いろは順古頭付 【凡例】 一、国立能楽堂蔵『いろは順古頭付』の翻刻である。 一、詞章は「 」で示し、ゴマは付記しない。 一、ミセケチの文は読めるところは本来の位置に翻刻し、訂正分はその下に記す。 一、□は虫喰い、難読文字及び抹消により元の文字が読めないことを示す。推定は〔 〕。 一、右横に挿入された小文字はポイントを下げて右側に記す(左横に記された場合も右に記し、(左)と付記する。両側にある場合は両側に)。ただし、内容に大きく関わる場合はポイントを下げずに記し、挿入だとわかるように文頭に*を付した。 一、本書の注は傍注にとどまらず、余白に無秩序に書きこまれているが、注の改行は無視している。ただし108頁〈鉢木〉は本文に相当する長文の記述であるため原態がわかるように翻刻した。 一、欠葉の後、途中から記述が始まり、曲名の表記がない場合は〔 〕に入れて曲名を示す。 一、その他、注記などは〔 〕で示す。 一、本文中にはところどころ朱で句点が示されているが、それとは無関係に文の句切りに句点、詞章の句切りに読点を付けた。 一、本資料の翻刻・校訂は深澤希望・中司由起子・山中玲子・森田都紀・高桑いづみが、解題は高桑が担当した。 【翻刻】     ▲ 〽いつゝ序 一 〽初僧ノなのり。「きの在常の常なき世、いもせをかけてとふらハん、〳〵」 ひ   しき女ノ次第。「猶ゝなりひらの御事、御物語候へ」 くりニ成。「夢待そへてかり   まくら、苔のむしろにふしにけり、〳〵」 〽ひしき一セイ。僧ノ音取吹也。「ゆきを   めくらすはなの袖」 〽序ノ舞。「月ソさやケキ、〳〵」 爰ニテかける事も在。とうへし。     ▲ 〽はころも 一 〽初ひしき一セイ。むすふ音取也。「あつまあそひノするかまい、〳〵此時や初め   成らん」 〽僧の者き在。くりニ〽成也。「東あそびノ舞の曲」〽序舞也。「なひくも返も、舞の   打上る そて」 〽天女ノはの舞〽也。くりの吹様たかね一ツ。ゆり吹也。     ▲ 〽はうしやう川 序ノ序 一 〽初大臣次第。道行在。せりふ聞合ひしき一セイ有。二ノ句在。同すへに 「けにもいけるをは   なツなる、御ちかひあらたなりけり」 と謡て 「なを〳〵はうしやう川の   いハれ、御物語候へ」と謡てくりニ成也。 「たんしやうさしてあかりけり、〳〵」 相ハ常の   ことし。「ミやこに帰りしんちよくを、〳〵 こと〳〵くさうしあくへし、といへは  』   お山も御かくの、きこへていきやうくんする、けにあらたなるきとくかな、〳〵」  トメヒシク也(左)   と謡て出る。「さやけきかけハ処から」 〽しんの序打上也。謡出〽す。「扨ハ神代も和歌をあけ。〳〵」 と謡。     ▲ 〽はちの木 一 〽初西明寺次第。道行有。すへに「いゝすてて出舟の、ともになこりやおしむ   はやつゝミニて   らん、〳〵」 かたひしき吹也。相ノ者出る。大ゆり吹てよし。扨あいの者帰り候時本   ひしき吹て一セイ也。大夫まくをあけて出るヲみて 早笛二段メワきしやう はや笛ニも吹事有。   *〽一セイノ笛吹内ニさいミやうじ殿出ル見、ふたいノまん中時分へ来ル時ニ初段ヲ打かける。しやう   きにこしをかけ候 □ニて早笛□□吹とめなのり 時分ニ二段メヲ又打カケルモ。二段メノ打上カシラより/はや笛ニ成也                        一 此一せいイ初メさいミやうし殿出ル。其時は                          ツヽミこひやいとてつゝける。地斗打ている。                          