笛伝書残簡 【凡例】 一、本項には、国立能楽堂蔵『笛伝書残簡』(目録1―1)を翻刻した。 一、底本を忠実に翻刻することを原則としたが、印刷上の制約、通読の便宜を考慮し、左の方針に従った。  1、漢字と仮名の別、仮名遣い、送り仮名は底本の通りとした。丁の区切りを』で示したが、改行は無視して翻刻している。  2、適宜句読点を付した。濁点は付していない。  3、漢字異体字や旧字体は、通行の字体や新字体に改めることを原則とした。但し、「哥」「云」「躰」などの若干の異体字は底本のままとした。  4、変体仮名は普通の平仮名に改めたが、底本は片仮名をも多用するため、平仮名と片仮名との別は底本のままとした。「ゟ」「乄」等の合字は原本の表記のままとした。  5、虫損・難読文字等、読めない部分は□で示し、文脈や他伝書の記述等から推測出来る読みがあれば( )で補った。  6、本文への注記・振仮名・振漢字等は、括弧等で囲まず、すべて底本のまま然るべき位置に小活字で示した。見消など、本文に訂正がある場合、原則として訂正後の形のみを示している。  7、本資料には謡曲の引用はほとんどないが、引用がある場合は「 」で囲んで示した。  8、本文は墨筆のみの一つ書きで記されている。各項目の内容がある程度わかるよう、上段に小見出しを付けた。本文中で触れられている曲名も併記した。  9、本文中に見える笛の手の名称はゴチックで表示した。確証がなくても笛の吹き方に関する名称だろうと思われるものも含んでいるが、次第・一声や各種の舞など、現行演出にも通ずる囃子事の名前は対象としていない。  10、本文の下段には、各項目のおおよその内容が追えるよう、簡単な現代語訳を付した。ただし、意味不明な箇所も多く、暫定的な仮訳として掲載している。 一、本資料の翻刻・校訂・注釈の担当は以下の通りである。  1、翻刻は、中司由起子・深澤希望・山中玲子がおこなった。  2、1の下原稿に基づき、高桑いづみ・森田都紀も含めた五人の輪読で全体の内容を確認し、重要な伝書であることを確認し、本書での翻刻公開を決めた。  3、料紙の並び替えやABCの区分け(解題参照)は、中司・深澤の両名がおこなった。  4、本項の原稿作成にあたり、山中が全体を読み直し、各条に見出しを付け、可能な範囲での現代語訳または内容のまとめを記入した。解題も山中が担当した。  5、内容解釈に関しては、高桑いづみ・森田都紀の両名より、現代の囃子に関する知識や他の笛伝書に見える記述等について、助言を得た。山中の現代語訳の誤りを両名の助言によって修正した箇所もあるが、全体の文責は山中にある。  6、ただし、翁関係の記事は多岐にわたり、中には長大な記事もあるため、基本となる構造や現行の演出、各条に記された内容の解釈等について、本文下段の現代語訳とは別に、高桑が「置鼓、開口、座付ナシに関する覚え書」として、詳しい解説をしている。 【翻刻】 1獅子の舞 望月 2獅子乱序 石橋 3開口 4開口の吹続け 5物着の真・草 松風・杜若・羽衣・盛久・芦刈・縄鈴木 6冠り物の物着・真ノ物着 東岸居士・自然居士・松風・富士太鼓 7面の囃子 8アイ終了の報せ 9定家 露の紐取 10卒都婆小町の立廻リ 11鈴之段トメ 12道成寺 13夕顔 14融 笏之舞 15笏之舞 16融 出端と舞の位 17融 返す手 18神楽 19三輪 20松風の舞 熊野 21松風の後の舞 22松風・富士太鼓物着 23鉢木の出端 24忠度・山姥の一声(頭越) 25敦盛 26海士 27通小町 28鵜羽 29難波 30蝉丸 31井筒 32志賀 33玉井 34鵺 35谷行 36正尊 37伏木曽我 38大木 39名ノリ笛 40春栄 41大会 42舞の延長 43次第の吹きわけ 44錦木 45軍陣・婚礼などの吹き様 46葵上 47序ノ舞と破ノ舞の見分け方 48草の物着 羽衣・和布刈 49盤渉ノ舞 海士・融 50恋の手 野宮・錦木・融 51盤渉楽 邯鄲 52舞の吹き出し 難波 53体・用の舞 野宮・松風 54陰陽の吹き様 55脇能の海士 56萬歳楽 57出端働き 58草の出端 誓願寺 59遊行柳の出端 60移徒の笛 老松 61移徒の調子 62江口の序 63序破急 64婿取・嫁取の笛 65川端での笛 66川端の山で 67稚児若衆の所望 68女衆の所望 69僧の所望 70新座敷での笛 71真之来序 72獅子の乱序 73狂言門守 74素出しと門守 鞍馬天狗・是界・大会 75御前での老松 76御前での一管 77江口・定家の習 78修羅能の高音 79カリ口メリ口 80謡のアシライ 81門前での吹き様 82仏事の能 83座敷での所望 84盤渉を吹く頃合 85大事の能と鉄漿 86祝言の調子 87鈴之段 88谷越の吹き様 89海士の舞 90序破急 91百万の舞 松風 92自然居士・東岸居士 93舞の吹き様 94海士の装束と舞 95当麻の太鼓 96出端の段数 97囃子の位 98脇能開口 *かしこまり、わき大夫(八帖) *呂になし候処ゟ(八帖) *うけて(八帖) *三つ(八帖) 99五段之一声 100江口の大鼓一調 101六番目の祝言 102座敷での置鼓 103座付なし置鼓 104置鼓吹き様 105置鼓のユリ 106置鼓ユリの鼓 107落とす音取の置鼓 108開口と座付なし 109次第吹き様 110女・僧・稚児若衆の次第 111大臣・男・山伏の次第 112置鼓の笛 113間語リ終了の合図 114鬘・修羅のクリ 115鬘・修羅の吹き様 野宮・定家 116修羅の中入 117脇能の中入 118鬘物の中入 119作リ物ある能 120一声のヒシギの有無 121下リ端吹き様 122自然居士の舞 123朝長出端・六道の習 124曲舞のアシライ 125序から舞へのヲロシ 126五段ノ舞と三段ノ舞 127序ノ舞・破ノ舞 128過去・現在の早笛 129大べしみ・小べしみ 130式三番 131舞の吹き様 132舞を三段に 133序のヲロシ 134老松の出端 135太鼓の序 杜若 136松風見留 137江口かすりの手 138高安に吹く手 139舞の段取る所  此ひしきハもろひしき也。さて大夫あふきヲさして小袖ヲつまミ段ヲ取り、頭ヲうたせる也。つゝみ打の前ニてしとめあふきぬきて、きりヲ舞也。能ニてハ七段舞也。座布ニてハ三段程。やかてつまり候様に吹。笛ゟ吹上候也。又座布にて、人所望なさるゝ事有。序吹て本のことくひしきてさて、しゝヲ吹出す也。吹上様ハ笛次第也。能にてハ大夫のふりニ、したかうヘシ。笛はかりにて御所望の時、吹上吹へからす。たゝひしきて置也。吹上習有。 一 しゝノ乱序ノ吹様。「やうかうのしせつも、いまいく程ニよもつきじ」これゟ来序ニてかへり候也。そのうちに大夫ハこしらへてかくやニい申候。そのまゝやかて大夫出る也。いかにもゆふ〳〵と来序ヲ吹候事能候。此来序ハ三ツの吹分とて、一段大事ニ仕候。僧ノ乱序ニてもなし。又しんの来序ニてもなし。僧の来序ハおさゆる、又しんの乱序ハはねる。其中ヲ吹候ニ仍而、まハして吹候事、三ツ大事と申候。はしめさへまハし候へハ、後ハしんの乱序ノ様ニ吹候事能候。ひしきハもろひしき也。 一 かいこの笛の吹様。置つゝみのゆりすき候て、三大神出る也。是、わきの出様ノ大事と云。其時ハ六ノ下ゟ心在てきおいて吹也。かり衣の袖ヲひらきかうへヲ地ニつくる時、吹かける也。是吹ふせると云。又、かうへヲ上候時ゆりヲ吹也。是吹ヲこすと言り。大事也。さて又わき、かいこヲ云、道行ヲうたい、さて一拍子ニて次第ヲうとふ。笛ハ謡にしたかうへし。祝言ニ吹へし。わき初め露ヲ取時小つゝみ打上る。頭かす七つ。七やうの本ヲかたとるゆゑ也。 一 かいこの吹つゝけと申ハ、わき置つゝみの内ゟ出てしてはしらのきハへきたる時ゟ、きヲいかけてなのりの笛ヲ吹て、わき礼ヲする時、ひしきかけて、さてたかねヲ一くさり吹ヘシ。是ヲ一礼の笛とも又かいこのかけとも言也。能々見合かん用也。又云ク、置つゝみすきてわきの出る事、うしヲかゝりの大事と云也。一噌かゝりニハ、置つゝみの内ニ出るヲ本の習と云也。さりなから二日めニ又かいこ  』 御所望候ハゝ、其時ハ置つゝみはて候て出候事有。