二見忠隆奥書戦国期囃子伝書 【凡例】 一、本項には、能楽研究所蔵の『二見忠隆奥書戦国期囃子伝書』(能研14332)を翻刻した。 一、底本を忠実に翻刻することを原則としたが、印刷上の制約、通読の便宜を考慮し、左の方針に従った。 1、漢字と仮名の別、仮名遣い、送り仮名は底本の通りとした。改行は原本に従い、丁の区切りを』で示し、括弧内に丁数と表裏の別を記した。ただし、一部改行を改めたところもある。 2、適宜句読点を付した。ただし、32丁ウから38丁オの「哥うら」「弓矢のたちあひ」「舟立合」「正尊起請文」の詞章を記載する部分の句読点は原本のままとし、新たに句読点を加えることはしなかった。 3、漢字異体字や旧字体は、通行の字体や新字体に改めることを原則とした。但し、「哥」「云」「躰」などの若干の異体字は底本のままとした。 4、変体仮名は普通の平仮名に改めたが、底本は片仮名をも多用するため、平仮名と片仮名との別は底本のままとした。但し、「り」と「リ」、「つ」と「ツ」等の区別については、校訂者が適宜判断して定めた。 5、底本の文字に誤りがある場合には、正字を括弧書きで傍記するか、(ママ)と傍記した。 6、謡曲の引用部分を「 」で囲んだ。ただし、冒頭に曲名を掲げて一つ書きで謡曲詞章のみを列記する場合や、五行以上にわたって謡曲詞章を引用する場合など、一目で謡曲詞章の引用であることが明らかな箇所では、原則として、特に「 」で囲まず、他の条と同じ扱いにした。 7、曲名を特に明記しない謡曲の引用部分については、引用箇所の最初の部分にカッコ書きで曲名を傍記した。ただし、同曲の引用箇所が続いて重出する場合には、これを省略した。 8、底本における墨筆・朱筆の別は、特に明示しなかった。また、本文への注記・振仮名・振漢字等は、本文を書写しながらの補正と認められる墨筆訂正部分は、訂正後の形のみを本文として示すことを原則とした。その他の行間傍注の類は、括弧等で囲まずに、すべて底本のままに然るべき位置に小活字で示した。但し、印刷の都合上、左傍書を右傍に移すなどの注記の位置の変更を行った場合も若干ある。 9、鼓の粒付の符号はなるべく底本のままに然るべき位置に配置した。ゴマ節等は、活字化できるもののみの翻刻を原則とした。 10、その他、底本の記述を翻刻に活かしきれなかった部分については、能楽研究所のデジタルアーカイブ「能楽資料総合デジタルアーカイブ」及び「能楽貴重資料デジタルコレクション」にアップしている本資料の画像データを合わせて参照されたい。 11、本資料の翻刻・校訂は高桑いづみ・深澤希望・山中玲子・中司由起子・宮本圭造が、解題は宮本が担当した。 【翻刻】 〽たかさこ   〽田むら   〽百まん 〽二人しつか  〽三井寺   〽かきつはた 〽ありとをし  〽源氏供養  〽松風村雨 〽軒端の梅   〽采女    〽柏さき 〽さくら川   〽通小町   〽はせを 〽夕かほ    〽西行桜   〽清つね 〽玉かつら   〽山うは   〽あたか 〽船弁慶    〽難波    〽誓願寺』(1オ) 〽隅田川    〽かんたん  〽とうる 〽あひそめ川  〽きぬた   〽女郎花 〽うこん    〽野々宮   〽江くち』(1ウ)       ○小鼓之手聞書       〽高砂 一いくかきぬらんあとすゑも、いさし雲のはる〳〵と さしも思ひしはりまかた、たかさこのうらに着に けり、たかさこのうらにつきにけり 一秋のむしのほくろになくもみな、和哥のすかたな らすや 一かけとも落葉のつきせぬハ、まことなり松の葉』(2オ) の、ちりうせすして 一夕浪のミきわなる、あまのをふねにうちのり て、をひかせにまかせつゝ、おきのかたにいてにけり や、おきのかたにいてにけり 一さてはんせいのをミころも、さすかひなにハ 一おさむる手にはしゆふくをいたき、せんしうらくは 一まんさいらくにハいのちをのふ、あひおひの松風さつ 〳〵のこゑそたのしむ、さつ〳〵のこゑそたのしむ』(2ウ)       〽田むら 一かけものとかにめくる日の    一たきのひゝきも静なる 一しゆんせう一こく〽此内うたす    一あら〳〵おもしろの 一さそふはなとつれて       一をとはのたきのしらいとを くりかへしかへしても      一てんもはなにゑゝりや 一月のむら戸をゝしあけて、うちにいらせ給ひけり 一ふてんの下そつとのうち     一せたのなかはしふミならし こまもあしなミや    一せたのなかはしふミならし、こまも』(3オ) 一つちも木もわかおほ       一まつとハしらてさをしかの すゝかのミそきせし代々まても 一あめあられとふりかゝつて、きしんのうへにみたれおつれハ 一しゆつそせうとくやくねひ、くわんおんのちからを あはせて、すなはちけんちやくおほんにん 一かたきハほろひにけり、是くわんおんのふつりきなり       〽百まん 一ちく馬にいさや法のみち、ちくまにいさやのりのミち』(3ウ)  まことの友をたつねん      一みたたのむ 一雲はれねともにしへ行、あミた 一たれかはたのまさらん、たれかたのまさるへき 一つむともつきし、おもく共ひけや 一なをさんかいのくひかせかや、うしのくるまのとこと はに、いつくをさしてひかるらん、ゑいさら 一むしろきれすかこもの、みたれこゝろなから 一ならさかや        一おきわかれて、いつちともしらす』(4オ) 一かけうつす面影、あさましき 一まことにうき世のさかなれや、さかりすきゆく 一かさしそおほきはなころも、きせんくんしゆする、この 一道あきらめんあるしとて、ひしゆかつまかつくりし 一ミちあきらめむあるしとて、ひしゆかつまかつくりし 一てんちくしたん我てう      一かんたんしてそい のりける、おやこあふふの袖なれや、百まんかまひ を見給へ         一きやう人なからも子にもやあふと』(4ウ)       〽二人しつか 一さくらきのミや、かミのみやたきにしつこうのたき 一たのむこかけのはなの雪、あめもたまらぬおくやま の、をとさはかしき春の夜の、月ハおほろにて、なを 足曳のやまふかミ、わけまよひ行ありさまハ 一春の夜もしつかならて、さはかしきみよしのゝ 一おひてのこゑやらんと、あとをのミみよし野ゝ、おくふ かくいそく山路かな       一身こそハしつ』(5オ) め、名をハしつめぬ、ものゝふの、ものことにうきよの、なら ひなれハと、おもひかへせハ山さくら、雪にふりなす はなのまつかせしつかゝあとをとひ給へ、しつかゝ あとをとひたまへ       〽三井寺 一夕をいそく人こころ、しるもしらぬも 一雲をいとふやかねてより     一さゝなミや、しかからさき 一さくらさく はるならハ   一ましてやつたなきやうちよなれは』(5ウ) 一ほんなふのゆめをさますや、のりのこゑもしつかに 一月もかすそひて、百八      一我もこしやうのくもはれて 一けにおしめとも、なと      一うらミをそふるゆくゑにも 一こひちのたよりの、をとつれのこゑときく物を 一恋路のたよりの、をとつれの声ときくものを 一はんやのかねのひゝきは、かく 一なミたこころのさひしさに、このかねのつく〳〵と 一かねゆへにあふ夜なり、うれしきかねのこゑかな』(6オ) かくてともなひたちかへり、かくてともなひたち 帰り    〽かきつはた 一はる〳〵きぬるから衣、きつゝやまひをかなつらん 一人まつおんな、ものやミ     一いせやおはりの、うミ 一ちきりし人〳〵のかす〳〵に 一我身ひとつハ、もとの身にして、ほんかくしんによ の身をわけ、いんやうのかミ       〽蟻通』(6ウ) 一もとのことくにあゆミゆく、ゑツてうなんしにす をかけ、こはほくふうにいはへたり、うたに 一つらゆきも是をよろこひの、名残のかくら 夜はあけて、たひたつそらにたちかへる、たひ たつ空にたちかへる 一白楽天なのりの時、小鼓の覚悟、かくのことくたるへし。        源氏供養 一紅葉の賀のあきの、らくようもよしやたゝ』(7オ) 一あかしのうらにミをつくし    一まきはしらのもとにゆかむ 一ふちのうら葉にをくつゆの、そのたまかつら 一是もかけろふの身なるへし、ゆめのうきはしを 一たすけたまへともろともに、かねうちならして、ゑ かうも             一いなつまのかけ 一ちかひかな、おもへハゆめのうきはしも、ゆめのあひ たのことはなり、夢のあひたのことはなり       〽松かせむら雨』(7ウ) 一此一せいの打出しハ、こつゝミよりうち申候。おつ三、後 三ツめのおつに声をかくへし。 一浪こゝもとやすまのうら、月 さへぬらすたもとかな 一うら山しくもすむ月の、てしほを 一あまのすてくさいたつらに、くちまさりゆく 一よせてハかへるかたをなミ、あし辺のたつこそハ 一かたをなミ、あしへのたつこそは 一四方のあらしもをとそへて    一やくしほけふりこゝろせよ』(8オ) 一月こそさはれあしのや、なたのしほくむ 一月ハひとつかけハふたつ、ミつしほの 一月ハひとつかけハふたつ、ミつしほの 一月はひとつかけハふたつ、ミつしほの 一よるのくるまに月をのせて、うしともおもはぬ しほちかな 一すまのあまりにつミふかし、わかあととひてたひ給ヘ 一是を見るたひに、いやましのおもひくさ、葉すゑにむすふ』(8ウ) 一よみしもことハりや、なをおもひこそハふかけれ 一すてゝもをかれす、とれハおもかけに 一跡より恋のせめくれハ      一せんかたなミたに、ふし しつむ事そかなしき       一跡よりこひのせめくれハ 一せんかたなミたに、ふししつむ事そかなしき 一かへるなミのをとの       一すまの浦半の松のゆきひら 一あらたのもしの御うたや、たちわかれ 一われもこかけに、いさたちよりて 一松にふきくる、風もきやうして』(9オ) 一いとま申て、かへるなミのをとの、すまのうら かけて、ふくやうしろの山おろし 一いとま申て、かへるなミのをとの、須磨のうらか けて、吹やうしろの山おろし 一むらさめときゝしをけさ見れハ、松風はか りやのこるらん       〽軒端梅 一鳥はしゆくすちゝうの木、僧ハたゝく月下の門』(9ウ) 一鳥は宿すちゝうの木、そふハ     一秋きにけりとおとろかす 一けけしゆしやうの、さうをえたり、とうほくゐんやう の、しせつもけにとしられたり 一いさきよきひゝきハ、しやうらくのゑんをなすとかや       〽采女 一大君のこゝろとけさりしに      一露のなさけに心とけ 一かせもおさまりくもしつかに、あんせんをなすとかや 一風もおさまり雲しつかに、あんせんをなすとかや』(10オ) 一とふさにおよふくものそて 一けふもくれはとり、声のあやをなすふかのきよく、 ひやうしをそろへ、たもとをひるかへして、いふかく くわんせんたる、うねめのきぬそたへなる 一御かわらけたひ〳〵めくり  一御かわらけたひ〳〵 めくり、あり明の月ふけて、山ほとゝきす、さそひ 一山ほとゝきす        一ゑいりよをうけていふかくの 