近代能楽用語索引Index of Nō-related Terms in Modern Texts

近代芸談における技芸用語

主にシテ方の技芸にかかわる用語の索引。姿勢、視線などの重要と思われるトピックのほか、『能楽大事典』(筑摩書房)に立項される技術用語を対象としました。同表記・別意味の語を別に立項した場合(例:「運び」を歩き方と謡い方で別立項)も、逆に同意味・別表記の語をまとめて立項した場合(例:眼、目、目玉)もあります。

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のみ【呑ミ】

観世左近編『謡曲大講座 観世清廉口傳集 観世元義口傳集』(1934)
  • 4ウ–5オ[「曲節の名称と扱ひ方」]○呑ミ節 振りしあとの仮名を耳立ぬ様に呑み込み、鼻へ抜かすもので、寸法は廻シと同様なり、所により大小の差ありて大小の文宇を附記してこれを示せども、此の外に特に大呑ミと称する節あり、例へば東岸居士の「聞くものを」のヲの呑み。「何を唯」のダの呑みの類なり。普通の呑ミの頭へ特に一つ突込んで大く謡ふ。
  • 5オ[「曲節の名称と扱ひ方」]○落シ呑ミ 落したるあとの音を呑む謡方。田村の後のクセの「近江路や」のヤの呑ミなどこの例である。
  • 5オ[「曲節の名称と扱ひ方」]○大、小 廻しなり呑みなり其節の大小を示す。
杉山萌圓(夢野久作)『梅津只圓翁伝』(1935)
  • 81翁の処へ稽古に行くと、玄関の上り框の処(机に向つてゐる翁の背後)に在る本箱から一冊引出して開いてくれる。時には、「その本箱を開けてみなさい。その何冊目の本の何と云ふ標題の処を開けてみなさい」と指図する事もあつた。それを最初から一枚ぐらい宛、念を入れて直されながら附けて貰ふので、やはり二度ほど繰り返しても記憶え切れないと叱られるのであつた。その本はたしか安政二年版行の青い表紙で、「ウキ」「ヲサへ」や「ヤヲ」「ヤヲハ」又は廻し節、呑み節を叮嚀に直した墨の痕跡と胡粉の痕跡が処々残つてゐる極めて読みづらい本であつた。此の翁の遺愛の本は現在神奈川県茅ケ崎の野中家に保存して在る筈である。
近藤乾三『さるをがせ』(1940)
  • 158[「難節」]其他当麻の「慈悲加祐」、三輪の「面白や」のやうな、特異に大きな節扱ひもあります。これは拍子の押しが利かないと、中々会得が出来ません。或は養老の「たゞ此水に残れり」の、「り」のツキ節とノミ節と重つたもの、これも特異な節扱ひでせう。猶ほ索めたならばまだ、数々ある事と思ひますが、こゝに一々説明することは、中々容易ではありませんから、夫等は各自師匠のロ授を注意されて、益々研究自得なさるやう希ひます。
野口兼資『黒門町芸話』(1943)
  • 64引きのある場合には引きの前、また引いたあとは大抵運ぶやうであります。心得て居て損はありません。またニベをつけられてあるモチ、モチといふと大概わざとらしくなりますが、これはあからさまに持つたのでは甚だ品の悪いものとなります。つまり一般には持ち過ぎるやうな傾きが御座いますが、持チと云つても殊更にこれを現はすものでは御座いません。又ノミ節も大概は小さいものですから膨れないやうにしなければなりません。