是ヲかへの大事と云。其時ハわきまくヲ上るヲ見合、をるたかねゟ吹かけ音取ニなき様に吹かける也。これもかいこノ吹かけハ同前也。 一 ものきノ段ノ吹様、真草有。真ノ吹様、つゝみ二ツ三ツ程こいやい候て、物木の笛吹かけ候。かり衣ヲぬキ舞衣ヲきせ、左の袖ヲとをす時、つきヲ吹也。ゑほしヲきせ、ひほをむすふ時、其つきノゆりヲ吹あはする也。あとニたり不申共、よの事不可吹候。吹たり不申共、さやにおさめて置也。たゝいて謡ハ、又シテ松ノ本へゆきてうたう大夫も在、其時ハ大夫ニ尋候て少なかくはやうに可吹也。ね取にコテヲ長ク吹事きろうと云共、ものきにかきりコテとめ前長ク吹事習也。大事也。草の物木ハ、かきつはた、羽衣なとのたくいなるへし。もり久、あしかり、なわすゝきなとのるい、むすふ音取か能候。男の姿たるによつて、つよく吹也。かやうのるいニものきの内、狂言出るあしらい事有。其時ハきやうけんニあしらハせ候て笛不可吹候也。大事なり。 一 又云ク、とうかんこし、しねんこしのかつこ、あるいハてんくはんヲき、ゑほしなときる事あり。其時ハコテのたかね、下たかねなとか能候。ゆめ〳〵本のものき不可吹候。しんのものきハ松風、ふし太こ、此二番ニ相定候也。 一 おもてによる拍子と云事有。大夫上手なれハふりよにおもしろき面ヲかけ候事有へし。其時ハならいヲすて面ヲ本とはやすヘシ。習也。女面ニイロ〳〵在。こうおもてハ年比十七八ヲ言也。さうと申面ハ三十斗なる女の事也。ふかい面と云ハ四十斗成を言也。此年の位ヲしりて吹候ハヽ、近比おかしきよし云々。 一 狂言の相の申納候時、笛吹様有。かくやへ相語はて□□(候を)しらせんかため也。つくり物ニ入て  』 いしやうなときせ候時ハ狂言語はて候時分、呂ヲ少吹へし。是大夫座衆ニ調子しらせんため也。 一 ていかの舞ニつゆのひほ取の吹様。序ヲつる〳〵と正面へゆき、一へんまハりて仕舞、はしらゟ舞出す。 一 そとハ小町の吹様。かけり、つねのゆりゟ吹出して、其かけりに後ゆりヲ可不吹候也。口傳。 一 すゝの段ノとめひしき、あふきヲいたゝく時、ともニひしき合候事大事也。 一 道成寺、初ノたかね、呂ヲ吹て、コテノたかねニて僧出る様ニ、さてなのり也。せりふきゝ合、ひしき。次第高音つよくうつくしく、心鬼神のことくもちて吹へし。「くれそめてかねやひゝくらん」と謡ところ、たかねノひしきヲ吹かけ留。さてこつゝみ、ヲソクテ一くさりうたせて吹出すへし。下ノたかねゟ吹出し、笛ゆら〳〵と吹かけ、大夫かねに目ヲつけ候時、きヲかへてゆりヲ吹合候也。是ヲ大事ニ仕候也。其心ハ大夫かねヲ目かけてゟ心もち、かくへつ也。「道成寺とハなつけたり」と謡ところに、のたれて有。「山寺ノや」と云、爰ニ舞有。はノくらいなり。此吹出しニならい有。龍神ノかゝりと是ヲ云。人ノ聞かとめさる様ニ謡ノ内ゟ吹かくへし。此舞ニかきり、昔ゟおろしヲふかさるならい也。近代、大夫おろしヲこのむに、はやしハ大夫ニしたかう事なれハ、手ヲ吹へしといへり。又云ク、おきつゝミ、乱拍子ににたりとてうたさるヲ、ならいと云人有。此りもきこへたる様ニ候。さりなから置つゝミと申ハ、笛もこツツミもくさり様別也。道成寺なとニ打つゝミの名ヲハ、いろへノツヽミと申候。乱拍子ニにたる手くたり吹へからス。こツヽミも其心得可有候。乱拍子ハ置ツヽミノ乱とむかしゟ申傳候。其子細ハ、にたる様なれ共つなき様別なる間、乱と申なラハシ候也。ほうゑノ舞なとも、にたる様ニあれとも、かく別ノならい有と申傳候。乱拍子こツヽミニならゐ有。ふたなかれノ打様有。少ツヽのち□いめ也。大夫乱拍子フム事其数定、小ツヽミモ其心得アルヘシ。笛ニ習ト申ハ「くれソメテカネヤヒヽクラン」ト云、高音ノヒシキヲフキカクル。  』 一 夕かほ「しはらくやすらい萬事尋はやとおもひ候」、ひしかすして、あしらい在。此ところ三いろノ吹様。「萬事尋はやとおもひ候」と申て、大夫はやまくヲ上出る時ハ、呂ノコテ能候。いまた大夫まくのきハニいて、出そうに仕候は、下ノたかね吹出し、コテヘヲトシテ吹もの也。又わきうたいて、いまたまくの□ニ不参候ハヽ、下ノたかねヲみな一返吹候て、「山のはの」とうたハせ候様ニ仕候而、能々心かけかん也。 一 とをるノしやくノ舞の事。大夫かくやヲ出候時、あふきヲしやくノことくニもちて出、してはしらノきハにて、あふき□なヲして出羽謡出す也。さやうノ時ハしやくの舞にまふもの也。序ニて一めくりして、ミきノことくもちてめくり舞になす。其時ノ吹様、出羽ノことく吹出し、一めくりして、かけりのことく吹て、あふきヲなおしてゟ、ゆりかゝりニ吹也。本ノしやくヲもちて舞大夫も有。能々大夫□とうへし。 一 しやくの舞ヲ舞申時ハ、いかにも大夫にとうへし。しやくノ舞ヲ舞時ハ、太こもうちこミかしらニ打也。其時笛ハみきノ下二ツゟ吹出、出羽ノことく吹もの也。大夫ツヽミうちの前ニて舞出す時、笛もかゝる也。あとハあまのことく吹。又太このかしらゟゆりニも吹也。たゝし座敷にてハ打こミかしらに打候へハ、笛も初メヲ出羽にそと吹候て、あとヲまいに吹もの也。是ヲならいにつかまつり候なり。 一 とをるの出羽のくらい、はなり。舞ハ急々也。 一 とをるに「老の 是ゟ返す手ヲフクナリ。「ナミ」ト申ゟフキカケ候ヘハ、アトノウチキリまてアイ候也。コテ一ツ返す吹也 なミも帰るやらん、あらむかし恋しやヤ」と、前笛も帰す手(ヲ)吹也。 一 かくらの事。今春ハあふきニて舞ニよつて、あふきヲ左へ取とき舞ニなす物也。観世かたハ平にて舞によつて、平ヲすつるとき舞ニなす者也。 一 三輪ニ「此山すミそさひしき」と謡ところ有。爰ニて不可吹候。   』 一 松風のかゝりの事、いかにも拍子にかまハすさらりと吹て、一ツの拍子ニてかゝり、其くらいヲ初段まて其くらい吹也。ゆやも同前也。 一 松風なとの後の舞なとも、うちあけいかにもしつめてうち候へとも、笛ハのりて、其舞のくらいに吹あくるもの也。何も舞の吹あけ、いそくくらいかん用也。 一 松風、ふし太こなとハ正面へむき、物きヲきるヲハいつれも真に物きと心へあるへく候。又かつこ、ゑほしヲきる時ハいつれもコテのたかねヲ少いろへてヲくもの也。 一 はちの木の出羽、常のことく吹て、大夫まくヲ上て出るヲミて、早笛ニ吹も有。又わき、しやうきニコシヲかけ候ヲミて、はや笛ニ吹も有へし。 一 たゝのり、初メの大夫出るところ、下ノたかね能候。のちの一セイハつゝミコシなしニ、初メゟコシかけ候ハヽ、ツヽミに尋候て、かたひしき吹也。山うはノ「月ニこゑすむミやまかな」のところも如此候。山うは一番ニさためてかたひしき吹事なしと云共、こしなしニかやうにうち候ハヽ、かたひしきか能候。ツヽミ本一セイにコシ候て打候ハヽ、笛も本ひしきニ吹もの也。 一 あつもりの吹様。次第常のたかねヲ吹也。一聲ハ僧ノ音取ヲ吹也。舞のかゝりハ僧ノかゝりなり。ゆうけんにて候間、いかにもうつくしく吹なり。 一 あまの吹様。次第ハ常ノたかねヲつよく吹也。又一聲ハ僧の音取ヲ吹也。出羽も常ノことくつよく吹なり。 一 かよひ小町ノ吹様。次第ハ常のたかねヲ吹也。一聲ハ僧ノ音取ヲ吹。愁に吹てもくるしからす候。又かけりハいつものことくフク也。 一 卯の羽ノ吹様。次第ノたかねつよく吹也。一聲の音取ハ本の音取ヲ吹也。舞ハはしめ僧の舞なり。後の舞ハかミ舞也。座敷ニてハはしめの舞なし。  』 一 難波の吹様。わき能ニて候間、次第もつよき高音ヲ吹也。一聲の音取ハさたまりたる本の音取ヲ吹也。かとまふりハ僧の乱序也。のちの一セイハ、いつれも成ともつよき音取ヲ吹へし。初めの舞のかゝり、さうの舞也。後ハかミ舞也。又のちノ舞ヲ、かくにも仕候。いつれもノ心なり。わき能に余の事御座候ハヽ□□(なに)か三番め、四番めなとに候ハヽ、一セイハさしの音取ヲつよく吹候てもくるしからす候。 一 せミ丸ノ吹様。次第ハ女ノたかね也。一セイハさうノ音取ヲフク也。又かケリハいつれものことく吹也。口傳有之。 一 井ツヽの吹様。次第女ノ高音也。一セイハ僧ノ音取也。舞ハうつくしきやうにフク也。 一 しかの吹様。ひしき、出羽ヲつよく吹也。舞のかゝりハ神のかゝり也。太こ打こませて、笛もかゝるなり。たゝし乱舞ニてハ、そのうちゟ吹候而も可然候。