一ちりうせすして、まさ木のかつら、なかくつたわり』(10ウ)       〽柏さき 一まなこにさえきり、おもひのけふり 一くとく池の、はまのまさこをかす〳〵の 一くとくちの、はまのまさこをかす〳〵の 一よきひかりそとあをくなりや、南無きミやうみ たそん、ねかひをかなへ給へや 一よく〳〵見れハそのはらや、ふせ屋におふるはゝ 木々の、ありとハ見えてあはぬとそ』(11オ)       〽さくら川 一あらしもうかむ花のゆき、さくら川にも付に けり             一川かせに、ちれはそ 一我もゆめなるを、花のミと  一花なれハ、おちて も水のあはれとハ       一さくらをあはれミ、つゆをかなし 一あたになさしと 水をせき、雪をたゝへて 一かせもよきて、ふき     一はなによるへの、水せきとめて 一みよし野ゝ、みよしのゝ〳〵 一あふときのなくね』(11ウ) こそ、うれしきなミた成けれ  一かくてともなひた ちかへり           一かくてともなひたちかへり       〽通小町 一あはれむかしの恋しきハ、花たちはなの一枝 一あはれむかしの恋しきハ、花たちはなの一えた 一跡とひ給へ御そうとて、かきけすやうに 一さくをのへ香をたき     一つゝめと我もほに出て 一ともになミたの、露ふか草のせうしやう』(12オ) 一ひとかたならぬ思ひかな、夕くれハなにと 一花すりころもの色かさね   一すハはやけふも 一ゑもんけたかくひきつくろひ、おんしゆハいかに、 月のさかつき         一ゑもんけたかくひきつくろひ       〽はせを 一庭のをきはらまつそよき、そよかゝる 一庭の荻はらまつそよき、そよかゝる 一花ハあらしのをとにのミ』(12ウ) 一もろくもおつる露の身ハ、をきところなきむし の音の           一おもひいるさの山ハあれと、たゝ 月ひとりともなひ、なれぬるあきの 一たゝ月ひとり友なひ     一小さゝはら、しのに物おもひ 一うきふししけきをさゝ原、しのに物おもひ       〽夕顔 一あるしもしらぬ所まて    一しんによの月もはれよそと 一たかひに秋のちきりとは、なささりし』(13オ) 一この世ハかく斗、はかなかり 一此世ハかくはかり、はかなかり 一かへらぬ、水のあはとのミ、ちりはてし 一かへらぬ、水のあわとのミ、ちりはてし 一あけくれのそらかけて、雲 の まきれにうせにけり 一右此うち上ハ、一せいのうちとめのことし。是秘事 なれハ常にハうたす。』(13ウ)       〽西行桜 一此世のほかハなき物を    一柳さくらをこきませて 一千本の花さかり       一かれにしつるの 一かねをもまたぬ、わかれこそあれ、わかれこそあれ 一ゆめハさめにけり、あらしもゆきもちりしくや       〽清つね 一しほるゝ袖の身のはてを 一なにかしのハんほとゝきす  一たまくらをならへて』(14オ) 一あきのくれかなとてハ    一あしよは車のすこ〳〵と 一くわんかうなしたてまつる  一くわんかうなしたてまつる 一又ふねにとりのりて     一よそめにハひたふる、きやう らん             一たゝ一声をさいこにて、船 よりかつはとおちしほの 一むミやうをもほつしやうもミたるゝかたきうつハ なミ、ひくハうしほ       〽玉かつら』(14ウ) 一山もとゆけハ程もなく、はつせ川 一つらなるのきをたえ〳〵の、きりまに残る 一紅葉の色にときは木の、ふたもとのすきに 一あらきなみかせたちへたて 一たよりとなれハはやふねに、のりおくれしと 一たよりとなれははや船に、のりおくれしとま 一たよりとなれハはやふねに、のりおくれしと 一たよりとなれははやふねに、のりおくれしと』(15オ) 一なをやうきめを水とりの、くかにまとへる 一をのへのかねのよそにのミ、をもひ 一おもへハ法のころもの、たまならハ 一たまの名となのりも     一はけしくおちてつゆ も涙 も、ちり〳〵      一むくゐのつミやかす 〳〵             一むくひのつミやかす〳〵の、う きなにたしも         一岩もる水のおもひにむせ ひ、あるひハこかるゝや    一こゝろハしんによの』(15ウ) たまかつら、なかき夢路やさめぬらん       〽山うは 一いとゝミやこハとをさかる  一いふかとみれハそのまゝ 一その夜をおもひしら玉か   一をまねくおはな 一はつほくとう〳〵として、山さらにかすかなり 一月卿しゆしやうをへうして、こんりんさいに 一夕はたたつるまとにゐて、ゑたのうくいす 一しつの目に見えぬ、おにとや』(16オ)       〽あたか 一きさらきの十日の夜 一かすミそ春はうらめしき、〳〵 一しのゝめはや〳〵あけ行ハ、あさちいろつく あらち山          一まつの木の辺やま、なを行さき に見えたるハ        一あしのしのはら波よせて、なひく あらしのはけしきハ、花のあたかに付にけり 一つとめをはしめ、しんしやうにきられ申さんといひて』(16ウ) 一さんやかいかんに、おきふし 一よろゐの袖まくら      一ふうはに身をまかせ 一たちくるをとや須磨あかし  一そのちうきんもい たつらに、なりはつるうき身の、そも何といへる ゐんくわそや         一おもひかへせハあつさ弓の、 すくなる人ハ         一たまふへきなるに、たゝ代にハ、 神やほとけもましまさぬかや 一心なくれそくれはとり    一あやしめらるなめん〳〵と』(17オ) 一てまつさへきるさか月の 一いわおにひゝくをと、なるハ滝の水 一岩尾にひゝくをと、なるハ滝の水 一いとま申て、さらハとて、おひをおつとり、 かたにうちかけ、とくしやの       〽船弁慶 一たかき御かけをふしおかミ  一うしほも浪もともにひく たいもつのうらに付にけり』(17ウ) 一まさりておしきいのかな、きみにふたゝひ 一たちまふへくもあらぬ身の、そてうちふるも 一二たひ代をとり、くわいけいの 一こうなりなとけて身しりそくは 一せうせんにさほさして、ここうのゑんとう 一つゐにハなひくあをやきの、枝をつらぬる 一ふな子とも、はやともつなをとく〳〵と 一なミたにむせふ御わかれ、見るめもあはれなりけり』(18オ)       〽難波 一けにものとけきかさなきの、はまのまさこの ふきあけの、浦つたひして行ほとに 一是もみやこか津の国の、なにはのうらに付に けり             一今ハ春辺ににほひきて 一よのためしこそ、けに道ひろき 一たみのかまとハ、にきわゐにけりと 一はまのまさこのかすつもりて、雪ハほうねん』(18ウ) のミつき物        一せんしうはんせいの、ちはくの玉を たてまつる        一かけよりも、しけきみかけハおう きミの、国なれハ土も木も、さかへさかふる津の国の 一一花ひらくれハ天下みな、春なれや 一夜もすから、なくさめ申へしや、したふしして 一なにはのことかのりならぬ  一かねもひゝき 一入江のまつかせ、むらあしの葉をと 一難波津に、さくやこの花』(19オ) 一なみたてうつハさいしやうらく 一入日をまねきかへすてに、いり日をまねき 返すてに           一なミなれは、よりてハうちか へりてハうち、此をんかくにひかれて 一天下をまもりおさむる、〳〵、はんせいらくそめてた き、 〳〵       〽誓願寺』(19ウ) 一時もこそあれ春のころ、花のミやこに 一うけよろこふや上人の 一ししやうしんしむしんゑかう 一十声一こゑ数わかて 一にしにかけろふ夕月の、よるのねふつをいそかん、 夜ねふつ           一八まんしよしやうけうかいせ 一御せいくわんしそと、仏と上人を、一たいにおかみ申 一せきたうのいしの 火の、ひかりとともにうせにけり(20オ) 一かねうちならしとうおんに 一せいかはるかにきこゆ    一いまさいはうのミた如来 一三世りやくとう一たい 一さゝてもわたる彼きしに、いたり〳〵て 一まよひの雲もそらはれ、しんによの月 一こゝをさる事とをからす   一をの〳〵帰る 一そてを返すや、返々も』(21ウ)       〽隅田川 一是そなにおふすミた川、渡にはやく 一おやと子の、してう     一とへとも〳〵、こたへぬ ハうたて           一船こそりてせはくとも 一のこりても、かひあるへきハむなしくて、あるハ かひなきはゝ木ゝの 一ふてうのくもおゝへり    一いよ〳〵おもひハ 一しのゝめの空もほの〳〵と、あけ』(22オ) 一くさはう〳〵として、たゝしるしはかりは あさちかハらと、なるこそあはれなりけり       〽かんたん 一名にのミきゝしかんたんの 一かりねのゆめを見るやと、かんたんの 一夢とハしら雲の、うへ人となるそふしきなる 一たのしみもかくやと 一せんくわはんくわの御たからの、かすをつらね』(22ウ) 一ちにひゝく         一しゆんしうをとゝめり 一きくのさかつきとり〳〵   一さか月のかけの 一たのしミの         一月またさやけ 一もみちもいろこく、なつ   一雪もふりつゝ、四き おりふしハ          一かくてときすきころされは、 五十年の           一たちまち 一松かせのをとゝなり     一つら〳〵 一一すいのゆめ        一南無さんほう〳〵』(23オ)       〽とをる 一千里もおなし一あしに、ちさともおなし 一かさなりて         一身ハすてに 一そてさむき         一松かせもたつなりや、きり 一むかしのあとをミちのくの  一おひのなミもかへるやらん 一老の浪も帰るやらん、あら  一かひもなきさの浦千鳥、 音をのミ           一かひもなきさの浦千鳥 一ふかくさ山よ、こはたやふしミのたけた、よと』(23ウ) 鳥羽も見えたり 一しほくもりにかきまきれて、あとも見えす 一それハさんしうに      一かけをふねにもたとへたり 一月もはや、かけかたふきて       〽あひそめ川 一かしゐはかたをうち過て、さいふにはやく付 にけり            一夕かほのそらめして、あひそめ 一はゝにおひつき申さんと』(24オ) 一おもかけの、是こそちゝよむさんや 一とりつきかみかきなて 一はうたいあらたにねむりて、まなふたをひらく 一かんしよくつゐにきえうせて、かうけんにくちはてゝ 一いきてうらみしゝてよろこふ、ありかたの 一そも〳〵たうしやと申ハ、ほつしやうのミや こを出て、ふんたんとうこのさかひに 一ミやう〳〵とあるくかひにしつミ、ほたひ』(24ウ) 一たゝこれたうしやのしんおんそと、よろこ ひののつとをたてまつり、よろこひののとを たてまつれハ、神ハあからせ給ひけり       〽きぬた 一明し暮して程もなく     一くさもかれ〳〵に 一おもひてハ身にのこり、むかしハかはり跡もなし 一人のことの葉うれしからん 一ころもに落る松のこゑ、夜さむをかせやしらすらん』(25オ) 一ふきをくれと、まとをの衣うたふよ 一いまのきぬたの声添て 