに右足で拍子を一つ踏みます。これが舞の一段です。
杉山萌圓(夢野久作)『梅津只圓翁伝』(1935)
  • 70現在の型では肩が凝つたり、手首が曲つたり、爪先が動いたりする事を嫌ふ様であるが、翁の稽古の時には全身に凝つていても、又は手首なんか甚だしく曲つてゐても、力が這入つて居りさへすれば端々の事はあまり八釜しく云はなかつた様である。
喜多実『演能手記』(1939)
  • 239幕へ入つてから色々やつて見たら、両膝を狭めて爪先を真つ直ぐに運べばよかつたことに気が付いた。つまり外輪に過ぎたためだつたらしい。尚珍しいことは、いつも初め悪く、舞以後になつてどうやら運びがよくなるのが、反対に、初め良く、後程出来が悪くなつて行つた。