さてさいミやうぢとのぶたいノマンナカエ                          きたる時分ニ初段ヲ打かけ見、しやう                          ぎにこしおかけると時ニ大かた二段メニ                          なり、さしとめ二段ノ大ツヽミノカシラヲ                          きいてそのまゝひしきはや笛吹へし。     ▲ 〽はせう はノ序 一 〽初きうナのり。道行 「しやくまくとある柴の戸に、此御経をとくしゅする、〳〵」   ひしき次第。女出る。 「おもへはいとゝ夜もすから、月もたへなる法ノ庭、風のはせを   やつたふらん、〳〵」 ひしき一セイ。女出る。「袖のほころひもはつかしや」 くりニ成なり。   「こほりの衣、霜のはかま」 序ノ舞。     ▲ 〽とくさ 一 〽初男なのり。 かミかゝりハ初次第也。道行「月日程なく木曽路経て、そのはら山に付に  』   *「急候程にあふはかの宿に付て候。此あたりノ人の渡り候か」とうタイてひしき女次第。〔朝長の詞章を場所を誤って写す〕   けり、〳〵」 せりふ聞合。ひしき一セイ。 「おんしゅの心とけて、ひとつきこしめされ候へ   よ」 くり成也。 「子おをもふ」 序ノ舞。     ▲ 〽ともなか 一 〽初僧ノなノリ 道行在。せりふ聞合。ひしき女ノ次第也。「あふはかのしゆくにかへり   けり、〳〵」 中入也。「うかふはかりのけしきかな、〳〵」 ひしかすして太このかしら   うつあいたハ出羽ふかす。おろして笛ハ吹出す。「あらたツとのとふらひやな」 爰にて   大ゆり一返吹か能候。「御法おとかせ給へや、〳〵」くりニ成也。 あと皆あいしらい也。     ▲ 〽とうゑひ 一 〽初僧なのり。「笛太この音聞ゆるハ、いかなるものそ、尋て来り候へ」 さかりはにて   なるを殿出る。打上る也。「さらしなこし路ノ月雪」 舞有。しねんこしの舞と同前。   あと呂。 「おかさのうちにけんさん申、さてハかなふまし」 かつこ在。後舞打上る也。     ▲ 〽とをほく つくり者出る。 一 〽初僧次第。道行在。シテハ「なふなふあれなる御僧」と云て出る。「花の陰に、木かくれて見えさり   き、木かくれて見へすなりにけり」 中入也。「此御経をとくしゅする、〳〵」 ひしき  』   一セイ。「春の夜の」 序舞也。    十▲ 〽とうかんこち 一 〽初男ノなのり。「是お御目ニかけうするにて候、さらは御急御供申さうするにて候」 ひしき   一セイ。やかてろんき也。「おもしろや是もこちやうのゆめのうち、あそひたわふ   はかゝり   れふるとかや」 舞のち吹上る。呂にて留る。くりニ成也。「袖をつらねて玉衣の、さい〳〵   しつミ浮波の、さゝら八はちうちつれて、百千鳥」 かつこ在。舞にて一段とツて   かツこになるも在。又かツこより舞にも在。大夫ニとうへし。 舞ノアト打あけす。     ▲ 〽とをる 一 〽初僧ノなのり。道行在。「急候程に、是ハはやミやこ六条河原の院とや覧に付て候。   暫やすらい一見せハやと存候」 ひしき一セイ。むすふ音取を吹也。「跡をもミせす   打上る(左)   なりにけり」中入有。「夢待かほの旅ねかな、〳〵」 ひしき出羽吹也。「ゆふふの袖」 きうノ舞。     ▲ 〽ちくふしま 一 〽初大臣次第。道行 「山越ちかきしかの里、にほの浦に付にけり、〳〵」せりふ聞合、ひしき   一セイ也。「しら波の立帰り、我ハ此うミの、あるしそといひすてゝ、又なミにいらせ」  』 (欠葉あり) 〔邯鄲〕    しんノ来序在。「ゑひくわニもゑようニも、実此うへや在へき」かく在。    *下かゝりハ打上る。きやうかゝりハそのマヽ謡/「月人男のまいな/れハ」といふ時かけり在。/大夫ニとふへし。/    このかけり かくハンシキニテフキ候ワヽカケリモハンシキヨク候。かくノ手 つくり物よりおりて呂の手不吹。     ▲ 〽かしわさき 女はニ   道行有 一〽初男次第。 「まもらせたまへ神仏と、いのる心そ哀なる、〳〵」僧出てなのり在。   「今日まんさんにて候程に、ほにうへ御供申さはやとおもひ候」ひしきにて女ノ一セイ。むす   ふ音取也。「乱心やくるふ乱」かけり在。「手ひやうし人にはやさせて、あふきをつ   とり、なるハたきの水」くり成也。又舞ニもいろへニも在。大夫ニたつねへし。     ▲ 〽かすかりう神 少静かなるへし。 後急か。   せ□□〔りふ〕聞合 一〽初僧次第。道行「三笠山、春日の里に付にけり、〳〵」ひしき一セイ。むすふ音取又   ゆりを吹也。シテせウ也。「かきけすやうにうせにけ□〔り〕、〳〵」帰りを見合ひしき   一ツ、僧ノ来序也。又相語も在。きやうけんにとふへし。「草も木も、仏たいとなるそ   ふしきなる、〳〵」ひしき出羽也。又今春方ニハ早笛ニも在。能々大夫ニとふへし。   早笛なれハかる〳〵と也。「はツ大りうわう」舞はたらき在。大夫ニとうへし。    廿▲ 〽かけきよ 一 〽初男女二人次第。皆々あしらひ斗也。   くらきところのともしひ   きりのまへに八嶋ニてのいくさ物語ヲまねび。追付きりのうたひニ成也。「あしき道はしとたのむ   へし、さらはよとまるゆくそとの、たゝ一こゑヲきゝ残す、これそおやこのかたみなる、〳〵」 』     ▲ 〽たつた はの序  「御殿にいらせたまひけり、〳〵」中入。「袖ヲかたしきふしに/けり、〳〵」ひしかす/出は也。 一 〽初僧次第。道行在。「夜半にしんとうあきらかなり」と謡てくりニ□〔成〕也。   「きんしやうさいはひ」かくら有。     ▲ 〽たへま  序破急か 一 〽初僧次第。道行。「二かミ山のふもとなる、たへまの寺に付にけり、〳〵」せりふ聞合   一セイ   ひしき。 「一こゑのさそハんや、西吹〔松 脱カ〕の風ならん、〳〵」く□〔り〕ニ成也。「紫雲に乗て   あかりけり」中入。「まのあたり、あらハれ□□〔給ふ〕ふしきさよ、〳〵」ひしき   くらい少し静ニ   出羽也。 此心へ在。吹上候事不吹候也。「十こゑも一こゑそ在かたや」舞有。神舞ノかへ/ハノ出/打上る。     ▲ 〽たまの井 置ツヽミにてなのり在。 一 〽初ひしきにて、しんの来序にてわき出る。口上候事。道行のすへに「しはらく   ことのやうをうかゝハはやとおもひ候」ひしき一セイ也。いつれのね取ニよらす   つよき音取を吹へし。「さらはやかてともないきやう中へまいり候へし」   くりニ成也。「ろくちにおくりつけ申さん、其程ハまたせおハしませ」 かと   出は   まふり、僧来序出吹也。のち一セイにて大夫出る。「かのつりはりお待給ふ  』   わたつミのミやぬしちさんせよ」 早笛大へしを本にひしきにて吹也。あ□〔と〕なのり。「ふかく   打上る(右)/三段ナルベし(左)   をそうし、とよひめ玉より、袖を返して、まひたもふ」僧の舞有。児の舞なり。   「わたつミのミやぬし」はたらき有。又舞はたらきニもする。大夫ニとうへし。はたらきつよく吹へし。     ▲ 〽たう明寺 一 〽初僧ノ次第。「これやかハちなる、はしの里にも付にけり、〳〵」せりふ聞合ひしき一セイ也。   「おなしわくうのかけにきて、おかむそたつとかりけり、〳〵」くりニ成也。   