わき能のたくい、いつれも同前也。 一 玉の井の吹様。ひしき、しんの乱序つよく、いつれものことく吹也。一セイハいつれの音取ニよらす、つよきヲ吹へし。かとまふりハさうの乱序ヲ吹也。はや笛ハ大ツヽミヲ本にひしき候て静かに吹也。舞ハさうの舞也。此舞ハ児の舞也。はたらきつよく吹もの也。口傳有之。 一 ぬへノ次第、僧ノ高音ヲ吹也。一セイハ常の音取にゆりヲ吹也。出羽ハつよき様ニ吹也。□たらきも同前也。 一 たにかう、初メなのり。ものき有。はや笛ニて鬼出るほと、吹上候。 一 正存、初メなのり。序舞有。中入。して出て(で)さまに出羽ニてまく打上、はや笛になす也。 一 ふしきそか、初メ女の次第。一セイおとこ出る。又後ノ一セイ、男出る也。 一 太木、初メなのり。一セイ有。出羽ニてりうちん出る也。 一 なのりの笛。わき、太こうちの前に来候ハヽ、なのりの笛吹へし。 一 春永。なのり、わき、太鼓うち□前に来り候ハヽ、なのりの笛ヲ吹也。又次第ノところ、狂言にいかにも〳〵能々とうへき事かん用也。くりの内、下ゟ吹つゝくる。ゆりハわき能ならてハ吹□□(不申)。「春永たすかり候て」ゟ祝言ノこゝろもち也。 一 大ゑい、門まほり有て、たいしやく出るところ出羽吹て、又りうちん出るところ又出羽。  』 (欠葉あり) もち、御前なとにて三段すき候ても吹とむるところにて、いまた長なとゝ御所望候時、吹あけたる□それヲ吹そらし、ゆりてなとのことく吹習也。あとヲかんニまわして吹。口伝。 一 次第の吹様。高音のつき壱つニて、わき能、しゆら、かつらの吹きわけやう口伝有。 一 錦木初メの次第、僧。二番メ、ふうふの次第。出羽吹、座ゟひしかす、其ひしきの座ゟ出羽ヲ吹也。いつれも男の舞のふるいには二段めにのたる手ヲ吹也。 一 軍陣の吹様ハ、しきのてうをきんしてそと吹はて、つよき音取ヲ又ハたかねヲ吹もの也。返す手ヲ吹不申也。又むこ取よめ取の吹様ハ、さうてうヲ吹候。あとにはいつれも□(に)よらす吹。さりなから返す手ヲ吹す。又ふねのうちも同前なり。 一 あをいの上ノ能トハ大ゆりヲつゝミのり候時吹出す者也。 一 序の舞つゝき候ハハ、大夫にゟはの舞ニも仕也。又はの舞ニ仕候時ハ大夫ノ仕舞ちかい申也。其仕舞ハ舞様ニゟ袖ヲひらき、たちとゝまり、あし拍子ヲふミ、舞出し候て、笛も序と心得仕也。又序のまいヲはに仕る時ハ、大夫袖ヲひらきあふきヲひらき、しやうめんへつる〳〵とゆき、そこニて舞いたし候て、はの舞と心もち替者也。 一 羽衣なとの物き、僧に吹也。又ツゝミ打、太こうちのうしろニて物きるおハ、僧と心へへし。又めかりなとのものきハ狂言出てしか〳〵ヲ語候によつて笛吹へからす也。 一 はんしきの舞、能ニてさたまりて吹事ハなし。初日ニも二日ニも吹不申、三日めの八番九番めゟ外ハ吹不申候。又、所望なとにてハ吹もの也。三日めなとのわき能に海士、□(と)うるなとヲするニよつて、さためて吹事ハ無御座候。座布にてハ時のきやうに吹事まゝならし、口伝有之。 一 のゝミやに「松吹風ノひゝきまても」と謡ところゟ呂のかすりヲ吹かけ候者也。□座布ニてハ下の高音ヲ吹かけ候者也。能にてハ恋のてヲ吹もの也。錦木、とうをる同前にて候。  』 一 かくヲ吹ともハンシキになし候とも二段めゟなし候て吹者也。かんたんヲ吹共、手ヲ吹候てハンシキになすものなり。 一 舞ニ口伝。「かざしの袖」又「衣ニおつ」なとに舞出し、露ひほヲ取候時、何も太こうちこミ候て吹出候事能候。又なにハなとのことく其まゝ「有難や」なとゝ舞出候ハ其まゝ舞ニ吹出候也。如此心ヲ付て吹へし。 一 ゆふの舞、たいの舞と申事ハ、のゝミやなとの事也。まへノ舞ハたいノ舞と申也。のちの舞ハゆふの舞と申也。さる間、のちの舞ハ、きうヲつめ候て謡出すものなるニよつて、後の舞ハはたらきに仕候てもよく候。きうヲつめ候てツゝミ打上候様ニ吹者也。たゝしツゝミうちしよしんニ候ハヽ不可吹候。たゝし松風、のゝミや、つゝき候ハヽ、のちハせんなくはたらきニ吹事能候。 一 いんやうの吹様の心得有。陽ハ男。てすくなにいかにも祝言ニ吹也。右。いんと云ハ女ノ心。手くとし。うれい也。左。 一 たうくやうの時、脇能ニあま候ハヽ、出羽もとめも、本脇能のことく吹へし。 一 はんせいらくと申て、おきなのまいノ事也。 一 出ははたらきハ、ひやうひよるりやるりりやり、ケ様候ニ仍かン斗吹候由、又其うちうつくしく吹て、さて又、てしやまなこヲして吹度も有。それ〳〵ニはたらき内ニもゆうきうの心有へし。見つくろい候て、太こなと聞合吹候事、かん用也。さやうニふかねは序はつきうの心なし。心かけかん用也。 一 僧ノ出羽、何れも出羽ニ中ゟ吹出さぬハなし。いつれも中ゟ吹出す。其うちせいくわん寺ハ壱つはねてあとハつき候てゆりニなし、少うつくしく、又さなからけつかうニ、又しんに、又つよく心ニ心ヲかけてまことニかふのほさつのこゝろニ吹へし也。 一 ゆ行柳なとの出羽ハ中ゟ吹出し其まゝはねすシテ、つきてゆりヲ吹。中ヲ又かんへ吹あけすして、きりて、ひういやうと吹候由。それ〳〵に心かけて吹へし。さやうにふかねハおもしろき事不可有候。いつれもその心へ也。 一 わたましのとき、こうしやの謡てに、笛じぎヲ申、「はんしきニなりとも、しうけんのてうしヲそと□(あ)そはし候へ」と申候事、能候。其にて謡、其てうしヲうた(い 脱?)候はゝ、笛は吹ぬもの也。又うたいてじ□(ぎ)ヲ申候ハゝ、笛ハそとはんしきヲ初に吹也。おきさまニ、おいまつなとにてはんしきにとしよまう□(有)候  』 ハ此方ニハはんしきヲ吹也。これならい也。 一 わたましに、第一火てうしヲきらふと云。わうしきハなつノてうしなれハ火ニかたとり候也。さりなからハンシキヲそと吹、後ハいつれにてもくるしからさるといゑとも、又一せつに、火まねくと云事ニ仍、さうてうヲ吹か能候由ニ候。てうし木なれハ、いゑの姿ニすく。殊ニさうてうハ上無調ヲ父トす。下無調母とす。又これなとニしさいあれハ、たゝ古人ノおきてニハ、はんしき也。大小共ニ水のてうしヲ本とする。うちなかす事、ことニ本ニうつ。笛もふきなかす事本也。たゝ、はんしきか能候由ニ候。 一 江口ノ序、本ノ序と是ヲ言。ひやうてう返しとも云。本の序の時ハかんゟ吹出す。平てう返しの時ハかくらの序一くさり吹也。平調ニかへる手有に仍、平てう返しと云。 一 序破急と申事、かくゟ出候由承候。急ニつめ様大事也。左あふきヲ取てゟつむる也。 一 むことり、よめとりにハさ(う)てうお尤ニ候歟 一 川はたにて人ノ所望候はゝ、はんしきも能候。 一 川はたの山ニての乱舞ニハ、謡内もわうしき吹事能候。 一 ちこ若衆所望のと□(き)ハ、そゝろなる手吹へし。 一 女衆所望の時ハ、ねヲほそくうつくしく、心おたやかにフクへし。 一 ちしき、上人のなとゟ御前にて所望のハ、いかにも心こしやうほたいニ入かことく、ものすこくあはれなる様ニ吹へし。 一 あたらき座布ニてハ、まつ少はんしきヲを吹へし。扨さうてうヲ吹へし。 一 真の来序 一 しゝの乱序 一 きやうけんかとまふり 一 くらま天く、せかい、大ゑいなとのハ、すたしと云。なにハ、かもなとの様なるわき能ハ、かとまふりと云。これ来序のたくい。   』 一 老松ニ、御前にてかたひしきニ吹事在之 口伝。 一 御前にての笛、一人吹候吹様なとの吹上、いんやうにくらいヲ取、ひシキ候もの也。又御前ニ而笛一くわんニて吹、そろへて舞候時ハ序ヲみちかく吹申候。□様のことく、三段なから吹候者也。あとにはねて有。それヲしるへにうたいてもうたい出候也。 一 江口に舟のあしらいと申事有。又かんのかゝりと云序有。ていかニつゆのひほとりト云事有。同マイの事也。 一 ゆりの有たかねは、しゆらニ不可吹候。 一 惣別笛のかり口ハ上なり。めり口ハ中也。 一 謡のうちヲ吹へき心得ハ、音曲者のこゑをきゝて、かりこへなとハ吹そらしてもくるしからす。又めりこゑならハ、いかにも調子かゝへて由。十人ハ九人調子のく事、キヽ過る付、うたいの内ハいかほとももつてふくへき也。舞に成ては次第〳〵に吹そらすもくるしからす候。惣別ハ少のけて吹事なとハ笛ヲおもしろさ、ねいろ、又ハいきよりなき?もの也。此心得ひすへし〳〵。 