一夢をやふるな、やふれてのちハ 一月にハとてもねられぬに、いさ〳〵 一二の袖やしほるらん 一ミつかけくさならハ、なみうちよせようたかた 一きぬたのをと夜あらし 一ましりておつる露なミた、ほろ〳〵はら〳〵』(25ウ) ハらと、いつれきぬたのをとやらん 一ましりておつる露なミた、ほろ〳〵はら〳〵 はらと、いつれきぬたの音やらん 一やまふのゆかにふししつミ 一むねのけふりの、ほのおにむせへハ、さけへとこ ゑか、いてハこそ 一めくりめくれとも、いきしにの 一うらみハくすのはの、かへりかねて』(26オ) 一かけしたのミハあたなミの、あらよしなやそら 事や、そもかゝる人の心や 一夜さむの衣うつゝとも、ゆめともせめてな と、思ひ知すやうらめしや、ほつけとくしゆの すかたにて、〳〵       〽女郎花 一いつしかあとに遠さかる  一夢ハいそちのあわれよの 一ころハ八月なかはの日  一紅葉もてりそひて、日もかけろふの』(26ウ) 一しるしのはこをおさむなる  一のりのしんくうし 一山そひへ谷めくり      一あけの玉かきミとしろの 一たよりをおもひよりかせの、ふけ行 一こゝによつてつらゆきも 一くねると書しミつくきの、あとのよ 一よしなき水のあはときえ   一よしなき水の淡ときえ 一つゝいて此川に身をなけて 一そのつかハ是ぬしハわれ、まほろし 一しやゐんのあつきハ、身をせめて、しやゐんのあつきハ』(27オ) 一つるきハ身をとをし、はんしやくハほねをくたく 一露のうてなや花のゑんに、うかめてたひ給へ、 つミをうめてたひ給へ       〽うこん 一きたのゝ森もちかつくや 一ひけいによりて花こゝろ、なれ〳〵そめて 一もゝちとり         一しめのゆき、のもりは 見すや            一是この神の御たひゐの』(27ウ) 一待給へと、花にかくれうせにけり 一ミかけを、うつしうつろふ、さくらころもの       〽野々宮 一長月の七日の日も、けふにめくりきにけり 一あらさひしミやところ、あらさひし此宮所 一あらさひしミやところ、あらさひし此ミやところ 一なか月の七日の日も、けふにめくりきにけり 一つらき物にハ、さすかに』(28オ) 一秋のはなミなおとろへて、虫のこゑも 一さひしきミちすから、秋のかなしみ 一さひしきみちすから、秋のかなしみ 一ゆくえもすゝか川、やそせの波にぬれ〳〵す 一ためしなき物をおやとこの、たけの都路に おもむきし 一 一くろ木のとりゐのふたはしらに、たちかくれて 一くろきのとり居のふた柱に、たちかくれて』(28ウ) 一くろ木の鳥井のふたはしらに、たちかくれ 一かけさひしくも、もりの下露 一たれ松むしの音ハ、りん〳〵として 一こゝハもとより、かたしけなくも、神かせやいせの、 うちとのとりゐに、出入すかたハ、しやうしの道 を、神ハうけすやおもふらんと、また車にうち 乗て、火 宅 のかとをや出ぬらん、くわたく』(29オ)       〽江口 一なとやおしむといふなミの、かへらぬ 一又ハ一河のなかれの水、くミても 一とハんともせぬ人をまつも、身のうへとあはれ 一花もゆきも雲もなミも、あはれ代にあはゝや 一さらに世々のおはりをわきまふる事なし 一さきの世のむくひまて、おもひやるこそかなし 一紅花の春のあした、紅きんしうの山、よそをひ』(29ウ) をなすと見えしも夕へのかせにさそはれ、 紅葉の秋の夕         一色をふくむといへとも、あ したの            一松風蘿月に、こと葉をか はすひんかくも、さつて来る事もなく、すい ちやうこうけいに、枕をならへしいもせも、いつ のまにかわ          一ある時色にそみ、とんちや くのおもひあさからす、又あるときハ 一又ある時は声をき、あんしうの』(30オ) 一けにやミな人ハ、ろくちんのきやうにまよひ、六 こんのつミをつくる事も 一白雲にうちのりて、西の空に行給ふ、あ りかたくそおほゆる 一枕をならへしいもせも    一まくらをならへしいもせも、 いつの間に 一まくらをならへしいもせも、いつのまにかハ 一枕をならへしいもせも、いつのまにかは』(30ウ)       〽三輪 一かくしもたつねきりしきミ、つミを 一したひの水をとも、こけにきこえてしつかなる、  此山すミそさひしき 一たつね給へといひすてゝ、かきけすことく  にうせにけり 一御かけあらたに見え給ふ、かたしけなの御事や 一ひるを何とうは玉の、よるならてかよひ給はぬハ、』(31オ)  いとふしんおゝき事也 一契もこよひはかりなりと、ねんころに 一おたまきにはりをつけ、もすそに是をとちつ  けて、跡をひかへてしたひ行 一をのかちからにさゝかにの  一此山もとの神かきや 一此山本の神かきや 一こわそもあさましや、ちきりし人のすかたか、 其いとのミわけ残りしより、三輪のしるしの』(31ウ) 』(32オ)       〽哥うら きゆるものハ二度見えすさるものハかさねて きたらす。下しゆしゆにしやうめつし。せつなにりさ キ んす。うらめしきかなや。しやか大しのおんこむの キ きやうをわすれ。かなしきかなや引。ゑんまほうわ うのかせきのことはを聞。ミやう利身をたすく          キ ハル キ れとも。いまたほくはうのけふりをまぬかれす。 キ をんあひ心なやませとも。たれかくわうせむの』(32ウ) せめにしたかはさる。これかためにちそうす。しよ とく。いくはくのりそやこれによつてついくす。 しよさたざひなりしはらくめをふさひて。わう しをおもへハ。きうゆうみなはうす。ゆびをおつ てかうしんをかそふるに。しんそおゝくかくれぬ。 ハル 時うつり事さつて。いまなんそへうほふたらん や。人とゝまり我行。たれか又常ならん 上〽三かひ無安ゆによ火たく。てんせむなをしし』(33オ) くの身也。いはんやけれつひんせんのはう においてをやなとか其つミかろからんしに くるしミをうけかさねかふにかなしミ名をさう るざんすいちこくのくるしミハきうちうにて 身をきる事せつだんして。ちろうせきたり。 一日のうちにばんしはんしうたりけんじゆち こくのくるしみハ手につるきの木をよとれハ。 はくせきれいらくすあしにたうせんふむとき』(33ウ) ハ。けんじゆともにけすとかや。せきくわつちこく のくるしミハ。れうかひの大石もろ〳〵の。さい人 をくたく次のくわほん地獄ハ。かうやにくわゑん をいたゝけハ。はくせきのくと。なり。ゑんねん キ たる火をいたす。ある時ハせうねつ。大せうねつ のほのをにむせひ有時は。くれん大くれんの。こ ほりにとちられ。てんちやうかうへをくたき キ くわさうあなうらをやく 上うへてハてつくわん』(34オ) しほる キ をのミ。かつしてハ。とうしうをのむとかや。ちこ キ くのくるしミハむりやうなりかきのくるし ミハむへん也。ちくしうしゆらのかなしミも。 われらにいかてまさるへき。身よりいたせる とかなれハ。心の鬼の身をせめてかやうに くを請るなり。月の夕部の浮雲ハのちの 世のまよひなるへし』(34ウ)       〽弓矢のたちあひ 〽桑の弓よもきの矢のまつりこと。まことにめ てたかりけり。あら有難哉〳〵 いさやさらハ我等も。けいやうかしやしゆつをつたへ キ ける。弓張月のやさしくも。雲の上まて。名を カヽル あくるゆミやの家をまもらん〳〵ものゝふの。 やま宇治川のなかれまて。みなもときよし。弓 張の月。あはれめてたかりける。おさまれる御』(35オ) 代の。時とかや。しゆくそんハ。〳〵たいひの弓 に。ちえの矢をつまよつて。三とくのねふりを おとろかし。あいせん明王ハ弓矢をもつて。ゐん 太 やうのすかたを。あらはせりされハ五大明王の 文殊ハ。やうゆふとけんして。らいを取て弓を 太 キ つくりあいせんをあらはして。矢となせり又わ かてうのしんくうくわうくうハせひとのけきしん 太 をしりそけき。たミけうしゆんをさかへたり。かう』(35ウ) しん天皇八幡大菩薩。みなもときよき石清 水なかれのすゑこそひさしけれ 一名所ハさま〳〵おほけれと。かいへんことにすく れたり。のり物おほしと申せとも。舩にすきたること 太 太 太 ハなし。こけやこけとよわたしもり〳〵おし 太 ハヤス イロヘ におせとよわたし舩  りしやうはうへんの朝霞』(36オ) 太 水火たうそくのおそれなくさいなんをさり つゝきうはけんそくゆたかにて。しんしつたのし かりけり。悦もいのちも。とし〳〵にますかゝみ。 さいはひもさかへも。よひ〳〵にミつしほの。むね のかとたよりにてりしやうのかとに。いりなんや 〳〵』(36ウ) 大 打キ 上哥一当座のせきをのかれむと。〳〵。土佐ハきこふるふん 大 大 しやにて。自筆に是を書つけ弁慶にこそ スツル わたしけれ。下うやまつて申きしやうもんの 事。上ハ梵天帝釈四大天王ゑんま法王五 大ひ ヌスム 道のミやうくわん。たいさんふくん。下界 の地にハ 大ひ ヌスム             大ひ 伊勢天照大神をはしめてたてまつり。伊豆箱根 ヌスム 大ひ ヌスム 冨士せんけんゆや三所きふうせん。王城の鎮 守いなりきおんかもきふね。八幡三所。松尾平野』(37オ) 大ひ ヌスム 大ひ そうして。日本国の。大小の神祇ミやうたうしや ヌスム ひ ヤ うし。おとろかしたてまつる。ことにハうちの神。 ひ 大ひヌスム ひ まつたく正尊うつてにまかりのほる事なし此 事いつわり是あらは。此せいこんの御罸を 大ひ ひ あたり。来世ハあひに。たさいせられん者也仍起請 大ひ ヌスム 文かくのことし。文治元年九月日。正尊とよみ ひ ハル ハル あけたるハ。身のけもよたちてかいたりけり。 ひハル つゝク 下 ハル もとよりきよこんとハおもへともふんをふるうてかい』(37ウ) ハル 下 ハル 下 たる。きようをかんしおほしめし。御さかつきをく たさるゝ 此きしやうもんハ、後ニある人にとい申候間、 まつ〳〵うつしをき申候。あしく御入候ハヽ 又たれ人にも相たつね可申候。』(38オ)    ●風曲集聞書 大皷ノテ 一皷うつやうの事。君のまへハわかまへ、わかまへ ハ君のまへと心得へし。座敷にてと稽古之 時両分別。 一あふさかの関の清水に影見えていまや引らん望月の駒 この哥のことく也。心もち肝要也。 一あふさかの関の岩かとふミならし山たち出るきりはらの駒 一せひのこし』(38ウ) ヤ ヤ ゑい ヤ 哥 ヤ ヤ ヤ ヤ ヤ 一か か―か かキ キキキ かかキキかキか キかゑいかとゝか ヤ ヤ ゑい ヤ 哥ヤ ヤ ヤ 一か か―か かキ キキキ キキキ かか キキか キかキかとゝか ヤ 哥 ヤ ゑい ヤ ヤ 一かキ キキキかキかキか か―か かかかとゝか なかしのまへのかしら 一ちちちちちととちとととととちちちちとゝ かかか・かか 十四ノかしら 一ちやちやちやちやちやちやちやちやちやちやちや ちやちやキちやちや はやきまひノきさミにもうつ也。 なかきかしら 一かかかか か―か かか か―か かかキかキキキ こす こす ヤ あ ヤ ゑい 一カキ キキキカキ キキキ キキカキ カカ 一せいノこし也。』