「霜くもりして失に□〔けり〕、しもくもりにうせにけり」 かとまふり僧ノ乱舞也。   *いそきて出よと待給ふ」 静なるはや笛打上す、「しやくひやうしハ」(右)   「なとやおそきそしら大夫、ほときのしやくひやうしハおもしろ   *「おもしろや」かく有。打あける。太こハなし「ツヽミにかくらの夢ハ覚にケリ」きり也。   やかく有。いそひて出よと待給ふ いかにも静なる早笛有。打あけす     ▲ 〽たむら 一 〽初僧ノ次第。道行「きよミつてらに付にけり、〳〵」せりふ聞合ひしき一セイ。   むすふね取お吹也。「たむらたうののきもるや、月のむら戸をおし   あけて、内にいらせ給ひけり、なひちんにいらせ給ひけ□〔り〕」中入。   「まよハん月の夜とともに、此御経をとくしゆする、〳〵」ひしき一セイ也。 』   かけの音取にたかねお吹てゆり吹也。「せいさんとうようせり」はたらきいかにもつよく也。     ▲ 〽たうせん 一 〽初僧男なのり。「のかひをさせ候、今日も又申付はやと存候」 ひしき一セイ也。   「さほのさすても舞の袖、おりからなミのツヽミの、ふかくにつれてお    打上る   もしろや」 かく在。 うきやかに吹へし。てなともたくさんニ吹へし。     ▲ 〽たまかつら 一 〽初僧ノなのり。 道行 「初瀬川にも付にけり、〳〵」 「やう〳〵急候程に、初瀬川に   付たるとおもひ候、しはらく是に人を待、名所おもたつねはやとおもひ候」   ひしき一セイ。女出る。「くハしく語て聞せまひらせうするにて候」 くりニ成也。「のり   のともしひあきらかに、なきかけいさや弔ハん、〳〵」 ひしき一セイ。 「つく   もかミ」 かけりあり。     ▲ 〽たゝのり 一 〽初次第。道行 「沖なミとほき小舟かな、〳〵」 大夫出る。下のたかねかこてのたかね   か能候。「やとり木の、ゆくかたしらす成にけり、〳〵」 中入。 そと□つる。 』 (欠葉あり) 〔うとう〕     「なくより外のことそなき」 くりニ成也。「うとふ」 かけり有。     ▲ 〽うきふね 一 〽初僧なのり。 道行在。せりふ 「急候程に是ハはや宇治の里に付て候、心静に一   見せはやとおもひ候」 ひしき一セイ。 「猶々うきふねの御事くわしく御物語候へ」   くりニ成也。 「うき立雲の跡もなく、ゆくかたしらす成にけり、〳〵」 中入。   「小宵ハ爰に経およミ、彼御跡おとふとかや、〳〵」 ひしき一セイ。 「いさなひ行も   思ひしより、心も空に成はてゝ」 かけり有。     ▲ 〽のゝミや  序ノ序 後ノ舞は也。 一 〽初僧ノなのり。「爰に尋てミやところ、心もすめ□〔る〕夕部かな、〳〵」 ひしき女   ノ次第。「あらさひしミや所、あらさひし此ミやところ」 くりニ成也。 「跡たちかくれ   失にけり」 中入。「かの御跡をとふとかや、〳〵」 ひしき一セイ。僧ノね取にゆり吹也。   「月にと返すけしきかな」 序舞。 「のゝミやのよすから、なつかしや」 はの舞有。     ▲ 〽おゝやしろ 一 〽初大臣次第。道行有。せりふ聞合。ひしき一セイ二ノ句有。 「扨も冬立けしきかな、〳〵」□□  』   「なお〳〵当しやのいわれ、くわしく御物語候へ」 くりニ成也。「三十八しやをくわんし□□   の地也、しやたんに入にけり、しやたんの内ニ入にけり」 中入。  相ノ者ハ次第   にて出る。 ミこ出る。かくら在。入ハ 「めてたし〳〵」にてひしき出羽ノ一セイ。   きやうけんにとふへし。「しくるゝそらもくもはれて」 と比より謡。 「やゆふの   三段か   ふかくハおもしろや」 天女ノ舞有。 うち上る也。 