一 門ノ吹に笛の吹様有。たとへハ、東ゟ吹ハ未申懸。 南ゟ吹ハきたへむくへし。西ゟ吹ハ丑刁、東へ向かよし。北ゟ吹ハ辰巳、南へ向かよし。四方共如此の心得也。 一 仏事に能ヲする事有。翁、色三番不可有之。此吹様の心得ハ、百白蓮華なと云ての心へあり。これひしといつはめうほうの□し也。 一 与風、人ノ座敷ニめしよせられ、やかて笛所望の時、其さしきてうしヲ吹てのち〳〵はいか様に吹てもくるしからす候。たゝさうたんもなく、てうしもしれ不申候ハヽ、先此方ゟさうたヲ仕かけ、さて其てうしヲ吹也。てうしとさうたんとちかいぬれハおかしき者也。 一 観世能(観進能か?)ニ初日二日なとニはんしきヲ吹事ハなし。其子細ハ四日の能にすゑにこゑかつまると云心得也。然は四日の能くミの内に余〳〵いたる能もなき事ニて候ハヽ、二日目なとに、かくなと候ハヽ、其時ノ能のものニゟてうし以下、しほ相なと能候て、はんしき吹候もくるしからす。三日四日目ハ不及是非に。観世かゝりハ惣別はんしきハこのます。 一 大事の能ニ朝かねヲつけ申事有へからす候。  』 一 祝言のてうしの事、呂ハ祝言、出るいき也。生るゝいきとゆふ。律ハこれハ引いき也。はなするいきと云也。 一 すゝの段の事。四日めなとニひしきにてかゝる事ハこれ有。二日三日の□□ニ吹候事、能候。 一 たにこしの吹様、音取・たかねによらす、いつれも吹はなさせすして、人の吹候ねのうちゟくさりヲふきかけ候もの也。これヲたにこしの吹様と申也。口伝也。 一 あまの舞ニ、子ニきやうヲわたす時ノ心得ハ、はなり。舞ニなりて一段二段ハのる。心ハ少しうたんの心也。次ハはゝのは也。是三色のはやしの心得とて大事のつもり也。 一 序はつきうのしるへき事。序のつまりヲはとしる。はのつまりヲきうと云。是ヲ心分別すへし。 一 ひやくまんの舞のかゝり、かけりの舞のかゝり同前也。但松風なと候ハゝかけりの様ニ不吹候。ひよるりやいう□ひよりゝ ひうや たろ ひやたる ひよるり 是能候。 一 しねんこし、とうかんこしのくりゟまへの舞のかゝり、ひいり、ひや ひや り 一 舞の吹様 一段め 僧 二段め のりて 三段め かろく 四段めつまる 五段めきう 一 あま、小袖ヲつほつてする也。時にゟてうゑにまいきぬヲきせするときも有。其時ハ舞ヲ能まハんためと心へし。常ヨリ舞つよく少のりて。観世、時にする也。手ヲこみしつして吹へし。此習人のしらさる事也。 一 たへま、いかにもこまかに打太こ也。きやうわたしてつゝミ打の前へのきて、舞出す也。 一 出羽ノ事、今春方ハ五段のはやしと云。其子細ハ、打いたして一たん、大つゝミこして一段、まくあけて一段、舞台の中程ニて一段、以上五段。観世方、大に替也。三段ニて出る事も有。四段ニて出る事も有。キリ〳〵のはやしと申候。今春方ハ舞も五段と申候。 一 はやしのはやきかろきとしたるきと静かなる成とは大なるかわりニて候。かろきと申ハのりてよきづにする〳〵とゆくヲかろきと申候故、石車にのり、かたひやうしにさきたつヲはやきと申候。静なるとハのりてよき位に行、さきたゝずあとへもさからず、ゆる〳〵としんニゆふヲあらせてはやすヲ静なると申候。したるきと申ハ、位、謡の跡へさかりたるヲしたるきと申也。是大なるかわり也。か様のわけ能心得へし。  』 一 脇能かいこの事 笛真の呂ヲ吹。真の音取ヲ吹出す。其後、笛□(カ)ンニなし候ところゟこつゝミ刻ゟ打出す。数ハ五ツなれ共、人の前ニてハ中のおつヲ一ツ二ツ打候。口傳也。五段のおきつゝミ也。こつゝミのおつヲ、一ツ二ツかけて笛吹出すへシ。何とぞ取紛ニ、つゝミ早々打出事有。其時笛、初段ヲすて、二段ゟ吹へし。こつゝミの打出し、初ハ刻ゟ打出し、二番メハおつゟ、三番めハかしらゟ、四番めハゆりの内ヲかけて刻おとす。そのゝち頭二ツ、六ノ下ノ内ニ。それゟ打出すハあたうちといへり。打上のかしら、二ツ打つととゝまル也。置つゝミ過て、まくヲ打上、其時かいこの笛有。かんノ音取ヲ吹出す。天筆和合楽、地筆在楽と吹。観世の心得有。こつゝミ、置つゝミのことく打。但ぐあいハなし。笛も同前也。笛調子の位ニ習有。口傳。つれ大臣、大鼓打のそばゟはしかゝりへ、かうへヲ地ニ付、かしこまりのき、大夫舞台のさきへ出る時、笛かんノゆりかけて、呂になし候。前ゟ序破急ニこつゝミよすべし。扨、ぶたいさきへ五あし計置、謹而礼ヲし、袖のつゆヲ取、おき上る。其時こつゝミ打上、かしらの数、七ツニてながし上る也。但九ツ打りうも有由候。人打候共、ふしんすへからす。笛其時ゆりかけて吹て有。ゆりの数、九ツ。これ九やうの星ヲひやうす。こつゝミのかしらハ七ツ。七やう星ヲかた取。笛のゆりヲかけて、わきかうへヲ上る。こツヽミノかしらニ付而立あがる。笛、こつゝミ、わき大夫、三人ノ心、一道ノ位也。さてわき大夫かいこヲ云、やかてなのる。扨名乗過、つれわき立あかり、二ツかなハニなをる。扨次第ヲ謡。やかて道行ヲ謡。「八まん山にも付ニけり、〳〵」と鼓打の前へ付。本わきつかは、つれわきも心得有へし。扨わき、大夫、二人ノわきにむかいてせりふヲ云。扨わきの座になをる也。 一 一セイノ事。笛のひしきノ位ヲ以、打出也。五段ノ一セイ、ふミとむる一セイとこれヲ云。大つゝミなかし候ハてハ、不叶儀也。かくやニてなかし分んなとゝ大小云合する事、初心成事也。但すゝノ段になかし、もしあらはわき能ニハなかすへからす候。 一 クハンハクサマニテ御所望ノ時、石州大つゝミ一てうニテ、今春謡計ニテ、江口舞ノのち打上候。是ハ習ニテ「すいへんシンヨノ」ト謡出しニヨリて今春ちかい也。  』 (欠葉あり) になりゆくとの理りもぎりヲおもハせんか為也。然によつて五番にぎりヲさたむる也。六番ニ祝言ヲ又する事、是ハ一座のおさめなれハ、君ヲいハい身ヲいハい所ヲいはい、花ハ春過ぬれ共、又たちかへる。春きぬれハ過にし春のことくニ花咲さかふると、それヲひやうし、さきかへりぬる春に又あふトたのミしヲいはひかさねておさめ、六番ニはしめ有つる祝言ヲ又するなり。右如此一日の能にあるとあらゆる世間の有様ヲことく〳〵くあらハし万民に是ヲ見する能なれハ何として智ゑなき物ニかやうの事ヲしらむや。能くミの条に如此。乍去是ハ初日の能くミ也。二日めゟハ又かへ候てもくるしからす。かく、かくらなとヲ入番かす在へし。前日の能くミに似たる能ヲせん者也。 一 きゝかきノ書  一 置つゝミ座敷ニて所望の時、いつれの音取ニ而も吹候。とめヲ吹上候ておく者也。小鼓も則打上候大事也。 一 座付なし吹て、置つゝミ打事、むかしゟさたまりたる事ハなく候へとも、わき又こつゝミ打、置つゝミ打候ハんと申候ハヽ、座付なしヲ吹て則座付なしヲ呂ニもちい候て、音取ヲ吹出すもの也。座付なしのあと、呂ノことく吹とめ候者也。 一 置つゝみ吹様ノ事。かんゟ吹出す。こつゝみもかんゟ打出す也。こつゝみに打はなさせす候て、其聲のうちゟ音取ノくさりヲ吹かけ候者也。こつゝみも笛の吹はなたぬうちに、こつゝみのくさりヲ打出す也。 一 置つゝみノ事。まへ三段すきてゟ後ノ壱段ゆりヲ吹候也。前ハ少□ものひやうし、扣ゟつめて吹かけ、さてゆりヲ吹候也。ゆりのうちこつゝみも大事と申候。ゆりのかす。●●●●● これゟうち出す ●●ゆりの後、ヲツゟうち出ハあたうち也。同後のゆりゟこつゝみもあたうちと申事。うちかけ、さて本ひやうしヲうつなり。前のゆり吹て後、是ゟこつゝみうちかけ候て能候ひふりふうやうるい さて六ノ下也。  』 一、置つゝみノゆりノ内ノうち様。後ノこゆりすき候而ゟうち出す事本意なれ共、そこ(すと)までまつ事こつゝみ在にくさのまゝ小ゆりのうちゟあたうちと申事ニ候。こゆりすき候而其まゝうち候事、弥左衛門尉□□うち候由申候。何様ニうち候共、本ひやうしに取つゝく事かん用也。当代ハ不存まし。ゆりのうちゟめたうちに候事おかしく候由候。ゆりすき候てゟうち事本ひやうし也。六ノ下ゟつめる事本也。ゆりの前に三段、ゆりすきて二段。以上五段也。 一、おとす音取ノ置つゝみの吹様の事。ひようるりひういやう一段。ほひふようるりほひや ろう○此あいゟうちこミ候也。是ヲしゆらの置つゝみノ大事也。ほひやるひやるゝ ひうい。ひういや六ノ下也。 一、かいこ在時ハ座付なしヲふかぬか能候。