(39オ)       〽舞五段之かしら大かた 二かか キキキ か       三かキキかかキかか 四かキキかかかキキか 一舞かしらの段ハ四段也。序之ふきおろしともに五段也。但 観世ノ能ハそりかへりと云事一段有也。 一まひ之心持。初段をそうに、二段めをしつめ、三段めをのせ、四段 めをつめて、五段めをきうにと心得へし也。 か かか 一「よせてハかへるかたをなミ あしへ」 此かしらハかろく 此かしらハたんふりと 一「ちきりし人〳〵のかす〳〵になをかへしなをかへて」』(39ウ) 一「よせてハかへるかたをなミ」と云所のかしら、たんふりとの せてうつへし。 一「あわれにきえしうき身かな」、此かしらもたんふりとのせて、 うつへし。かやうの類のかしらおゝき物也。 一「ミつせ川たゝぬ涙」と云所、物きの段そゝり候てうつへし。京 かゝり也。うたひかゝり、しつめうつ也。 一「つらき物にハさすかにおもひはてたまハす、はるけきのゝ宮 にわけいり給ふ御こゝろ、いとものあはれ也けりや、秋の花 ミなをとろへてむしのこゑもかれ〳〵」 一「そうけいのほうこつとなつてことをる」』(40オ)       〽金剛又兵衛申候 一「あしいたけなる合力にてよ」 一「花のさく草もなし」 一「見る人もなき」       一「たゝすへからく」を大つゝミ一つ打。 一〽大はかせ、めはかせといふ事有。 〽瀧殿御申聞候 一ゆやハ、春の明ほのとたとへ。 一松風ハ、秋のゆふへとたとへ。此中口伝有。 一男まひハ、はんしやくのことし。あたかなともおなし事也。 一〽のゝ宮・定家なとハぼけてうつへし。此中口伝ある也。 万端こゝろもちにあり。能々きうめを 一ものきの段と云事、物きに斗云事、両子細有也。 一〽高砂なとハ、めよりうへのはやし。たとへハかれ木ニ花のさ きたることくうつ也と、人の被申候。』(40ウ) 一〽松風物きの段と云事、人のしらぬ也。つなかぬひや うし也。そうしてひやうしハなし。きさミ二つつゝうち、外 ハうたす。段と云ハ、すいかんをかたへかくるとき、かしら一つ 一段也。ゑいやとハうたす、きさミよりそのまゝうつ也。ゑほ しをあたまへあつる時、かしら一つまへのことし。さて 「ミつせ川」とうたひいてすして一せいのくらひ也。 一三十のひやうしと云事有。是ハ、大略夕かほ・井筒 にある也。 一「うたかた人ハいききえてかへらぬ水のあわとのミ、ちりは てしよりも」きさミをつけてうつ也。「水のあわと」ゝ云所 ハ、ヤこゑを一つかけてひかへ。』(41オ) 一〽夕かほ、はしめ「山のはの心もしらて」と云一せい、かしらかなら すうたす。うかりとうちて、あひしろふへき也。是ならひ也。 是よりきさミをのせて是一段也。 一「うはそくかおこなふ道をしるへにて」と云、さてかしらうつ也。 此かしら一段也。序にかゝるとき、まへのひやうしをうしなふ也。 一〽井筒も夕かほのことし。 一次第者、心ハ大臣にうたひをよくうたハせんため也。 一一せいハ、大夫をかくやよりいたし、是もうたひをよくせん為也。 一くりさしこゑハ曲舞をよくせんと云心也。只分別肝要也。 一〽しやう〳〵のミたれ、大事有。一〽かつこ、大事有也。 一〽やうきひ之まひ、序のをろしそゝりてハかゝらす。』(41ウ) ミつほとうちきり候て、いかにもうつくしくはやすへし。 やうきひのはやしハ、のせてたんふり〳〵とうつ也。 一序のかしら、かけこゑ、やあとかくる也。 一〽忠則之はやしハ、たとへは、はしをさひ〳〵ミかきを あてすし、するり〳〵とハかくにけつりたることく うつへし。みゝにたゝぬ様ニ、いつれも修羅ハ同意也。 一〽せいくわん寺に心之ひやうしと云事、「しやうしゆらい かうす」と云所也。 一〽定家には、「よろ〳〵とあしよは車の」と云所也。心 のひやうし善悪、爰にて小皷手うつ也。手之後ニ善悪、 大皷かしらをうつ。こゑかけすにうつ也。「をいて」。』(42オ) 一〽百万にハ、「しんしんをいたすもわか子ニあわんため也」 と、二つかしらをうちてより少もうたす。是皷も大 夫もかつしやうする心もち也。 一〽遊屋ハ、ねんしゆかしらうちてより後、是もうたす。  〽百万、同意也。 一〽江口ハくつかふりと云て、次第を一度うつ也。一せいハ、いか にもしつかに。さてこし、しつめかしらをうちてより後、 次第たるへし。能にても三人舟へのり候て、次第たるへ し。此曲舞者、もちこすひやうしと云也。常のひや うしよりも少したるく、くわいをかならすうち、そこより』(42ウ) ひやうしをかへ、いつものたるへし。「月もかけさす」と云 所もうつ也。うちやうをしらすハ無用と云也。物きの 段同意也。つなかぬひやうしとうつ也。 一諸事きいきりうたひにあふしてうつ也。こまかに とあふ〳〵とうつ所あり。たとへハ「花にもミちよ 月雪のふることもあらよしなや」と云所ハ、あふ〳〵と うつ。「おもへはかりのやと」云所ハ、又こまかにしんにうつ也。 「こゝろとむな」と云所ハ、又あふ〳〵とうつ也。いつれも其 分別。 一〽うき舟、一せい之うちやうの事、是ハこまかにとうつ也。』(43オ) 一「かたをむすんてすそにさけ」 一「かさしそをゝき花ころも、きせんくんしゆする 此寺の」       〽かきつハた 一「つましあるやとおもひそ出るミやこ人」、うちき りのかしらうち候て、「やこ」とこゑをかけ、うたす るハ観世類也。二ノこゑなしにハ金春也。 一〽遊や、「ふるハ涙か桜花」と云所、しつかにひやうしをよく のせて心をうつへし。其故ハ、おくに大事のたんしやくの たんをかゝへ候也。』(43ウ) 一〽籠大皷、はしめのかけりハ、かしらうたす。後之かけ りハ、かしらうつ也。はしめの物すくなにしつかに、後の かけりハはし〳〵とうつ也。 一〽源氏供養曲舞之うたひ出し、かしらをうつ也。 如観世ニうちすてゝ大略うつへし。ヤあこヤはこ。ヤこ、とかけこゑかくる也。 一〽うとう、やはしかをとうたハする也。 〽田村 一「すなハちけんちやくおほい、すなハちけんちやく キ おほいの、かたきハほろひにけり、これくわんおんのふつりきなり」』(44オ) 一〽道成寺乱ひやうしの事、 「道成寺とハ申也。や山寺のや」、さて爰にてはの舞 有也。 一〽三井寺、しゆしやうにとうつ也。 一〽百万ハ、よろつミちゆきの心也。 一〽関寺小町ノまひ、老女ノまひにて、よハ〳〵とうつ也。 よくのりて、ふきかゝりにも、序にも、ふく也。時により候。 ゆるりと こす 一「すゝりをならしつゝふてをそめてもしほくさ」       〽とうかんこし』(44ウ) 一「あふなむさんほう」 一「けにたひこもかつこもふへひち りきけんくわともに」       〽のゝ宮 キキ 一「人々なかへにとりつきつゝ、ひとたまひのおくにおし カ やられて、ものミくるまのちからもなき」       〽桜川一せい 一いかにあれなるたひ人、桜川に花のちり候か、なに ちりかたになりたるとや、かなしやな、さなきたに行 ことはやき春の水の、ちりうく花をやさそふらむ』(45オ) 爰よりのりかゝりうつ也 花ちれる水のまに〳〵とめくれは山にも春ハな くなり成にけりときく時ハすこし成ともやすら はゝ花にやをそく雪のちる桜花かけりかしらをうつ也 さくら花ちり にしかせのなこりにハ 水なきそらに波そたつ おもひ もふかき花の雪 散はなミたの川やらん       〽二人用士の 「桜ハ花にあらわるゝ物」と云所ハうち不申候。大蔵新介も申候。 一ふたひにてうつ時、しての替ハしはいの人のかほニ有。       〽次第の事』(45ウ) ほんノかしら 一か か―か キキキか  上りやく くせまいのうたいへかゝる所打かへしのことく也 ヤ ヤヤああ ヤ 二か―か  か    ちうりやく こす 三か かキかか―かかキキキか こすハつけ物こつのかしら 下りやく   〽筒つきの名 あこ みこハタ 一姪 折居 難波 神子畑 千種』(46オ)   〽五段之一せいの事    〽五段之まひ事 一カ カカ キキキ カ ほんのかしら 一おろし 二なかし        二カ カカ キキキカ ほんのかしら 三八つかしら      三カ カカカ キ カ しつめかしら ヤあヤあ ヤあヤあ 四カヤあやあやカ 下りやく 四カ カキカカ ほんの一せいのまへ也 ヤ ヤあヤあヤこす 五カヤあヤあカカカキカ いつものしつめかしら也  五カ カ キ カ カカカ キキキカ これまて五段也』(46ウ)   たかやすかゝり     〽三井寺 一ゆるしたまへや人々よ、ほんなうの夢をさますや のりのこへ もしつかにます、しよやのかねをつくときハ諸行無常とひ ひくなり、後夜のかねをつくときハ せつしやう めつほうと かろく ヤ ひゝくなり、ちんちよのひゝきハしやうめつめつにいりあひハ ヤ しやくめついらくとひゝきて、ほたひのミちのかねのこゑ 月も キ キ キ キ こす かすそひてひやくはちほんほんなうのねふりのをとろく ゆめのよの、まよひもはやつきたりや、後夜のかねにわれ も後生の雲はれて、真如月のかけをなかめをりてあかさん』(47オ)   〽はせを      二人しつか     せつ生石   〽かきつハた    よしの静      花月   〽羽ころも     とうえひ      かねひら    かんたん     このう楊貴妃  十〽あしかり    しやう々     てんこ      〽うねめ    通盛       山うは       八しま    あつもり    十せうくん      しねんこし    三井寺      ぬへ        あふひの上    真盛       ありとをし     きふね   十より政      桜川        長良    とうほく     花かたミ      しゆんえひ   〽あたか     〽百万    くらまてんく   道成寺 』(47ウ)       〽遊屋 一「牛かい車僧よせよとて、〳〵、是もおもひの家のうち、はや御 出とすゝむれと、こゝろはさきにゆきかぬる、あしよハ車のち か か か キ キ か   詠を聞てしつかにうつ也 からなき花見なりけり 名もきよき水のまに〳〵とめく れハ山ハおとハの」 キ おつ かゝるきさミ か ゑ か か か 一「又花の春ハきよ水の たゝたのめたのもしきはるも か  かゝる キキ キ かかキキキ か ちゝの花さかり 山の名の」 キのちのいノ字 か 九郎殿 か いとく殿 キ かゝる 一「せいすひちのかねの声」  一「ほとけの御まへにねんしゆして」 一「ふるハ涙か桜花」と云所、よくのせてしつかにうつへし。』(48オ) 其故ハおくニ大事のたんしやくの段有。 ヤあヤあを ヤ と たん 一「東ちとても東山」 か   か キ か キ か か か キキキか あつまちとても 一ゆやのさしこゑのうち、かしらうたす。 