「返す〳〵もおもしろや」かく有。   うちあくる。「かいりうわうの出現かや」 りうしん出て早笛有。かる〳〵と。   あとなのり。 「けにありかたきめくミかな」 はたらき有。 又舞はたらきにも有/とうへし。     ▲ 〽おひ松  序ノ心のりて又のらす心有也。序ノ序 一 〽初大臣次第。 道行有。せりふ聞合ひしき一セイ。 「神さひて失にけり、あと神さ   ひてうせにけり」 中入。 「神のつけおも待いたり、〳〵」 ひしき出羽也。 「こゑもミ   ちたるありかたや」 しんの序在。     ▲ 〽おしほ  はノ序カ。時により後はにも有之。 一 〽初次第男。道行 「かミもましハるちりの世の、花や心にまかすらん、〳〵」   ひしき一セイ。 「よしなをもきとくお待いたり、〳〵」 ひしき一セイ。 「花ミくるま、  』   くるゝより月のはなよまたうよ」 くりニ成也。 「むかしかな」 序ノマイ有。     ▲ 〽おふふ小町 一 〽初なのり。 「只今せきてら辺小野の小町かたへと急候」 ひしき一セイ。 「高位に   ましハるといふ事、たゝ和歌のとくとかや、〳〵」 くりニ成也。 「和光のひかり玉   つしま、めくらす袖や波かへし」 序の舞。又かけりの舞ニも有。 なかけハかけりの舞能/よし候。   四十▲ 〽くれは女 後ニ此内少静かなるへし。 一 〽初大臣次第。道行在。せりふ 「あの松ハらにあたつてはたものゝおとの聞候、うち   ゑたつねはやと存候」 ひしき一セイ。 本の音取。 「けにかしこしやよき君に、つか   ふる人か在かたや、〳〵」 くりニ成也。 「よなかくとても待給へ」 中入。 「風もうさむく   打上る   とらの時、神のつけおも待てミん、〳〵」 ひしき出羽。「けにおりひめのかさしの袖」 神舞也。     ▲ 〽くわうてひ 一 〽初しん来序有。口上候事。きやうけんにとふへし。 「ふしきやかゝミのそのうちに、きしん   のすかたうつりける」 早笛在かる〳〵と。 「ふしきやくもるそらは□〔れ〕て、きうちうひかり   打上る也   かゝやきて、めいとうするこそおそろしけれ」 静なる早笛有。 あと吹て□す  』   た□たひ出る。 口上あツてのち乱序也。 「きしんのすかたハかくれもなし」 舞はたらき。これ□□     ▲ 〽花月 一 〽初次第。「おもひやるこそかなしけれ」 かつこ在。舞よりかっこに成也。 あと舞にてとめる。あとひしく。     ▲ 〽山うは  「松風ともニ吹笛ノ」 謡返在。それよりまへにたかね一ツふくへし。 一 〽初次第。道行 「いとゝ都ハとおさかる、さかい川にも付にけり、〳〵」 なに(も)なく候。「舞   をまふへしと、いふかと見れハそのまゝ、かきけすやうに失にけり、〳〵」中入有。   「鬼女かことはおたかへしと」 たかね一ツ吹へし。さて「松風ともに吹笛の、〳〵」と謡返也。   「曲水の、月にこゑすむミやまかな、〳〵」 かたひしき一セイ也。 「よし足引の   山うはか、〳〵、山めくりするそくるしき」 くりニ成也。 舞有時ハ。「よしのはつせの 立田の   花もミち、さらしなこしちの月雪舞有。 ヲミん 中ノはの舞 大夫にとふへし。「あし引の山   めくり」 はたらき破序ノ急。     ▲ 〽やしま 一 〽初僧次第。道行有。せりふ 「日の暮て候へハ、是なるあまのしおやに立より、一夜をあかさはや   ひしき一セイ   と思ひ候。」 こてにていろ出し候。「ゆめはしさまし給ふなよ、〳〵」 中入あり。 』   「かさねて夢お待居たり、〳〵」 ひしき一セイ。 「夢物語申なり、〳〵」 くりニ成也。 「や   さけひの音しんとうせり」 はたらき有。 