初日ニ座付なし吹上、二日めニハ座付なしふかぬものなり。是大事なり。 一、次第ノ吹様。つゝみかゝりたるヲ見合て、ひつと吹候てよりいつもの程に高音ヲゆう〳〵と吹也。 一、女ノ次第、僧の次第、児わか衆ノ次第、いつれも同前。口伝。 一、大神ノ次第、男次第、山伏次第、いつれも同前也。大神次第と山伏次第ニ一心ちかい候所在。 一、置つゝみの笛、真僧に吹様有。惣別、置つゝみハ能こと在事、本意也。さりながらつゝみ打次第。 一、きやうけんあひ語はて候時、かつらハ下ノたかね能候。わき能としゆらハ、おる高音も、又六ノ下も能候也。 一、くりノ内ノ吹様ノ事。かつら、しゆら、いつれも謡ノうちゟ其まゝ打かけて、くりニ成ハ吹かけす候而ゆりノうち斗吹也。又「猶々御物語候へ」と申、相ノありて打かけ候ハヽ、笛もカンヲそれ〳〵ニ心ヲかけてフクナリ。 (欠葉あり) 一、かつらハ謡ノきんニよりて吹ト云共、中ニも野の宮、ていかハ下□□(より)中へ吹むすひてまハして吹也。しゆらハ大方たかね壱つ吹、後ゆり斗吹也。又けんじのなかれなとハ下無てうゟ吹上て、きりて、ゆりヲ吹也。 一、しゆらの中入ハ六ノ下ゆふ〳〵と吹べし。 一、わき能ハ大ゆりヲ吹へし。 一、かつらハ下ノたかねヲゆふ〳〵と吹候也。 一、つくり物在能ノ吹様。つくり物ふたひへ出さるさきに、ひしき吹へからす。つくり物出候而ゟひしき次第ヲ吹也。是ハあやまる事多在もの也。たゝし、江口ノ一セイなとハつくり物あれ共一セイハ大方ひしく也。つくり物出さるさきハいろへテ吹也。つくり物出て一セイノ笛ヲ吹也。 一、ひしきノ在一セイ、ひしかすの一セイ、作物ノ内への中入ハ一セイひしかす也。 一、さがりはの吹様ノ事。初ト二段トヲませて返して吹ヘシ。三段メハ大事と申候間不吹候。大夫はしかゝりへ半分斗参候ヲ見合、三段メヲ吹候事能候。吹上の前に吹候事能候。又さがりはの時、大夫おそく出候へハ、笛迷惑なるもの也。大夫ニ「一段吹候。頓而御出候へ」と申合候事かん用也。又さがりはと、かくと、ゆひニまかいところ多在者也。能々せんさくシテ吹事かん用也。 一、しねんこしの初メの舞ノとめ、呂ニてとむる。後のかつこノ段ノ舞とめ、ひしきてとむる也。初メハ舞のあとくりニ成所なり。いつれもくりニなるハ如此也。又かつこノくらいハ、地ノくらいと申候。 一、友長ノ出羽ノ事。太こ頭九つ打也。僧ニ打とき六つも打と申候。しん、僧いつれもノ打様ニても候也。頭のうちハ出羽ノ笛吹出すへからす。頭ヲよくちノことくヲろして出羽吹出す者也。大事也。吹様、口伝ニ在。同六道の笛のならい在。ゆひニ一段ひじ在。とむらいノ心在。吹出しはねす。  』 一、二段くせ舞の時ハ能乱舞共ニ前吹かす、後ノ曲舞ヲ専ニ吹也。又イ曲舞ハたくさんニ吹ト云とも、しやうきニこしなとかけ候て、あふきにて種々ノあひしらい候ハヽふかす也。立曲舞ハ居曲舞も道前也。居曲舞ハたくさんなるヘシ。立曲舞ハ仕舞在ニよつてふかぬかましニて候。 一、序の舞ニ大夫ヲろすふりヲミるハ、足ヲふミとめ、あふきの手ヲサムルふせいあらハ、舞におろすヘシ。つゝみ、太こ、いつれもおそくおろす事あらハ、笛ゟおろすヘシ。はやしニハ一□□、二拍子ト云事在。 一、五段ノ心得ハ、はやきニも静なるニもよるへからす。いつれもの能成共、和哥ヲ少うたうならは五段ノ舞と可心得候。又和哥なく候ハヽ、舞ならは静によらす、はやきニよらす、三段ノ舞と心得也。口傳。大夫の舞ニよるへし。 一、序トはと舞様。のノ大夫のふりヲみる事大事也。序ならは立とまりて、舞衣かひたゝれのつゆヲ取しつむるなり。はと言ハ、つゆヲもとらすして、左右ヲ打こます、やかてむかうへはやく出る也。きやうト言ハふりもなり。つねのなりニて、むかうへこあしに出る。其時ハきやうとおもひ、大小共ニきさミなり。 一、くわこ、けんさいのはや笛の吹様有。くわこの早笛ノかゝりハ、ひしかすしてはねて吹也。けんさいの早笛のかゝりハ、ひしきてはねすして吹也。けんさいノ鬼にハ、めいとのヲにゝあらす、心へ在と云事。くらま天く、せかい。大へしミか、あくせうか、又しろきしやうそくか、くろきしやうそくならハ、いかにもゆふ〳〵とのりて可吹也。こヘシミに、あかきしやそく、あかきかしら、はつひなどあかく候ハヽ、おしたてたる早笛也。早笛、大夫しとめ候時分から呂ヲふかす、カン斗吹キテよし。 一、大へしミ、こへしミの事。おもて大キなるハ静か也。おもてこへシミなれハはやし。口傳。 一、色三番立ノ出様ノ事。初メ面はこ、二番ニ大夫、三番ニさんはさう、其つき笛、あいヲまなかほとあとへ出候也。さて さんはさう舞はしらの本へしかといなをる、ミて、笛ハ礼ヲして座へナヲる。さんはさう舞座ニなヲリ不申内ハ、まなか程あとノ左之方ニ少ゟ候て右ノひさヲつき、左ノひさヲ立て、右ノ手ヲつきている者也。能々けいこ可仕候。口傳。但シ、御城ニ而之御能時ハ如此よし。其外大名衆ニてハ手ヲつかぬかよしか。扨笛吹さになヲり、さけヲなとヲなをシ、あふきヲぬき、身つくろい仕候うちに、こ(以下欠)   』 (欠葉あり) 一、舞ノ吹様ノ事。舞ニなりて一段めハさう、二段めハのりて、三段めハかろく、四段めつまる、五段めハきう也。 一、舞五段ノ物ニて候へ共、大夫ニゟて三段ニてもまいおさめる也。そのときハおろし二ツ。 一、序ノ舞の大夫ノヲロシヲミル事。あシヲ□(見)、アシしさるところニてヲロスヘシ。 一、老枩ノ出羽ノひしき、いかにものひ〳〵とひしくヘシ。くらい序。 一、太こノ序、かきつはたナトニハ、カやウニカヽリ候てよく候よし、噌庵被申候。ひやう ひヨルリヤルリりやりニ頭聞。ひうや ら テンテンテン ひやひうい ひよるり 一、枩風ノミトメの事。ミトめ仕候時ハ、つくりものふたひさきあけてヲき候由ニ候。又あけぬ事もある。大夫みとめる時、枩ヲまハりて、ハシカヽリヘゆきて、そこニてヲモテヲきつトナヲス時、則あくる也。 一、江口「夕の風」ト云所ニかすりノて有。 一、たかやす「すハふへのねノきこゆる」ト云所に吹やう有。「すハ」トいふゟさきニふくて也。 一、舞初段ハぶたいノまん中デ取。二段ハわきはしらの方ニ而取。三段ハめつけばしらノ方ニ而取事也。  』 (白紙一丁) 1前欠。獅子にかかるヒシギはモロヒシギ。シテは扇をしまい袖を持って段を取り、鼓に頭を打たせる。鼓打ちの前で獅子を舞い終え扇を抜いてキリを舞う。能では七段だが座敷では三段で終え、笛から吹き上げる。能では大夫の型に従う。笛だけを所望の時は吹き上げず、ヒシギで終える。 2前場の山人を大夫とは別人が舞い、間狂言が無い演出。中入来序と、そのまま続く後シテ登場の乱序をまとめて「来序」と呼び、三つに吹き分けると言う。「しんの来序ニてもなし」も、現行の皇帝登場の〔真ノ来序〕のことではない。モロヒシギの後、草の乱序の「押さえる」吹き方でも、真ノ乱序の「はねる」吹き方でもなく「回して」吹き、後は常の真ノ乱序と同じように吹く。 3開口の時は、置鼓の笛のユリが過ぎて脇が登場。六ノ下から気負って吹く。脇が頭を床に付けるときに「吹きふせる」。頭を上げる時ユリを吹き「吹き起こす」開口・道行・次第は謡に従い、祝言に吹く。脇が初めに露を取る時、小鼓は打上げ、頭七つ(七曜を象る)。 4開口の吹き続け。脇が置鼓の内に出てシテ柱に来る時に気負いかけて名ノリ笛。脇が礼をするときヒシギ、高音を一クサリ。これを「一礼の笛」とも「開口の掛け」とも言う。牛尾掛りでは置鼓が済んでから脇が出る。一噌では置鼓の内に出るのが習いだが、二日目に開口の所望があれば、置鼓が済んでから脇が出ることがある。その時は幕が上がるのを見合わせ、折る高音から、音取にならないように吹き掛ける。この場合も開口の吹き掛けは同前。 5真ノ物着では、鼓のコイ合の後に吹きかけ、舞衣の左の袖を通す時にツキ、烏帽子の紐を結ぶ時にユリを吹き合わせる。物着が遅れ笛の譜が足りなくてもそれに付き合って吹き足さず、笛を鞘に収める。但し、物着後にシテが松の近くへ行って謡い出す場合は大夫と相談して少し長く吹く。物着のトメの前だけは小手を長く吹く。草ノ物着は杜若・羽衣の類。男姿の物着は結ブ音取を強く吹く。狂言が関わる物着には笛を吹かない。 