一「東山」        江口 か こす か か 一「又うちのはしひめの、とハむともせぬひとをまつも身のうへと」 か か か キ キ か キ か 一「まつくれもなく、わかれちもあらしふく、はなよもみちよ月」 キ かゝるキさミ 一「光とともにしろたへの、はくうんにうちのりて、にしのそ か か か キ か か らにゆきたまふ、ありかたくそおほえたる、ありかたくこそおほ キ か           か  か ゆれ」    一「行すへハうとのゝあしの」』(48ウ) 一「捨人の世かたりにこゝろなとゝめたまひそ」 か か キ か かかキかか 一「世をわたるひとふしをうたひていさやあそはん」 か か か キ キ キ か 一「さらに世々のおハりをわきまふることなし」 か か か 一「さきのよのむくひまておもひやるこそかなしけれ」 か ヤ 一「もうせんのえんとなるものをけにや見る人ハ か 九郎殿 キ か 六人のきやうにまよひ ろ つこんのつミをつくる か キキキ か ヤ か か か か キ か か か か ことも見ることきくことにまよふこゝろなるへし」 か か  こす か   か か 一「おもへはかりのやとにこゝろとむなとひとをたにいさ』(49オ) めしわれなりすなハちふけんほさつとあらハれ ふねハひやくさうとなりつゝひかりとゝもにしろ か か か か たへのはくうんにうちのりてにしのそらにゆ きたまふありかたくそおほえたるありかたくこそ おほゆれ」 か いとく殿 キ キ キ か 一「ろくしんのきやうにまよひろつこんのつミを」       〽野々宮 か キ キ か 一「くろきのとりいのふたはしらにたちかくれてうせにけり」』(49ウ) 一「宮す所ハわれなりと夕くれの秋のかせもりのこの まの夕つくよかけかすかなりこのしたのくろきのと りいのふたはしらにたちかくれてうせにけり」 キ キ かゝる 一「たれ松むしのねハりんりんとして か せほう〳〵たる いかにもしつ〳〵とうつ のゝ宮のよすからあハれなり」 キ キ キ キ キ キキキ  か   か 一「こゝハもとよりかたしけなくもかミかせや いせ のうち とのとりいにいているすかたハしやうしのミちをかミ キ キ か か か キキ キ か か ハうけすや おもふらんとまたくるまにうちのりてく こす キ キ キ か か キ キ わたくのかとをや いてぬらん」』(50オ) 一「月にとかへすたもとかな」 か か 一「けしきもかりなるこしはかき露うちはらひとハ か か か か か か れし我もその人もたゝゆめ のよとふり」       〽にし木ゝ 僧之次第也 かしら一つ か 一「実や聞ても忍ふ山そのかよひちを尋ん」 かろく か か 一「けふのほそ布の折〳〵にしきゝや─名たてなるらん」 キ キ か 一「もみちはそめてにしきつかハこれそといひすてゝ か か キ キキ つかのうちにそいりにける」 一「をるほそ布」打上。 おつ有てはん キ か か 一「かけはつかしやはつかしやあさまにやなりなむさめぬ」』(50ウ) かしら一つふしを能聞合 か 一出羽こさす。「いかにお僧」 一「草のとさしハ其まゝにてよハ すてに」 キキキか か キ か か キ キ 「さきこそ、ゆめひとなる物、さめなはにしきゝもほそぬ か か か か か か のもゆめもやふれて、しやうふうさつ〳〵たるあしたの か か か キキ か か か   か か はらの、のなかのつかとそなりにける」 か か か か 一「はた折松虫きりきりす、つゝり」 コス キ か か か 一「をのかすむののちくさのいとの細布をりて」 一「実やみちのくの」 此クリ上マツクロニハヤスヘシ。 舟はし ヤ か か おつ キ キ 一「たてゝはしらもいるましや、いたつらにくちはてんの」』(51オ) 一さうして人之まへにてつゝミの雑談すへからすの 事、いかにも初心ニ成候て、さてつゝミ能うつへき事、 肝要第一之心得也。       〽紅葉かり かしら弐つ人ノをときくやうニうつへし 一「むねうちさハく斗也」 キ キ か か か キ キ キ か 一「あめうちそゝくよあらしの」 一    〽当麻 一「誠ハこのあまかのほりし山なるゆへに二しやうのたけ』(51ウ) キ か か か か か とハ申なり、おひのさかをのほりのほるくもにのりて か あかりけり、し雲にのりて」 一「すゝしき道ハたのもしや」・此ウチ上次第ヘカヽル。イカニモユフ〳〵トウチカヽルナリ。 一「にこりにしまぬはすの糸」此内ものすくなに詠をよく聞てうつなり。 キ キ キ キ 一「とこゑも一こゑも」・コスキサミヲウツナリ。心ユダンナクハヤ〳〵トマイヘカヽル。 一「まことハこのあまか、のほりし山なるゆへに、二上のたけとハ キ キ キ か か か か か 申なり、おひのさかをのほりのほる、くもにのりて か おつ キ か か キ キ あかりけり、しうんにのりてあかりけり」      〽はせを か キ キ か 一「さもおろかなる女とて、さなきたにあたなるに」』(52オ) か か キ キ キ キ か 一「花そめならぬに、そてのほころひもはつかしや か か か キ キ か キ か か キキキ か 一「やまおろしまつのかせ、ふきはらひふきはらひ、花 か か キ キ もちくさもちりちりに、はなもちくさもちりちり キ キ か コス キ キ になれは、はせをハやふれてうせにけり」       〽小督 か か か キキキ 一「わられか身まても物おもひに、たちもふへくもあらぬこゝ か か か か か か か か ろ、今ハかへりてうれしさを、なにゝつゝまんからころも コス キ キ お か か ちかひかしら いさめるこまにゆらりとうちのり、かへるすかたもあと か か か か はる〳〵と、こかうハミをくりなかくにハ、ミやこへとて』(52ウ) か か こそかへりけり」 か か いろ〳〵に候へ共此かしら一段にて候 一「ひきとゝむへきことのはもなし」 一「此山さとゝなかめけむ」、捨る所のうちやう、ほんのちを 打つめて、おつへおとす。ちやう〳〵ちよちよ、おつにて。 か か キ キキ か か かキ か か キキキ 一「はゝかりの心にも、とふこそなミたなりけり、けにやとハ か れてそ」      一「ことのはもなき、たちもふへくも か キ キ キ か か か か か あらぬこゝろ、いまハかえりてうれしさを、なににつゝ か か か キキキ か まんからころも、ゆたかにそてうちあわせ、御いとま コス キ キ お か か 申かへる心も、いさめるこまにゆらりとうちのりかへる すかたもあとはる〳〵と、こかうハ見をくりなかくに』(53オ) か か か か か か ハ、ミやこへとてこそかへりけれ」       〽あま そゝる―――――――――――キさミつむる キ   そゝる――――――――――――――キ    ―― 一「南無やしとしのくわんおんさつたの、ちからをあわせ    ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――  てたひたまへとて、大ひのりけんをひたひにあて」 か キ キ か か か 一「おやこのちきりあさころもの、なミのそこにしつミ けり、たつなミのそこにしつミけり」       〽三輪 一「杉たてるかとをしるへにて、たつねたまへといひすてゝ、 か か か キ か か かきけすことくにうせにけり」       〽忠則』(53ウ) か キ 一「さてハうたかひよもあらし花ハねにかへるなり、わかあ か か か か ととひてたひたまへ、木かけをたひのやとゝせは、 はなこそあるしならまし」       〽老松 一「守へし〳〵や、神ハ爰もおなしなの、あまミつそらも にい か か キ か か くれなゐの、はなもまつももろともに、かミさひて 手のうち か くわんせのふしニおつ うせにけり〳〵」   一「やまふしのうつひかとこそミれ       〽百万 か か か か 一「かんたんしてそいのりける、おやこあふふの袖なれや」 キ か こす か キ キ か 一「かさしそおほき花ころも、きせんくんしゆするこのてら」』(54オ) ヤ か か か か か 一「ほとけも御はゝを、かなしミたまふ」 か か か か 一「ねかひもミつの車ちを、ミやこへとてそかへりける」 一     〽とをる 一「さすやかつらの枝々にひかりをはなとちらすよそほ なかす ひ、こゝにもなにたつ白川のなミの か か か か か かか キキ か あら キ キ キ おもしろや」     一「松風もたつなりやきりのまかき キ キ か か か のしまかくれ」    一「たとへは月のある夜ハほしのうすか か か か か ことく也」      一「月もはやかけかたむきてあけかた か の雲となり雨となる」       〽松風』(54ウ) キ か か やこゑなし 一「月ハひとつかけハふつミつしほの」       〽三井寺 座敷にてハ此分ニうつ か か か か 一「月も数そひて、ひやくはちほんのふのねふりのおとろ 声ヤトハカケス。はトカクル也。 一「山寺の松のゆふへを」一「くれに数あるくつのをと」、同事也。 一ぬへのあけはのまへも同前也。       〽山うは 〽谷ふかうして鳥をとろかすと云心持 一さし声のうち、一圓かしらうたす。 〽是よりそゝりて 一「をちこちの」 一「月に声すむミやまかな」〽此一せい、心持ハ深山に月さしこゑすむ心也。       〽あしかり笠の段 か コス キ 是よりこし 一「ミたるゝかたをなミあなたへさらりこなたへさらりさらり 〳〵さらさらさつと」』(55オ) 一のる一せひと云事あり。一番にかきる。 一うちすゆる一せひ、うちすへぬ一せいと云事あり。 一高砂なとハうちすゆる也。 一松風なとハうちすへぬ也。是も一せひはかりの時ハうち すゆる也。其分別肝要也。       〽あたか勧進帳 キ キ 一それつらつらおもんみれは、大おんけうしゆの秋の月 キ キ はねはんのくもにかくれ、しようししようやのなかき夢お キキ キ キ キ キ キ キ キ キ とろかすへき人もなし。爰に中比御門おハします御なをは キ キ キ キ しようむうくわうていとなつけたてまつりさいあひのふにん キ キ キ にわかれ、れんほやミかたくていきうまなこにあて、なんた』(55ウ) キ キ たまをつらぬる。おもひをせんとにひるかへして、るしやな キサミカヽル キ キ ふつとこんりうす。かほとのれいしようのたえなん事 をかなしミて、しゆうしやうはうてうけん、しよこくにくわん キ キ キ しんす、一しはんせんのほうさいのともからハ、此世にてハむひ キ キ キ キ キ のらくにほこり、とうらいにてハしゆせんれんけのうへにさ せん、きめうけつしゆ、うやまつて申とてんもひゝけと よミあけたり。せきの人々きもをけし、おそれをなし てとをしけり、〳〵。 一鼓に貳つの病有。手のうちたき事、したるき事。 一鼓うつ時うたひを心ニ持へし。一つゝミうつ時つめひらきを心ニ持へし。 一かしらうつ事、うたひの字の中をうつ也。』(56オ) 一やこゑかしらの跡にもさきにも、あまらぬやうニこゑをかくる也。 一うたひのとめにうつかしら、後のかしら、うちきるかしら也。何も此分也。 一うつきさミと申事有。    一もんある能と云事有。