いかにもつよく。     ▲ 〽松風 静なるは也。 後はの舞 一 〽初なのり。今春方ハ次第也。 「是なるあまのしおやに立寄、一夜おあかさはやと思ひ候」   ひしき一セイ。 山のはの音取能候。 「立別れ」 かけりの舞有。 くらい観世静也。   「そなれ松のなつかしや」 はの舞也。 「せんかたなミたに、ふししつむ事そ、かなしき」 もの   きノ吹様。口伝。ツゝミ二ツ三ツ程こいや合にて者きノ笛吹かけへし。     ▲ 〽松むし はの序 一 〽初男なのり。「今日も来り候ハゝ、いかなるものそと名お尋はやと存候」 ひしき次第。「友な   ひて帰りけり、むしの音につれてかへりけり」 中入。 「よもすから、彼跡とふそ   ありかたき、〳〵」 ひしき一セイ。 僧音取。「わすれんともそかし、あらなつかしの   こゝろや」 くり成也。 「さかつきの、雪おめくらす花の袖」 はの舞。 打あけす。     ▲ 〽ふな弁慶  「たゝ一さしとすゝむれハ」 と云ところより下ノたかね少吹能候。「其時静は立あかり」と謡也。 一 〽初次第。 道行有。 「ゑほしひたゝれの候、めされ候へ」 「たちまふへくもあらん□〔身〕の、  』   袖うちふるもハつかしや」 いろへ在。 「つたへきく」と謡出す。 「たゝたのめ」   序ノ舞。 「一門の月けいうんかんのことく、波にうかひて見へたるそや」   打上る   かる〳〵と早笛。  「心も乱て、前後おはうする、斗也」 早□のはたらき也。打上る。     ▲ 〽二人静 はの序 一 〽初かんぬしなのり。 「とふ〳〵女共なつミ川へ出よと申候へ」 ひしき一セイ。 「しつか   こ□〔せ〕んの舞お御舞在そ、皆々よりて御らん候へ」  ものき有。「今みよしのゝ   川の名の、なつミの女と思ふなよ」 いろへ在。くりニ成也。「しつやしつ」 序舞也。     ▲ 〽ふし太こ 序 一 〽初シンカノなのり。「古里よりゆかりなんとたつね来りて候ハゝ、此形見の物おつかハさ   はやと存候」*  ひしき女次第。 「神ならぬ身おうらミ、かこちなけくそ哀成、〳〵」   *と云て「いまたれか有」トモ「御前ニ候」 「ふしかゆかりの物ニ伝て 主□り候ハゝ□給候へ、 トモ「かしこまつて候」 きゝ合ひしくへし也   ものきしん也。 「秋の風よりすさましや」 いろへ有。 「よしなのうらミや、   もとかしと太こうちたるや」 かく有。 うらミのかくにてくる心有也。おもしろからする事可ふ吹候。   五十▲ 〽ていか 序  』 一 〽初僧次第。道行在。「とふらい給ハゝ、猶ゝ語りまいらせ候ハん」 くりニ成也。「道しはの、   つゆの夜語よしそなき」 下より吹むすふゆり 「いふかと見へて失にけり、〳〵」 中入。 「とふらふ   ゑんハありかたや、〳〵」 ひしかす呂ノこて返。 つゝミ二ツ三ツ程こい合にて吹出しとなる。   「おもなの舞のありさまやな」 序舞在。     ▲ 〽天こ 一 〽初大臣ノなのり。 「只今わうはくか私宅にと急候、 いかに此屋の内にわうはく   か在か」 ひしき一セイ。 「いきて有身ハ久かたの、〳〵 天のツゝミをうたふ   よ」 くり成。 「水とふ〳〵として、なミゆふ〳〵たり」 ひしき一セイ。 「たむけ   ふかくハありかたや」 かく有。     ▲ 〽あさかほ 一 〽初僧ノなのり。 道行有。 「立かくれうせにけり、跡立かくれ失にけり」 中入。 「そのあさ   かほの色ふかき、花ノゆかりをたつねん、〳〵」 ひしき一セイ女。 「又御身のまう   しうなんとをもくわしくかたりたもふへし」 くりニ成也。 「あらおもしろの   ことハや、 おもしろや」 太こノ序ノ舞。  