まわし【廻シ】
松本長『松韻秘話』(1936)
- 110–111「キライ節」といふのは「当麻」のクセの終り辺の「綺羅衣の御袖も」の「羅」のハリマワシ節をいふのです。昭和版改訂の砌りマワシ節のハリ節は除いて補助記号で補ふことになつたのに、この「羅」のハリ節のみは除くことが出来なかつたのです。「ら」のマワシはハリをふくめてやゝたつぷりめに謡ひ、マワシの後半のハネを短かくハネるやうに張りをふくめて「アイ」とツメて消しを謡ひ「オ」のではじめて普通に戻るのです。
- 79[「謡の教へ方」]三つ引は仮名を三字分に引きます、二つ引は持ちになりますから二字位でございます一セイの謡のトメに■■[節付記号]がございますが、この節はフリビキマワシと申しまして、トメのマワシをば切つて別に廻すのがよろしいので、又クセの前にあるのもイロをつけて同じでございます。他の場所ではつゞけて謡つてもよろしいのでございます。クルと入りは、一セイでは入りを二段に上げますが、合ひ方の所の入りは小さく入れる事になつてをります。
- 92[「藤戸」の「謡ひ方注意」]一セイの中の「越えて」の入マワシは特に注意を要します。内へとつて謡ひます。「昔」のカのクリも同じく内へとつて謡ひます。シテカヽルの中の「何か恨みん」のミを小さく扱ひ「もとよりも」のトのマワシ中ニは扱ヒオトシに謡ひます。
- 99[「藤戸」の「謡ひ方注意」]「忘れぬよりは思ひなれ」はマハシが二つありますので両方のマワシが同じ扱ひにならぬ様変化をつけて謡ふのであります。初めの分は上音で出てナビキのうちに浮かせ、次のはイロマワシですから、あたまで浮かしてイロを謡ひます。「濁る心の罪あらば」の罪のツを抑へ、あらばのアはハツキリとアタリを謡ひます。「罪科」の「ザ」はハツキリと浮かしイはイロをタツプリと謡ひます。カシラをチョン切つて謡ふ心です。「三途の」のイロ消シマワシはメラシてこめて出ます。