又 もんなき能をははやし、知る心にかくる也。 一かしらをつゝくる事、はやくなりたかる物也。心をひかへうつへし。 一つくり物出てより後こしをうつ也。まへにかしらうたす候。 一しての出る時、しはひの人のかほに有。鼓打かくやをミぬ物也。 一しての舞、あふきあしもとをゆたんなく心をつくる也。舞の はやき時ハつゝミもはやし。おそき時ハ鼓もおそし。能々心 をつくる也。         一小鼓のしよしんなるをは小鼓をきかす 心に油断なくうつ也。手のうちゆたんあるましく候。』(56ウ) 一一せいをうつ時うたひ出しを心にうとふて一せいをうちそむ る也。            一座敷にてハ一せいをうたひて人申合也。つ きなき事をうたふ事有也。 京にて幸徳 一高砂・瀧之鼓・みもすそ川、是等之ワキ能ニハ手をうたぬ物也。 惣別ワキ祝言ハ後ばりに打物也。うたひも其心得有へし。 一関寺小町、老女ノ心持肝要也。たとへは家のはしらをたつ るニ一本くさり木、一本ハくさらぬ木をたてませ候やうに心 持を打也。かしらなとひかへ、かしましくなく老女の心持肝要也。 一百万・三井寺、此等之類ハ当座の物狂也。 一松風なとハしぢうの物狂也。   一やうきひ・野々宮・定家、是 等之類ハ王ノ御息女、其心得有也。 一うねめハ内裏の御神楽』(57オ) の火をかきたつる役也。 一観世類ニハ次第も一声も万大鼓からうち出し候也。 一今春にハ万小鼓より打出す也。然者中比弥左殿あひ 手にたかやす成候時、ミやうかのためにて候と申て、弥左殿より 御打出し候事也。是ハこしつ也。 一万あけはの事、金春ハかしら一つにてうたひすへて、観世 は一ひやうし也。 なかし キヲちヤゑいやあカ 一ちちちちちととついとととちちちちとととゝちとキ なかしうち候てこいやい、さてこしを打也。其時小鼓ハ八つかしらうつ也。 小鼓より打候手は、いつものこし也。 八ツかしらのあひしらい大つゝミ こす 一カキ キキキ カキ キキキ カカ キキキカカキキ ヤゑい カカ』(57ウ) 高安なかし キ                                                       一江口・うき舟なとニなかし有。  一百万、「申ハおそれなれとも、所ふつ」 此きさミうつ。きさミこし候つ也。後をおつへやり候。 一玉かつらハうき舟のあねこ也。けつかう也。うき舟ハ玉かつらのいもうと御 兄弟なれ共、うき舟ハさたうなる人にて御座候ニより、はやしも玉 かつらうき舟、其心得有へしと也。 〽小督、小鼓弥左衛門尉殿 ヲ ち ヲ ち ち ち 一「駒をかけよせかけよせてひかへ〳〵かくハなにそときゝたれは コス と と と おつとをおもひて」 一道成寺の舞ハおろしふかす。是習也。 「花の外にハまつはかり暮そめてかねやひゝくらん」 「ら」の字を引まハし候事、同音のうたひやうにて候。乱拍子ニよく候。 一惣別うたひの内、打やう。二つきさミ斗ハつまり候。さき にて一つやりこし候て、一つ又あひに二つきさミ入、あわせて打へ し。心持肝要也。』(58オ) 一いぬノ年七月五日ニ京にて御普請ノ時、田丸中務様 御宿へ備中屋一噌御朝めしニ被参候てひやうしやうかへ し之事を御相伝候。其御座敷ニ中書様・太田・ ・幸五郎二郎斗にて候。 本之序とハひやうじやうかへしの事也。ひやうじやうかへ しとハ本の序之異名也。ひやうじやうかへしのかゝり ハ角ノ拍子と申にてかゝり候。一噌口笛にて則我と手鼓 にてかゝりをあそはし候。 とち と ひうらりほう 笛のほうと小鼓之後ノヲツ同前也。 笛 是を角ノ拍子と云也。又ひやうしやうかへしをきゝつけ』(58ウ) 様ハ序之内ねとりをふき候。是聞付やう也。此通ひ すへし〳〵と一噌返々被申候。他見候ましく候。       〽江口大鼓之事 キ 大か 大 か 小 ちと 小 とと 一「すいちやうこうけいにまくらをならへしいもせもいつ」 一公方様御成之時之事、又公方様にての事、御能過候て 御酒もり御座候。其時、一番候。観世大夫、放生川ノ「たんかは うこく」とうたひ出し候。調子ハそうじやう。又笛吹ニ調子 をかへ候へと大夫申候時、黄しきを吹也。又頓而そうじ やうニなをし候。扨御順舞あり。とうさいしやう殿御舞 宇治より正の小うたひ也 ハちごのやふさめ、あすかい殿御舞ハ「なにもにす月こそ出れ」、』(59オ) 細川殿御舞ハ春栄なり。「かしんれいけつ」。いつれも 〳〵代々相定候。扨御酒もり、やう〳〵御はたしの 時、おさめニ大夫しゝのうたひをうたふ。是にておさまり候。』(59ウ)       ●式三番之次第 座付吹候て、やかてひしく。又其後、高音のゆり一く たり。 〽とふ〳〵たらり〳〵ら、たらりらゝり〳〵 とふ 地〽ちりやたらり〳〵ら、たゝりらかり らゝりとふ 大夫〽ところ千世まておわしませ 地〽我らも千秋さふらわう 大夫〽靏と亀とのよハ ひにて 〽さいはひ心にまかせたり とう〳〵たらり〳〵ら 〽ちりやたらり〳〵』(60オ) ら、たらりらかりらゝりとう スマイ〽なるは瀧の水、〳〵、日はてるとも 〽たえすとふたり、ありうとう〳〵とふすまひ スマイ〽たえすとふたり、つねにとふたり カンノ高音ノユリ一ツ加返す 君の千年をへん事は、天津乙女の羽衣よ、万 歳ましませ 〽亀あそふなり、ありうとふ〳〵とう○ ○同高音のユリ一ツ。アトハヒシク。 〽あけまきやとんとや 〽ひろはりやとんとや 〽座して居たれ』(60ウ) とも 〽カンノユリヨリ、ワウシキノ指ヘ吹上ル。 カ まいらふれんけや、とんとや 千早振、神の尊の昔より、わか此所ひさしかれと 同手、然とも少カヘテ吹也。 そいはひ 〽そよやりちや、とんとや 〽凡千年の靏は、万歳楽共うたふたり、又万代 の亀ハ、こふに三きよくをそなへ、渚のいさこさく〳〵 として、朝の日の色をまし、瀧の水れい〳〵と落て、 夜るの月あさやかにうかんたり、天下泰平国 土安穏の今日の御祈祷也○ありはらや、なん』(61オ) しよの翁とも〽いつもの祝言の笛一くさり呂〽あれハなしよの 翁とも、そやいつくのおきなとも 〽六ノ下 〽そよや舞の吹様一くたり有。翁舞の吹上也。口伝あり。 〽けふかる事かな、けふかり面白し、喜ひの舞なれは、一舞 まわふ、万歳楽〳〵〳〵手あり。口伝。 大鼓ノかゝりたるを見合て、長々とひしき一ツ吹候て、又やかて高音のユリ一ツ。 〽おさひ〳〵おう、喜ひありや、わか此所よりもな うかいは、やらしとそおもふヒシキヨリ、マイニカヽル。』(61ウ) 〽物に意得たる、あとの大夫殿にそと見参申さう 〽ちやうとまいりた 〽たかおたち 〽とし比のはうはひ つれともたち、御ミや殿ためにまかりたつて候、さん はさるかく、きり〳〵しんしやうにまふて、座敷に さつと御なをり候へ 〽此色のくろき尉かまわう するハやすふ候へ共、先あとの大夫殿、御舞候へ 〽あらやうかましや〳〵 〽ひやうしやうかへし一返し吹て、ひし きても。まひにかゝる。又ハやひし候ても不苦候。』(62オ)        笛の心持 一はやきをしつめ、おそきを引たて、きさはしを三 人つれてあかるに、小鼓さきに、笛中に、大鼓あと にたつを、さきなるを引とめ、跡なるを引上、三人 ならひてあかるやうに心持有へし。此心持也。跡は序、 中は破、さきは急。     一西行桜「後夜の鐘 の音、ひゝきそそふ」よりかけりあり。「春の夜の」と 云てやかて舞に吹へし。外山かたには、かけりなし。序』(62ウ) あり。同しく序ニ吹様有。はのおそき程也。心持 よく候。 一舞のうちにそりかへりに、ひやり やりと云手を吹へし。五段のうちにハたゝ一度なら てハ不可吹。座敷にても、はて候ハん時、吹手也。それによ つて座敷のはやしハ笛のまゝたるへし。秘事也。 一舞二度ある時ハ、後の舞の吹とめ、ひしき候。はし めをかんに、後を呂に、後をかんに、始を呂に吹也。是ハ 舞の吹出しの事也。』(63オ) 一祝言ハ平調に可吹。取分、此調子くんちんに用なり。 一かひこの笛、三人大臣出候時、一人正面にむき礼 をいたし候て立あかる少前かとに吹いたす。油断 すへからす。 一一切の能のうち、文よむ事候て、其うち吹へからす。 一はや笛の事、しやうそくによりて、吹様かハる へし。黒し白し黄色ハ、これしつかに吹へし。赤 きハ心持はやし。道成寺なとハしつか也。しかミ面も同前也』(63ウ) 一雨なとのふり候ハん時ハ、いかにも心をはつたと持て吹へし。 其心ハ、見物衆の心を能に入さすへき心也。はて候ハん時 の能も、心もち如此也。 一造り物の中より出候時は、いつれも〳〵ひしくへからす。 一能のはて、狂言のはてをひしくへし。此能一はん にてはて候ハんなと申候共、きりのとめにひしくへから す。ひしく時は、いつれも吹くたして、ひしく也。又こい能 なとは帰り、やかてひしくへし。』(64オ) 一舞台中にて物を着は、しんにふく。皷うちの脇 にてき候へハ、さうにふく。よのねとりをふくへからす。 一聟入よめいりなとに返す手をふくへからす。 一一せいのこしのうち不可吹。出はの大鼓のこしのうち をも不可吹。同しくかしら三つ打候て吹いたす。 一ゆりの心持。いかにも細き糸をはりて、中よりきつ てはなすことくに、ゆりとめをゆる也。 一とうゑいのかつこハ、やかてかゝる。東岸居士・自然居士ナトハ』(64ウ) 一段舞を吹候てカヽル也。 しんの序吹候て、やかて手有。白楽天・老松・放生河、 これ三番に極りたり。 一しんのらいしやうハ、始も後もひしく也。 一かんたんの吹出、口伝あり。同しく三段迄吹やうかハる。 一本のねとり、一ツならてはなし。人前にて聊尓に吹へ からす。心持笛をなへぬやうにふくへし。又吹納末 の音おそきハ、うれへなり。末はりに吹。祝言也。』(65オ) 一舞の笛之吹様、舞におりて一段、かん也。拍子 の心、いかにもさくに二段めより二段めにあり。のり てしつかにふく。同手アリ。以上三ツアリ。三段 め少拍子ヲつめ、四段めよりつまる。かんの手一ツ有。 五段はかん計也。急なり。 一はや笛を二くわんにて吹事有へし。独は呂 より、又独ハかんより吹。たかひにちかへて可吹也。 一神楽ハへいをすて、扇をひらき候へは舞にかゝる。』(65ウ) 神楽三段、舞二段也。同舞に定たる手あり。 一猩々の前ハ渡拍子。後の吹出し、呂。ミたれハ仕手に 向へし。同しくかゝりやう二つ有。 一神舞は後ニかんより吹出す。 一早笛にをさへ所あり。神楽にも同前也。 一調子をとふとも聊尓に云へからす。 一音に三つつゝ替り候音いて候間聊尓にこたへ ぬ事なり。         一笛を吹にハのむ息肝要也。』(66オ) 一はや笛の後のかけり、いつれも舞に吹へし。 一かくの笛、いつれも四段をくり返し〳〵ふくへし。 一わたり拍子、何も三段に吹へし。おなしくとめに 大事可有。口伝。      一皷桶にかゝりたるを 見、すわうのひもをとき候を見て吹出す。ひしき 候時ハつゝミを構たるを見て吹へし。 一貴翫の人に笛をいたす事。かしらをさきへ、う た口を上になして左の手をさきへ、右の手をあと』(66ウ) になしてわたすなり。 一つうれいの人にうた口を右へなして、右の手をつ いて左にて渡すへし。 