』     ▲ 〽あま 女はニ 一 〽初次第。道行有。「此者お御待あつて、此所のいはれおくわしくたつね申候へし」   「かう御座あらふするにて候」ひしき一セイ。うつくしき音取ニゆりを吹へし。   「波の底にしつミけり、立なミのそこに入にけり」中入。「花のはちすの妙   経、色々の善なし給ふ、〳〵」ひしき出羽也。「龍神けんくきやうあら有難                   の、御経やな」マイ有。打上る 様々口伝。「朝暮のこんきやう」たかねノはねてしうけんのとめ也。     ▲ 〽あつもり     次第 一〽初なのり。道行「こゝもとやすまうらの、一の谷にも付にけり、〳〵」爰にて   下のたかね、をるたかねまて吹て待候。ワき「ふしきやなあの上野にあたつて、   笛ノ音の聞候」とうたハせ候也。「此所に相待、いか成人そと尋はやと存候」ひしき女   次第。「其名ハ我といひ捨て、かへるも見へす成にけり、〳〵」中入。「あつもりの、   ほたひお猶も弔ハん、〳〵」ひしき一セイ。僧ノね取也。「とてもさんけの物語、   よすからいさや申さん、〳〵」くりニ成也。「ひやうしをそろへこゑお上」舞僧ノかゝり也。     ▲ 〽あたか  』 一 〽初男なのり。「今日も山ふしの御とをりあらハこなたへ申候へ」「かしこまつて候」   ひしき山ふし次第也。「八まんの御たくせんかと思へハ、かたしけなくそおほゆる」   くりニ成也。「とてもの御事ニ、せんたち一さし御舞候へ」「なるハたきの水」大小舞。打上す。   たかねはねて   舞の手いかにもミしかく吹也。二段めにのたる手さたまりたる也。「のかれたる心ちして」。めと。     ▲ 〽あこき 一 〽初僧次第。道行有。せりふ「いそき候程に、此所にいせの国あこきか浦と申けに   候、しハらく一見せはやと存候」ひしき一セイ。むすふ音取にゆりを吹也。「きこへし   斗りにて、あとハかもなく失にけり、〳〵」中入。「つゐにひかりハくらからし、〳〵」   ひしき僧ノ出羽。「なおしうしんのあミおかん」かけり。いかにもなかくかゝるこゝろへ   あるへし。あミ引まねをする也。たかねおさへて「又なミのそこに入にけり」トめ。     ▲ 〽あしかり 一 〽初女男次第。道行有。「あらうれしや、さらハかのものをまちて見うするにて候」ひしき   一セイ。「難波成、ミつとハいはしかゝる身に、我たにしらぬ、おもハすれ」かけり有。   「目出度折にて候程に、某おしやくにまいらふするにて候」くりニ成也。  』   「今ハ恨もなミの上、立舞袖のかさし哉」男舞有。打上る。     ▲ 〽あおひの上 一 〽初大臣なのり。「今そより来る長浜の、あしけのこまにたつなゆり   かけ」ひしき一セイ。「さらはやかてかひし申さうするにて候」「畏て候」   「なまくさまんたはさらた」   大ゆり吹也。「一祈りこそいのツたれ」そとはたらき有。     ▲ 〽さくら川 クセマイノマヘニタカねノ呂吹不可候。 一 〽初男なのり。「我か子の行へ尋んと、なく〳〵まよひ出て行、〳〵」   観世りうニハ   がくやへはいりてより ひしき僧次第。道行有。せりふ「花をなかめうずるにて候、まづかう〳〵御さ候」ト云て   座ニなをりわきつれといろ〳〵云て。「いそいてこなたへき/たれと申候へ」これを/き□ひしき吹べし也。   ひしき僧ノ次第。*「やあ〳〵彼物くるひにいつものことくすくいあミを持て   ト云ヲ(左)   *道行有 下ニハせりふナシニ「花ヲナガめうずるニて候まづ〳〵かう〳〵御さ候へ」きゝ合ヒシキ一せイ有。   大方ハせりふナシ也。