6羯鼓を付けたり冠り物を付けたりする物着には、小手ノ高音や下高音など。真ノ物着は松風・富士太鼓二番のみ。 7上手の大夫が面白い面を用いる時は、笛の習いを捨て面に合わせて囃す。女面にも種類があり、小面は十七八、増という面は三十位の女だ。深井は四十位を言う。 8間語りの終わりに吹く笛は、楽屋にアイが終わることを報せるものだ。作リ物に中入する能の場合は間語りの末に呂を吹き、シテや地謡に調子を知らせる。 9「露の紐取」の時、シテは序の部分で正面へ行き、一度回って(後ろを向いて紐を直した名残の)型をし、柱(角柱だろう)から舞い出す。 10卒都婆小町の立廻リはユリから吹き出し、以後、立廻リの中にユリは吹かない。 11鈴之段のトメのヒシギは扇を戴く型と合わせる。 12呂を吹き小手の高音で僧が登場、名ノリ。台詞をよく聞いてヒシギ。次第は高音を強く美しく、鬼神の心で吹く。「暮れそめて鐘や響くらん」に高音のヒシギ。乱拍子は小鼓に時間のかかる手を(?)一くさり打たせて吹き出す。下の高音から吹き出し、大夫が鐘に目を付けるところにユリ。「道成寺とは名付けたり」にノタレ。舞は破の位。「山寺のや」という謡の内から吹き出す習(龍神のかかり)があり、観客が気付かぬ間に謡の中から吹き掛ける。この舞にはヲロシを吹かぬのが習だが、最近は大夫が好むので、望まれれば吹く。置鼓と乱拍子は似ているので道成寺には置鼓を打たぬのが習という人がいるが、置鼓は笛も小鼓も乱拍子とは別物である。道成寺の鼓は「イロエの鼓」という。乱拍子には置鼓と似た手を吹いてはならない。小鼓にもその心得がある。「乱拍子は置鼓の乱れ」との習は、似たように見えて繋ぎ方が違うからだ。法会の舞と乱拍子も似て非なるもの。乱拍子の小鼓に二通りの打ち方があるが小異。大夫の踏む乱拍子の数は決まっている。笛の習は「暮れそめて」に高音のヒシギを吹き掛けること。 13前シテ登場のアシライ(ヒシギなし)に三種あり。大夫がすぐに幕を上げて出てくる時は呂ノ小手、幕際にいて出てきそうなら、下ノ高音から小手。幕際に来ていない時は下ノ高音を全部吹いて「山の端の」の謡までを調節する。 14大夫が扇を笏のように持って幕から出、常座で持ち直して謡い出したら笏之舞。序で扇を笏のように持ったまま舞台を一巡し、舞にする。笛は出端の如く吹き出し、一巡後は翔リの如く吹き、扇を直してからユリ掛リに吹く。本物の笏で舞う大夫もいる。 15笏之舞のときは大夫によく尋ねよ。太鼓の頭で出端の如く吹き出し、大夫が舞にかかると笛もかかり、以後、海士のように吹く。太鼓の頭からユリを吹くこともあるが、座敷では出端のように吹き出し後を舞にするのが習。 16融の出端の位は破、舞は急々の位。 17「老の波も帰るやらん…」の「波」から「返す手」を吹く。小手を一つ吹き返す。ここから吹き出せば打切までちょうど寸法が合う。 18金春の神楽は扇で舞う故、扇を左に取れば呂中干舞にする。観世は幣で舞うので、幣を捨てるのが合図。 19「この山住みぞ…」は謡の聞かせ所なので笛は吹かない。 20松風の舞の掛リは拍子に構わずさらりと吹き(イロエ掛かりの部分)、一つの拍子で舞にかかり、その位を初段まで。熊野も同前。 21後の舞(破ノ舞)の打上を鼓は静めて打っても笛は乗ったまま吹き上げる。どの舞の吹上げも急ぐ位が重要。 22正面を向いての真ノ物着、羯鼓・烏帽子を付ける物着の違い。5・6にも記事あり。 23大夫が幕を出る時に出端から早笛に変わる。脇が床几に腰掛けるタイミングで早笛に変えることも。 24前場の大夫の出は下の高音。後場の一声は、初めから越を打ち掛けていく「頭越」の場合は鼓に確認して片ヒシギを吹く。山姥の待謡「月に声すむ…」のところも同じく片ヒシギ。山姥に片ヒシギは無いというが頭越一声なら片ヒシギがよい。鼓が本来の一声なら本ヒシギ。(「こしなしに」の「こし」は現在「越の段」と呼んでいる部分とは違うらしい。コシの手を打つ前に一つ在るはずの段がないことを「こしなしに」と言っていると解しておく。) 25次第は常の高音。一声も舞のかかりも草。美しく吹く。 26次第は常の高音を強く。一声は草の音取。出端も強く吹く。 27次第は常の高音。一声は草の音取。「愁い」に吹いても可。翔リは常のとおり。 28次第は常の高音を強く。一声の音取は本の音取。初めの舞は草の舞。後の舞は神舞。座敷では前の舞は無し。 29脇能なので次第は高音を強く。一声の音取は本の音取。門守は草の乱序。初めの舞は草の舞。後の舞は神舞または楽。脇能に他の曲があり、難波が三・四番目のときは、一声は草の音取を強く吹いてもよし。 30次第は女の高音。一声は草の音取。翔リは常の通り。 31次第は女の高音。一声は草の音取。舞は美しく。 32ヒシギ、出端を強く吹く。舞の掛リは神の舞の掛リ。太鼓の打込で笛もかかる。乱舞の場合は太鼓打込の内から吹き出して可。脇能の類はいずれも同じ。 33ヒシギ、真ノ乱序は強く。一声はどの音取にせよ強く。門守は草の乱序。早笛は大鼓に合わせて本ヒシギを吹き、静かに。舞は草の舞(稚児の舞)。働キは強く。 34次第は草の高音。一声は常の音取にユリ。出端とハタラキは強く。 35名ノリ笛。物着あり。早笛は鬼が出ると吹き上げ。 36名ノリ笛。序之舞。後場は出端を吹き幕が上がりシテが出ると早笛に。23参照。 37女の次第。一声で男登場。後場の一声も男が登場。 38名ノリ笛。一声あり。出端で龍神登場。 39ワキが太鼓の前に来たら名ノリの手を吹く。 40ワキが太鼓前に来たら名ノリの笛。次第は狂言と要相談。クリは下から吹き続ける。ワキ能以外にユリは吹かず。春栄の命が助かって後は祝言の心持ち。 41門守があり、次に帝釈天の登場では出端。龍神の登場も出端。 42前欠。序ノ舞の吹留めの心得。御前での演奏で舞の三段を過ぎてもさらに所望の時は、吹上げずに(吹上げの手を)吹きそらし、ユリ手のように吹く。その後を甲の音で回して(低い音に下げないことか)吹く。 43次第は、脇能・修羅・鬘によって吹き分けがある。「高音のツキ」は同一で、その後が変わるという意味か。 44初めは草(僧)、次は夫婦の次第。出端を吹く。男舞の類には二段めに「のたる手」がある。「座よりひしがず」「ひしぎの座」は、「座」が「序」の誤写かもしれないが、どちらにせよ意味は不明。 45軍陣では四季の調子を吟じて吹き、その後に強い音取か高音を吹く。返す手は吹かず。聟取・嫁取は双調。その後は何でもよいが、返す手は吹かず。船中も同前。 46葵上のノットは、鼓が乗ってきたら大ユリを吹く。 47序ノ舞が続くときは大夫の判断で破ノ舞にすることもある。袖を開き立ち止まり足拍子を踏んで舞い出せば序。袖を開き扇を開き、正面へするすると出て舞い出せば破。(この識別法では吹き分けに間に合わないが二つの舞の重要な相違箇所として述べているのだろう。実際は立ち止まるか否か、扇の開閉等で見分けたか。) 48羽衣の物着は草。鼓や太鼓の後ろで物着をするのは草。和布刈等、狂言が出て語る物着では笛は吹かず。 49能では盤渉を吹くと決まっている曲はない。初日・二日目には吹かず、三日目の八番九番目以外では吹かない。また所望があれば吹く。三日目などの脇能には海士・融などをするので、結局吹かないのだ。座敷では興に任せて勝手に吹くことはできない。 50クセの「松吹…」で、呂のかすりを吹く。座敷では下の高音。能の場合は恋の手(呂のかすり)を吹く。錦木・融も同前。 51楽を盤渉にするときは、二段目から。邯鄲の楽では手を吹いてから盤渉にする。 52「かざしの袖」(呉服)「衣におつ」(高砂)等の詞章で舞い出し、シテが露の紐を取る時に太鼓が打込み笛も吹き出す。難波のように「ありがたや」とそのまま舞い出す場合はそのまま笛も吹き出す。 53用の舞は後の舞、体の舞は前の舞。野宮などにある。後の舞は急を詰めて謡い出すのでハタラキでもよい。急を詰めて鼓が打ち上げやすいように吹く。ただし鼓が初心の場合はやらない。松風と野宮が続く時は、(重複を避け)後の舞はハタラキに吹くしかない。 54陽は手を少なく祝言に吹く。男・右。陰は手を細かく丁寧に吹く。愁いの心持ち。