一「身のほとをしれ」。これもろ〳〵へわたすへし。取 分此七ツのユリ、何へもわたるといへとも、中にも 「あらさひし」といふ所にふくゆり也。此たくひおなし。よく 〳〵分別して可吹事、肝要なり。』(67オ) 〽一十二律甲乙者以八逆六名日可分別 一越調 断金調 平調 勝絶調 下无調 雙調 鳬鐘調 黄鐘調 鸞鏡 盤渉 神仙調 上無調 〽此寸方者、依管大小相替也。』(67ウ) 下除 鸞鏡調 干宮 平調 五除  上商 双調 夕角 黄鐘調 中徴 盤渉調 上無調 六羽 一越 ・宮調子平調之時、以干穴當宮位也。 ・双調者上穴宮也。已下以上可分別。 』(68オ)       ●時ノ調子 〽刁卯サウテウ 〽巳午ワウシキ 〽申酉平 〽亥子ハンシキ 〽丑未   〽辰戌一コツ  一越 子 十一月  断金 丑 十二月  平調 刁 正月  勝絶 卯 二月  下無 辰 三月』(68ウ)  雙調 巳 四月  鳬鐘 午 五月  黄鐘 未 六月  鸞鏡 申 七月  盤渉 酉 八月  神仙 戌 九月  上無 亥 十月』(69オ) 』(69ウ)  ●笛之穴之名         こくうの調子     〇 下  八―呂    雨鳥ハ さうてう     〇 カン 一      風竈  ひやうてう     〇 コ  二      鐘火  わうしき     〇 上  三―上呂   河水鳥 はんしき     〇 サク 四―大呂   悲同 上無  〇 中  五―大律   畜類はアソヒ鳴双調也。愁  〇 六  六―下    の聲ははんしき也  〇 九  七』(70オ) わたましの時、座敷にて火の調子吹へからす。 定まりて吹てうしあり。 一ねとりの事、末をよハくふけハ愁也。又あまり にいきをはるもわろし。少末はりに吹へし。 つゝけて吹くたす。愁也。吹くたしてまつて、みし かくふく祝言也。必度々かやうに吹へきにハあら す。祝言の時なと、うたひはしむる時の心得也。あ はれなるうたひのうち、又はねとりなとしませ て吹にしつかに長く吹へし。』(70ウ) 一笛の吹出しと吹納とハ、しの字のことし。是を あしく心得ては笛よハくなる也。しの字の心、 口伝アリ。 一鶯の笛によるといふ事も、調子鳥の音 にあひぬれはのかすして笛をふけは調 子あふ時ひゝくなり。聞人の躰身にもしむ ハかりにおもしろく候ハん事尤候。たゝ調子肝要也。 一はの舞の吹いたしのなまり、くるしからす。』(71オ) 一次第ハかんのねとり。ユリナシ。 一一せいハねとりにユリアリ。 八かしらのたち吹す。鼓をふきけすにてわろし。』(71ウ) ・三わ  ・定家  ・まつかせ  ・せきてら ・たかさこ 一高砂    二たゝのり 三定家    四遊屋 五三わ    六たへま  七まつかせ  八せきてら 九やまうは  十江くち  十一三井寺  十二通小町 十三あたか  十四井筒  十五錦木々  十六やうきひ 十七とうほく 十八うねめ 十九夕かほ上 廿うき舟 廿一玉かつら    此書立之内五番書ツケ申候。』(72オ) 〽三わ 〽次第うたひとめ、かしらなし。 〽「ろうせいとしつかなるさんきよ、しはのあみと ををしひらき、かくしもたつねきりしきミ、 かしら一つにて打かへし、「あきさむき」 つミをたすけてたひ給へ、あきさむき、まとの うち、〳〵、のきのまつかせふきしくれ」、 「したひのミつをとも、こけにきこえてしつかな ほ キ キ キ キ キより る、此山すみそさひしき」、「とむらいきませ杦た か てるかとをしるへにて、たつね給へといひすてゝ』(72ウ) かきけすことくにうせにけり」おつ二つ、いつもの物 キより か一つにて打かへし、「行は」と 「此さうあんのたち出て、ゆけハほとなく三ハ か一つ打かへし、「松ハ」 のさと、ちかきあたりかやまかけの、まつハしる しもなかりけり、杦むらはかりたつなる、かみか か か キ キ きハいつくなるらん、かみかきはいつくなるらん」、 「しはしまよひの人こゝろや、おんなすかたと三 かしら一つ打かへし わのかみ、〳〵、ちわやかけおひひきかへて、たゝほ おりこかちやくすなる、ゑほしかりきぬ」「かたし』(73オ) けなの御事や」にかしらなし。序、「さいとはう こす キ キか キかかか か へんのことわさ しな〳〵もつてよのためな り」、中りやくのかしらにて打とむる。さしこゑ、 キ キ キ キ キ カカ 「やちよをこめしたまつはき、かハらぬ色をた のミけるに」、か二つ、一つにて打かへし。くせまひ、「夜る ならてかよひたまハぬハ、いとふしんおゝきこと なり」、か一つにて打かへし、「たゝおなしくハとこし キ おつ キ キつゝけ候て なへに、ちきりもこよひはかりなりと、懇に』(73ウ) キ 「このやまもとのかみかきや」おつ キ 何となりとも かたれは、すきの下へにとまりたりか、こハそも あさましや、ちきりし人のすかたか、そのいと の三わけのこりしより 三わのしるしのすき か か キキ しよをかたるにつけてはつかしや」か一つにて打 かへし、「けにありかたき物かたり、きくにつけ てものりの人」「これそかくらのはしめなる」、大 鼓うち出すにかしらつけす、「あまのいわとを ひきたてゝ、かミハあとなくいり給へハとこや』(74オ) ミのよとはやなりぬ」、是より後いつもの物に候、 「まひたまへハ」にうたひふしあり、太鼓かしらあり、 いつものにあらす、「てんしやう太神」の「てん」のちより キよりつけ候、「おもへハ伊勢と三わのかミ、〳〵ハか一 か か か かさねて キ キ か キ よりつゝけて たひふんしんの御事、いまさら何といわくらや、 おつ キキ おつ キ そのせきのとのよもあけ、かくありかたきゆ キ か か か かさねて キ カ か か かさねて めのつけ、さむるやなこりなるらん、さむるや キ か なこりなるらん」か 打とむる』(74ウ) 〽定家 〽「山よりいつる」「ゆくゑやさためなかるらん」、こゑあり、おつ二つ おつより地一段にてかしら一つにて打返し。 「冬たつやたひのころものあさ またき、くももゆきかふおちこちのやままたや まをこへすきて」、か一つにて打かへし。「もみちにのこる なかめまて、花のミやこに付にけり、はなのミや キ キ こゑあり こにつきにけり」、おつ二つ。「いまふるも、やとハむかし 乃しくれにて」、かしら一つにて打かへし。「宿ハむかしの しくれにて、心すミにし其人の、あハれをしるも 夢のよの、けにさためなやさたいへの、のきはの』(75オ) 夕しくれ、ふるきにかへるなミたかな」とうたひ候て、 「ものすこき夕なりけり〳〵」にてかしら打かへ し、おつよりとり候て、いかにもたふ〳〵と打 かへし打つ。「御きやうをもよみとむらいたまハヽ なを〳〵語まいらせ候ハん」、「わすれぬもの をいにしへの心のおくのしのふやま、しのひ かか キ キ か すへハかゝり てかやうミちしはの露のよかたりよしそ なき」、中りやくのかしらにてうたハする。 「いまハたまのをよ、たへなはたへねなからへハ、しの』(75ウ) ふることのよハあるなり、心のあきはなすゝき、ほに いてそむるちきりとて、又かれ〳〵の中 かしら二つ となりて、むかしハ物をおもハさりし」、「のちの こゝろにはてしもなき」、かしら二つ一つにて打あけ候て「あハれしれ、しもよりしも にくちはてゝ」、くせまひ、いつものことく、「おとろのかミもむすほお か キ キ キ れ、露しもにきえかへる、まうしうをたすけ キ キ 給へや」、かしら一つにて打かへし、「けふもほとなく くれはとり、あやしや御身たれやらん、 おつキ キおつ キ キ キ キ まことのすかたハかけろう、いしにのこすかたたに、』(76オ) それともみえぬつたかつら、くるしミをたす かしら かしら キ キ おつ二つ け給へといふかと見えてうせにけり いふ かと見えてうせにけり」 〽「いふへ」、「草のかけなる 露の身を」、か一つにて打かへし、「おもひのたまのかつ 〳〵に、とむらふのりそまことなる、とむらふのりそ まことなる」、さて一せいにて、「あしたのおくも夕のあめと そつと心はかり也 キ お つ キ キ ふることも」、「いまの身もそとハつれなきていかか つら、これ見給へや御そう」にてかしら打へからす。 おつ□て おつよりかゝり、きさミにて、たふ〳〵と「二つもなく、三つも』(76ウ) □ち候て キ キ そと心はかり おつ キ キ なき、いちみのミのりのあめのしたゝり」、これよりの ちかしらなし。すくにきさミニて序へかゝる也。まい すきて「おもんなのまひのありさまやな、をもなや おもはゆのありさまやな、もとよりこのみハ月の かほはせもくもりかちに、かつらのまゆすみもおち ふるゝ、なみたもつゆときえてもつたなや、つたの おつキキ つゝけて はのかつらきのかミすかた、はつかしやよしなや、夜 おつ るのちきりのゆめのうちにと、ありつるところ か か キ キ にかへるハくすの葉の、もとのことくはいまとハるゝや』(77オ) か おつキキ キ か か か か か キ キ キ か ていかかつら、はいまとハるやていかかつらのはかなくも、かたちハうつもれて キ か うせにけり」、かしら一つにてとむる。 〽松風村雨 か か キ 〽「すまやあかしの浦つたひ〳〵月もろともに出 キ か ふよ」、一せいこし候て、しつめかしら。「まちて」かかかキか か キ キ か  一段きゝ合候て 「なみこゝもとやすまのうら月さへぬらす きさミよりつくへし たもとかな」、ちよ〳〵〳〵ちよ〳〵ちよヤヤヤ ヤヤ かか ヤ ヤ ヲはかあヲ ヤヲは ヤ か、「あきになれたるすま人の〳〵、月の夜 しほをくまふよ」、かしら打へからす。さてさしこと』(77ウ) なり。うつなり。「おもひをほさぬこゝろかな」、中りやく のかしら打候て、「かくはかりへかたくミゆる」「てし ほをいさやくまふよ〳〵」、かしら一つにて打かへし、 「かけはつかしきわかすかた」、か二つ、一つにて打〳〵、「しの ひくるまのいつまてすみハはつへき」、か一つにて打かへ し候て、「野中草の露ならハ」「あまのすてくさいたつ か か らにくちまさりゆくたもとかな、くちまさりゆく キ キ たもとかな」「よしそれとてもおんなくるま、よせてハ かへるかたをなミ」、か一つにて打かへし、「よせてハ帰るかたを』(78オ) キ キ 小鼓おつ一つ手なり なミ」、か一つ、「あしへのたつこそハたちさわんけよもの あらしもをとそへて、よさむなれとすこさん」「さのミ なとあま人のうきあきの身をすこすらん」、か一つ にて打かへし、「枩嶋やおしまぬあまの月をたに かけをくむこそ心あれ〳〵」、か一つにて打かへし、 「はこふあとをきみちのくの」「月ハひとつかけ 「しほ」にてによう か か キ キ おつ キ キ ハふたつうゝミつしほの夜るのくるまに月をの か キ キ か キ か おつ せてうしともおもわぬしほちかなや」、「又いつの 世のおとつれを枩かせも村雨もそてのミぬれて」』(78ウ) 「我かあととひてたひ給へ」、か一つにて打かへし、「露も おもひもみたれつゝ」、か一つにて打かへし〳〵、「こゝろ きやうきになれころもの」「わするゝひまもあり なんと、よみしもことハりや、なをおもひこそハふかけ れ、よひ〳〵にぬきてわかぬるかりころも、わ すれかたミもよしなしとかすてゝもおかれすと か おつよりキサミにていかにもゆるりとうつ所也 れハおもかけにたちまさり、おきふしわかてま くらより、あとよりこひのせめくれは、せんかたなミ たにふししつむことそかなしき、ミつせ川」、いわする所』(79オ) 心もちあり。