女・左。 55堂供養での脇能の海士は、出端も留めも本脇能のように吹く。 56萬歳楽は翁舞のこと 57出端働は甲の音ばかり美しく吹く。いかにも上手そうな顔をして吹きたい譜でもある。働の中にもそれぞれ悠・急の心がある。太鼓などを聞き合わせ見計らって吹かなければ序破急がつかない。 58草(僧)の出端は中より吹き出す。誓願寺は、一つハネて、その後は突く手を吹いてユリにし、美しく、けっこうに、真に、強く、歌舞の菩薩の心で吹く。 59遊行柳などの出端は中より吹き出し、ハネずに突く手を吹いてユリにする。カンに吹き上げずに切って、ひういやうと吹く。こうした吹き分けが必要。 60移徒の席で、謡が巧者なら笛は遠慮し「盤渉でも祝言の調子を少しお謡いください」と言うのがよい。謡がその調子で謡ったら笛は(移徒の調子は)吹かない。謡い手が遠慮したら、笛が盤渉を冒頭に吹く。「老松で盤渉に」と所望があれば、こちらは盤渉を吹くのが習である。(移徒の祝いの席での配慮か。「おきさまに」は不明。) 61移徒には火の調子を嫌う。黄渉は夏の調子で火を象る(ので避ける)。盤渉を少し吹き、その後はどの調子でも良い。一説には木の調子の双調が新居に合うという。双調は上無調を父、下無調を母とするなど子細があるので、古い掟は盤渉をよしとする。大小鼓も水の調子で打ち流し、笛も吹き流す。(「木生火」で火を招くのは双調のはず。双調を吹くのが良いというのは不審。解題参照。) 62江口の序を本の序とも平調返とも言う。本之序はカンから吹き出す。平調返の時は神楽の序を一くさり吹く。途中で平調に帰る手があるので平調返という。 63序破急というのは舞楽から出たものだと聞いている。急の詰め方が大事である。シテが左に扇を取ってから詰める。 64婿取・嫁取には双調がよい。 65川端で人の所望があれば盤渉もよい。 66川端の山での舞には、謡の中もともに黄渉がよい。 67稚児・若衆の所望で吹く時はその場で思いついた手を吹く。 68女たちの所望の時は音を細く美しく心穏やかに吹く。 69高僧たちが御前で笛を所望する時はいかにも心が後生菩提に入ったかのように、もの寂しくしみじみと吹く。 70新しい座敷ではまず盤渉を少し吹き、その後双調。 73狂言の門守は現行の狂言来序に相当。 74天狗の類の間狂言の登場楽は「素出し」と言う。難波・賀茂などの脇能の末社アイを「門守り」と言う。これらは来序の類。 75御前での老松には片ヒシギを吹くことあり。 76御前で一管を吹く時は、吹上げに陰陽の位を取ってひしぐ。御前で笛一管で舞がある時は、序を短く吹く。三段で吹く。後にハネ手があり、それを合図に謡い出す。 77江口に舟のアシライという習がある。江口の甲ノ掛リと定家の露の紐取は、ともに序之舞の習。 78ユリのある高音は修羅には吹かない。 79笛のカリ口は上音、メリ口は中音。 80謡の中は謡手の声が高くなりがちなら笛の調子も謡に合わせて吹きそらしてもよい。低くなりがちな声なら笛の調子を保って吹く。十人のうち九人の笛の調子が外れるのは、謡を聞き過ぎるからだ。謡の中は笛の調子を守り、舞は調子を外してもよい。大体、少しずらして吹くような技巧より、笛の面白さは音色と息にある(というような意味か。この箇所、本文に乱れがあり不明)。 81門前での笛は、門が邸のどこにあるかによる。東の門なら南西を向き、南門なら北へ、西門なら北東か東、北門なら南東か南へ向く。 82仏事の能には式三番はやらない。吹き様は、百白蓮華の心得がある。妙法の秘事である。 83ふと座敷に呼ばれてすぐに笛を所望の時は、まずその座敷の調子で吹く。その後はどのように吹いても良い。雑談もなく調子が知られぬ時は、こちらから雑談をしかけたうえで、その調子で吹く。笛の調子と雑談の調子が違えば奇妙だ。 84勧進能の初日二日には盤渉を吹かず。四日ある番組の末に吹くという心得である。四日目の番組にふさわしい能が無く、二日目などに楽があり、その曲趣などにも合えば盤渉を吹いてもよい。三日目四日目は言うまでもない。観世がかりは大体、盤渉を好まない。 85大事の能の日には歯に鉄漿を付けない 86呂は出る息、生まれる息で祝言の調子。律は反対で、引く息。「はなする」は不明。 87鈴之段の掛リ方。四日目はヒシギで始める。(二日目三日目は虫損で読めないが、呂掛リが良いということか。) 88漢字は谷越か。音取でも高音でも、相手が最後まで吹ききらぬ前に被せるように吹き始めるらしい。複数人が順に(または交互に)吹く奏法らしい(解題参照)。 89経を渡して舞い始めるところは破、一段二段は愁嘆の心でノル。(その後は一字衍字で「破の破」か。) 90序の行き着くところが破。破の行き着くところが急。 91百万の舞の掛リはカケリの舞の掛リと同じ。松風などがあれば重複を避けカケリのようには吹かない。 92クリ・サシ・クセの前にあるイロエのこと。 93五段の舞いの吹き分け方。131参照。 94小袖を壺折りにする。時により上に舞衣を着せる。その時は舞を十分に舞うためと心得よ。常よりも舞を強く、少し乗って吹く。観世で時々やる演出だ。凝った手を心を尽くして吹け。この習は人が知らないことだ。 95太鼓は特に細やかに打つ。経を渡して鼓打ちの前に退いて舞い出す。 96金春の出端は五段に。打ち出して一段、越で一段、幕上げで一段、舞台の中程で一段、以上(区切りが四箇所で)五段。観世方は違い、三段または四段で出る。キリキリの囃子(不明)という。金春方は舞も五段。(今も下掛の舞は空段が入り、上掛リよりも段数が増えるが、出端に関するこの説の詳細は不明。) 97速いと軽い、しだるいのと静かなのは、大いに変わる。良く見計らってするすると行くのを軽いといい、石車に乗ったように拍子に外れて先に行くのを速いという。静かというのは、乗って、良いほどの位で行き、先立つことも後へさがることもなく、ゆるゆると優(悠)を保って囃すのをいう。しだるいというのは、位が謡の後へ下がるのを言う。このような分け目を心得よ 98笛は真の呂から、真ノ音取を吹き出す。笛がカンに吹くところで小鼓が刻ミを打ち出す。数は五つだが、人の前では、中の乙を一つ二つ打つ。これは五段の置鼓。笛は小鼓の乙を一つ二つ聞いて吹き出す。鼓が間違えて早く打出したら、笛は初段を捨て二段から吹け。小鼓の打出しは、初めはキザミ、二番目は乙、三番目はカシラ、四番目はゆりの内からキザミオトシ。その後、カシラ二つを六ノ下の間に。それより後に打つのは「あだ打ち」と言う。打上のカシラを二つ打って打ち止める。 置鼓が済み幕を上げて開口の笛。カンの音取を吹き出し、天筆和合楽、地筆世在楽と吹く心得。小鼓は置鼓と同様に打つが、グワイは打たない。笛の調子の位に習がある。ワキツレは大鼓の傍から橋懸へ行き平伏し、本ワキが舞台先へ出る時、笛はカンのユリを吹きかけ、呂に変わる所から小鼓は序破急を考え、寄せて打つ。ワキが舞台先へ五足ほど出て拝礼し、袖の露を取り起き上がる時に小鼓は打上げ。頭の数七つで流し上げる(頭を九つ打つ流儀もあるので、打たれても不審してはならぬ)。笛はこの時ユリを九つ吹く(九曜の星)。小鼓の頭は七つ(七曜の星)。笛のユリに合わせてワキは頭を上げ、小鼓の頭に合わせて立ち上がる。笛、小鼓、ワキの心が一つになる位である。ワキは開口を言いそのまま名乗る。名ノリが過ぎてワキツレは立ち上がり、三つ鼎の形に直る。次第を謡い、そのまま道行。鼓打の前に付く。ワキが付く足使いをするならワキツレもその心得で。ワキは二人のワキツレに向かって台詞を言い、脇座に直る。(『八帖花伝書』七―3参照) 99一声はヒシギの位に合わせて打ち出す。五段の一声を踏みとむる一声という。大鼓が流しを打つのが決まり。楽屋で流しを打ち分けようなどと相談するのは大小鼓が初心だということだ。ただし鈴之段に流しがあれば、脇能には流しを打ってはならない。 100関白様(豊臣秀次)の御前で樋口石州の大鼓一調と金春の謡だけで江口を奏したが、石州は舞の後をコイ合ではなく打上げにした。これは舞わない時の習で、ワカを省き「随縁真如の」の大ノリから謡うものなので(ワカを謡おうとした?)