「ミつせ河」よりまひまてへちきなし。 「いなはの山」よりのちのまひまてもへちきなし。 「松にふきくる」「わかあととひてたひ給へ、いと ま申て、かへるなミのをとのすまのうらかけて、ふ カサネテ か か キ か キ お キ キ お キ キ くやうしろのやまおろし、せきちのとりもこゑ か キ か キ キ キ キ キ おつ キ キ こゑに、ゆめもあとなくよもあけて、むらさめときゝ か か か か か キ か しをけさ見れ ハ枩かせ はかりやのこるらん」かにて かさねて かさねて 打とむる。』(79ウ) 〽次第あるかゝり、うたひとむるところ、かしら二つにて キ よ り 打とむる。「ことをつくしてしき嶋の三道をねかいの いとはへて」、か一つにて打かへし、「おるやにしきのはこ か すゝき、はなをもそへてあきくさの、露のた か キ キ か一つにて打かへし まことかきならす、枩かせまても折からの、たむ か か キ キ けにかなふ夕かな、たむけにかなふゆふへかな」 「すけるこゝろハあふミの海のさゝなミや、はまの まさこ」のこうたひ、おさめにかしらなし。「うつろ キより ふ物かよのなかの」、か一つにて打かへし、「人のこゝろの花』(80オ) やミゆる、はつかしやわひぬれは」「さそふ水あらハ キ か か いまもいなんとそおもふ、はつかしや 序けにや つゝめとも」、此かしら、ていかなとの同前。さしこゑ あるかゝり、かしらなし。 ゑいにおなし。かしら二つ、 一つにて「有ハなくなきはかつそふ世の中に」、 ヲキ あるかゝり。「一夜とまりし宿まても、たいま キ キ キ いをかさり、かきにきんくわをかけ、戸にハすい キ ヲ キ キ キ キ しやうを」「はにふの、こやたまをしきしゆか カ キ カ カ ならん」ヲキ「草の戸にすゝりをならしつゝ、筆』(80ウ) キ キ キ ヲキ をそめてもしを草、かくやことのはもかれ〳〵に あはれなるやうにてつよからす、つよからぬハおほな を のうたなれは、いとゝしくおいのみの、よハり ゆくはてそかなしき、いたハしやめもあてられぬあ りさまとても今夜ハ」 一ちこのまひ、うちあけ候て、きさミ一段うち候て、「年 待てあふとハすれとたなはたの」「もゝとせは」 よりまひ。         一序之内おろす事あり。 一まへのまひをりやくして、のちのまひをはの舞 にもはやし候。』(81オ) 「恋しの古しへヤ」カ打切 一「さるほとにはつあき」とかへさすにうたふ事 あり。是ハくわんせかゝりなり。心得て打へし。 ゑいとこゑあり おつ キ キ キ キ 「はつかしのもりの、はつかしのもりの、こかくれも キ よもあらし、いとま申てかへるとて、つへにすかり てよろよろと、もとのはら屋に帰りけり、もゝ かさねて 同 か か か か とせのうはときこえしハ、こまちかはての か か か か キ か キ か ななりけり、こまちかはてのなゝりけり」にて 打とむる。』(81ウ) 〽たかさこ かしら か キ キ 〽「今をハしめの旅衣〳〵、日もゆくすゑそひさ                                                                     かしら二つ しき」、次第取て、「今をはしめの旅衣〳〵日 も 行すゑそひさしき」、かしら二つ一つおつにて打かへし、 かしら一つにて打候 なのらする。「旅衣すゑはる〳〵のミやこちを、〳〵 けふおもひたつうらのなみ、ふなちのとけき春風の、 か一 か一 か一 キ か一にて打かへし いくかきぬらんあとすゑの、いさしらくものはる〳〵 かさねて おつ キ キ ヲ キ キ か か カ カ と、さし もおもひしはりまかた、たかさこのうらに かねて か か か キ キ こゑあり つきにけり、たかさこのうらにつきにけり」、おつ二つ さて一せいにて候。へいせいのやうにて候。しつめかし ら、か一つ、又三つ、キか一つ、一せいうちこみ候て、又か二つ、』(82オ) 一つにて打かへし、さしこと「おもひをのむるはかりな り」、中りやくのかしらうち候て、「おとつれはまつ」 とうたハする。此うたひとむるところ、か一つにて 打かへし、「所ハたかさこの」、又か三つにて打かへし候て、 又うたハする。又「なるまていのちなからへて」にてか一つ にて打かへし、「なをいつまてかいきのまつ、それ か か キ キ 久しきめい所かな、それも久敷めい所かな」、おつ二つ、「春も長閑に」、 しやうとくかしらなく、すくニ「国も」、 キ 又「しかいなミしつかにて」、かしら一つにて打かへし、「しか いなミ」うたハする。又「あいにあひおいの枩こそめて たかりけれ」、かしら一つにて打かへし候て、「けにやあおきて』(82ウ) も、こともおろかやかゝるよに、すめるたみとてゆた カ一つ か一つ かなる、きみのめくミハありかたや、きみのめくミハ キ キ ありかたや」さてくり上、かしら四つ五つうちて うたい出さする。「やうしゆんのとくをそなへて」、 かさぬる こす キ か かかかかいつものこしのすへなき物也 か一。「なんしはなはしめてひらく」、やはか一つ にて、やをはかしら二つかさねて又一つ、合三つ、 いつものにて候。さてさしこゑうたい候て、か二つ、 一つにて打かへし候て、「しかるにちやうなふか」「春の ヲ キ ヲ キ はやしの」、又くせまひの「あきのむしのほくろ キか一 か一 キ キ になくもみなわかのすかたならすや」、か一つにて』(83オ) 打かへし候て、「中にも此まつハ」とうたハする。又 「いこくにもほんちやうにも、はんミんこれをし やうくわんす」、か一つにて打かへし候て、「たかさこの」 おつ キ キ より か とあけはうたハする。又「まことなりまつのは か カ キ キ キ の、ちりうせすしていろハなを、まさきのかつら なかきよに、たとへなりけりときハきの、中にもな か一つ キ キ ハたかさこの、まつたいのためしにも、あひをひのかけ キ キ そひさしき」、か二つ、一つにて打かへし、「けになにし おほまつかへの」、かしら一つにて打かへし候て、「おいき のむかしあらハして、そのなをなのり給へや、今ハ』(83ウ) 何をかつゝむへき」、かしら一つにて打かへし候て、「これ ハたかさこすみのゑの、かミこゝにあひおいの、ふう〳〵と」 「住吉に先ゆきて、あれにてまち申さんと、ゆふな かさねて おつ キ お キキ か ミのみきわなる、あまの小ふねに うちのりて、をひ か キ キ キ かせにまかせつゝ、沖のかたにいてにけりや、をきの かたにいてにけり」、かしら二つにて打とむる。「高砂や、こ の浦ふねにほをあけて」、かしら一つにて打かへし、「月 もろともに出しほの、なみのあわ路のしまかけや、 とをくなるおのをき過て、はやすみの江につ きにけり」、か二つにて打かめ、さて太鼓うち出しある』(84オ) かゝりにて候。「たまもかるなるきしかけの、松根 か キキ  カ キ  か キ ツネノコトク によつてこしをそれは、せんねんのみとり手に ミてり」、〽打上つねのことく打とめて、つゝけて中略にて打かへすへし。 「ありかたのようかふや、月すみよしのかミあそ ひ、ミかけををかむあらたさよ、けにさま〳〵の か一つニて打かへし候て「こゑも」と まひひめの 、こゑもすむなりすみの江の、まつかせ もうつるなる、せいかいはとハこれやらん、かミと のミちすくに、ミやこの春にゆくへくハ、それそ けんしやうらくのまひ、さてはんせいのおミ か一つ おつ キ おつ キ キキ キキ おつ キ ころも、さあすかいなにハあくまをはらい、おさむ』(84ウ) か キ か カ か キ キ キ る手にハしゆふくをいたき、せんしうらくハたみをな ツゝケテ お キ キ キ カ一つ キ キ て、まんさいらくにハいのちをのふ、 あひをひの かさぬる か か か キ か か か か まつかせさつさつのこゑそたのしむ、さつ か キ カ キ さつのこゑそたのしむ」、〽「たのしむ」といふてかしら 一つにてとむる。』(85オ) 』(85ウ) 一〽わきの能次第之事、きより打出す。口伝 あり。さて本のかしら可打申候。 さて上りやくのかしら打へきなり。 さて下りやくのかしら可打なり。 一大事のかしらなり。一二このかしら一大 事にて候間、少々にてハ打ましき事也。 さやうニ候ハヽ三段めには中りやくのかしら 打へし。さてこすかしら打也、又下』(86オ) りやくのかしらうち候ハヽ、こすかしら 打へからす。さて上りやくのかし らにてうたはすへし。 一〽下りやくのかしら二まて打やうもあり。こゑ 大事也。口伝有。此かしら、はせをの「見ぬいろの」 とうたハする前にハかならす二の下りやくうつ 事にて候。かへ二つ申候。』(86ウ)       〽わきの能五段の 一一せいの事、本のかしら打候て、さてなかし ヤアヲヤヲア カ ヤゑいヤヲ  ヤ ヤ カ  カカ カカカカカカカカカカカカカカ下下下下下 ヤゑいヤヲアヤアヲヤヲアヤゑいヤヲ ヤ ヤ こす 下下下御下 下―カこれをうけて八つかしらカ―カ―カキキ ヤ ゑいヤア ヤ キキカキキキカカキキカカ カ、これハ八つかしら と申物也。小鼓よりかしら打かけ候へハ、八つかしら うつ物にて候と被仰候。』(87オ) 一又なかしをハうち候て少あひをおき候ても、八つ かしらうち候と被仰候。本ハなかしのとめのかしら をうけ候て、やかてつゝけて打也。八つかしらす き候て、さて中りやくのかしら、其後しつめ かしら打候てうたハする也。 一一せいをうつにちと〳〵はれかましき人のあ はこす。前をいつものやううたす共。 ヤアヲヤヲア ヤゑいヤヲ ヤ ヤ カ カ カカ、打こすへきなり。』(87ウ) ヤアヤア ヤゑい ヤヲ アヤこす ゑいヤヲアヤ 一カ カカ カ キ キキキカキカキカカキカカ カ ヤアヤア ヤゑいヤヲアヤこす ヤゑいヤオアヤ 一カ カカ カキキキキカキキキキカカキカニカカ カ こす ヤゑいヤヲアヤ 一同キ キキキカキキキキカカニカ  キカ ヤアヲヤヲアヤゑいヤヲアヤアヤ こす ヤゑいヤヲアヤ 一カ カカ カカキキカキキキキカカニカカ カ 一なかしの事、松風村雨の一せい、一 ゑくちの出は、一わきの能、第一 たかさこの一せいに打へし。』(88オ) ・永禄元年卯月吉日   〽威徳相伝書写之』(88ウ) 』(89オ) 』(89ウ) 此書物足代七郎右衛門尉殿御相伝被成候物を、同 伊兵衛殿江懇望仕来、色々あつめ三帖ヲ壱帖ニ書也。 慶長拾二年 三月吉日 二見忠隆(花押) (朱筆花押) 』(90オ)