金春の間違いである。 101前欠。五番目の能に義理を定め、六番目に祝言を再び演ずる。最後に君・身・所を祝い、花は季節が戻ればまた咲き誇るように、また春に会うことを祝い重ねる意味で、六番目に祝言の曲をまた演ずるのだ。一日の能組のうちにこの世のすべてを表し、万民に見せる能なので、知恵のないものにはできぬと「能組の条」にある。だがこれは初日の能組のこと。二日目からは変えてもよい。楽や神楽などを入れる。前日の能組に似た能はしない。 102(「聞書の書」が何を指すか、以下の条々との関係も不明。)座敷で置鼓の所望があれば、音取を吹く。トメは吹き上げ、小鼓も打ち上げる。 103「座付無し」の譜を吹いて鼓が置鼓を打つのは昔からの決まりではないが、脇方か鼓方が置鼓を望めば、座付無しの後を通常の呂の部分のように吹き止めてして音取を吹く。 104置鼓の笛は甲より吹き出す。小鼓も甲から打出す。小鼓が打ち終えないうちに音取を吹き出す。小鼓も笛が吹き終わらぬうちに打ち出す。 105置鼓は前の三段の後、一段はユリを吹く。扣から詰めて吹きかけ、それからユリを吹く。ユリの内は小鼓も大事だ。ユリの数は七つ。ユリの後で乙から打ち出すのは「あだ打ち」と言う。同じく後のユリになってから置鼓を打つのも「あだ打ち」と言う。後のユリでは打ち掛けて本拍子を打つ。前のユリを吹いた後「ひふりふうやうるい」のところで小鼓が打ちかけるのがよい。 106置鼓のユリの中の打ち方。後の小ユリが過ぎてから打ち出すのが本義だが、そこまで小鼓が待てずに小ユリの途中から「あだ打ち」と言って、打つことになる。小ユリが過ぎてからそのまま打つのは宮増弥左衛門の打ち方だそうだ。どのように打とうと、本拍子につなげることが肝要である。当代の人ハ知るまい。ユリの中から「あだ打ち(めた打ち)」にするのはおかしい。ユリが過ぎてから打つのが本拍子だ。六ノ下から詰めるのが本来だ。ユリの前に三段、ユリの後に二段、合計五段である。 107落とす音取の置鼓の吹き様は、中ノ高音を一段、「ほひゃろう」の間から小鼓は打ち込む。是が修羅の置鼓の大事である。 108開口がある時は「座付無し」の笛を吹かない。初日には座付無しを吹くが、二日目には吹かない。 109次第は、鼓が床几に掛かるのを見合わせてヒッと吹き、高音をゆうゆうと吹く。 110・111女・僧・稚児・若衆が登場する次第の吹き方はどれも同じ。大臣・男・山伏の次第の吹き方もどれも同じ。ただし大臣次第と山伏次第では一箇所、心持ちが違うところがある(現在は、どんな登場人物でも、テンポや強さは変わっても、次第の譜は同じ。昔は、登場人物が女子供系か成人男子系かによって、譜が違ったらしい)。 112置鼓の笛には真・草の吹き様がある。置鼓はどの能にもあるのが本義だが、打つ打たないは鼓打ち次第である。 113狂言の間語りが終わるときに吹く笛は、鬘物のときは下ノ高音が良く、脇能と修羅能は折る高音か六ノ下が良い。 114クリの吹き様は、鬘物でも修羅物でも、謡の中から鼓が打ちかけてクリになる場合は、笛は吹きかけずにユリの所だけをあしらう。「猶々御物語候へ」のように言い、間があって鼓が打ちかける時は、笛も甲の譜を、曲趣を心にかけて吹く。 115鬘物は謡の吟に合わせて吹くというが、中でも野宮・定家は、下から中へ吹き結んで回して吹く。修羅物は、だいたい高音を一つ吹き、後はユリばかりを吹く。修羅でも源氏の流れの場合は下無調から吹上て、一度切って、ユリを吹く。 116修羅の中入は、六ノ下をゆうゆうと吹く。 117脇能(の中入)は、大ユリを吹く。 118鬘物(の中入)は、高音をゆうゆうと吹く。 119作リ物がある能は、作リ物が舞台に出るまではヒシギを吹かない。作リ物が出てからヒシギ、次第を吹く。これは間違えることが多い。但し、江口の一声などは、作リ物があっても一声はだいたいヒシギを吹く。作リ物が出る前はイロエを吹き、作リ物が出てから一声を吹く。 120ヒシギのある一声と無い一声がある。作リ物に中入した場合の一声はヒシギがない。 121下リ端は初段と二段を混ぜ、繰り返して吹く。三段目は(打楽器の?)大事というので笛は吹かない。大夫が橋掛の半分ほどまで来たのを見計らい、三段目になるように吹くのがよい。下リ端で大夫の出が遅れると笛は困る。大夫に「笛が一段吹きますから、すぐに出てきてください」と申し合わせるのが肝要だ。下リ端と楽は指を間違えやすい。よくよく考えて吹くことが大事だ。 122自然居士の初めの舞は呂で留める。後の羯鼓の舞はヒシギで留める。初めの舞はその後にクリになるからで、どの舞でも次がクリになる場合は呂で留める。羯鼓の位は地の位(直前の地謡の位か)と言う。 123朝長の出端は、太鼓が頭を九つ打つ。草に打つときは頭六つ。真・草いずれの打ち様もある。頭の内は、出端の笛を吹き出してはならない。頭を地へおろしてから出端を吹き出す。大事であり、吹き様は口伝。同じく「六道」の笛の習いがある。指扱いに特別の秘事があり、弔いの心がある。吹き出しは、ハネない。 124二段グセは、能でも乱舞でもクセの前半は吹かず、後半をもっぱらあしらう。また、居グセはたくさんあしらうが、床几に掛けて扇で所作をする時は吹かない。居グセはたくさん吹く。舞グセは仕舞があるため吹かぬ方が良い。(「立曲舞は居曲舞も道前也」は、「立曲舞も、この居曲舞についての基本方針と同じだ」の意か。) 125序ノ舞で大夫が序をオロス合図は、足を踏み止め、扇の手を収める所作があれば、舞におろす。鼓や太鼓がおろし遅れていたら、笛からおろすのがよい。(虫損のため、囃子には何が一番重要か不明。) 126五段か三段かは、早い舞か静かな舞かには拠らない。どんな能でも和歌を少し謡うなら五段の舞と心得よ。和歌がなければ、舞ならば静かでも早くても三段の舞。口伝。ただし大夫の舞による。 127序と破の区別は大夫の所作を見ることが大切だ。序ならば立ち止まり、舞衣か直垂の露を取り身を沈める。破は、露も取らず左右に打ち込まず、すぐに向こうへ早く出るものだ。急というのは、所作も常の(舞ではないときの)姿のまま向こうへ小足に出る。その時は急と思い、大小鼓ともに、キザミを打つ。 128過去の(亡霊の)早笛の掛リはひしがず、ハネて吹く。現在の早笛の掛リはヒシギを吹き、ハネずに吹く。現在の鬼には冥土の鬼ではないという心得がある。鞍馬天狗・是界は、大癋見か悪尉か、また白い装束か黒い装束ならば、いかにも悠々と乗って吹く。小癋見に赤い装束、赤い頭、法被などが赤ければ、押し立てるような早笛である。早笛は大夫が留めた後は呂を吹かず甲ばかりを吹くのがよい。 129面が大きな大癋見なら静かに囃す。面が小癋見なら速い。口伝。 130初めは面箱、次に大夫、三番に三番叟、その次に笛が、間を半間ほど空けて出る。さて三番叟が舞柱の下へしっかりと居直るのを見て、笛は礼をして座へ直る(一間ほど後ろに入る)。三番叟が舞座に直らないうちは、半間ほど後ろの左の方に少し寄って右膝をつき、左膝を立て、右手をついている。よくよく稽古せよ。口伝。大小太鼓も同前。但しこれは御城での御能のとき。そのほかの大名宅では手をつかぬのがよいか。笛座に直り下げ緒などを直し扇を抜き、身繕いしているうちに(以下欠) 131一段(ゆふ)は草、二段(序)はノリ、三段(破)は軽く、四段は詰まる、五段は急。93と同じ。 132本来五段の舞を大夫が三段で舞い止めることもある。その時は、ヲロシが二つになる。 133序をおろす合図は、大夫の足を見て、大夫が後ろへ下がるところでおろす。 134出端のヒシギはのびのびと吹く。位は序。 135太鼓入り序ノ舞の、序から舞への掛リ方に関する噌庵の教え。 136見留のときは舞台の先に空間を取って作リ物を置くというが、空けぬこともある。大夫が見留を舞う時は、松の前を回り橋掛へ行き、面をキッと直す時に吹き上げる。 137「夕の風」にカスリの手を吹く。 138「すは笛の音の…」の所、「すは」より前に吹く。 139舞の段の取り様。初段は舞台中央、二段は脇柱、三段は目付柱の近くで取る。