それもわき衆ニよく〳〵たつねへし也。   いそひてこなたへ来れと申候へ」ひしき一セイ。むすふ音取。「花にやうとく   雪の色、桜花、〳〵」。かけり有。「花の本に帰らん事をハすれ水の   ゆきお請たる花の袖」いろへ在。又舞ニも有。 大夫にとふへし。かゝり松風と同前とめ呂ニテ くりニ成也。   六十▲ 〽さねもり 一 〽初さしこえゑ也。道行「かの国へ行のりの、舟うかふも安(す)き道□〔と〕かや、〳〵」こての   たかねにてあひしらい出す也。「姿ハ、まほろしと成て失にけり、〳〵」中入也。 』   「かねをならして夜もすから、なむあ□〔み〕たふ〳〵」ひしぎ出羽吹出す。     ▲ 〽さひ行桜 はの序か 一 〽初男次第。道行有。「啼てなんたつきかたし」くりニ成也。「後夜の鐘の音」たかね一ツ   吹へし。「響そそふ」大夫によりはたらく事も在。はたらき候へハ、笛後舞はに吹候事   ならい也。「花にせいきやう月に影」。観世方ニハ爰にて舞也。爰うたいかけに依て   いまも舞に吹也。「春の夜ノ」下より吹上る。序はねて。「春ノ夜ハあけにけりや、翁」たかねをさへて トめ。     ▲ 〽きわう 一 〽初男なのり。「花のいしゃうおかさらん、二人ともなひ立出る、〳〵」ものき有。   「よろつを納めし君かためしにハ、ちまたにうたふ和哥のこゑ」序ノ舞有。又   そといろへにも有。くりニ成也。「花をちらすや舞の袖、かへす〳〵もお   もしろや」。はの舞也。いつものはの舞ノあり所也。打上る     ▲ 〽きよつね 置ツヽミにハゐんやうノ音取能候。 一 〽初男次第。道行有。「まくらやこいをしらすらん、〳〵」爰にて大夫まくにかゝる   を見合。たかねお吹出し二くさり吹て。大夫かんの節にてまくを上て出候やうに申合候。 』   大夫により三くさり吹て出も在へし。大夫に申合かん用也。はしかゝりにて   そと立、やすろう心有時、こいの手ノ心有へし。扨してはしらの本にくるを   見合、こいの手吹也。「うらめしかりけるちきりかな」大夫により少いろへ   ノ事も在へし。心かけかん用也。「けにも心ハ清経か、ふつくわ」たかねをさへて吹返す。トめ。     ▲ 〽ゆや のりてかろし。置ツヽミおとす音取也。観世舞はやし。 一 〽初なのり。「ゆや来てあらハこなたへ申候へ」「畏て候」ひしき女次第。うつくしく。   「なにと御たうさなとをもあそはさぬそ」くりニ成也。「いかにゆや一さし   舞候へ」「ふかき情を人やしる」マイ。打上す 「ちるをおしまぬ人やある」たんしやく   の段在。きさミ二ツ三ツ程うたせて吹出候。「それハこしぢ我ハ又」たかねノはねて とめ。     ▲ 〽ゆふかほ 序 一 〽初なのり。道行在。「女ノうたお吟するこゑの聞候、立より尋ねはやと思ひ候」ひしかすして。   其さより下のたかねを吹出す。大夫はやまくを上出る時ハ、呂ノこて能候。いまた大夫まくきハに出候   ハヽ、下ノたかね吹出しこてへおとして吹もの也。いまた出てす候ハヽ、下ノたかねをミな一返吹也。「山   のはの」とうたわせ候也。「御跡を、及ひなきミも弔ハん」くりニ成也。「ありつる女も、かきけす   やうにうせにけり、〳〵」中入。「法花とくしゆ□こゑたへす、とふらふのりそ誠成、〳〵」  』 (欠葉あり) 〔江口〕   中入。「うたふ舟あそひ、月に見へたるふしきさよ、〳〵」ひしき一セイ。僧ノね取吹也。   のち舟出る。次第ノ心也。「一ふしを、謡ていさやあそはん」くりニ成也。「おもしろや」序   のまい有。「はく雲にうちのりて」トめ。たかねノヒシキ一ツタカねヲサヱテ     ▲ 〽ひかき   初メ作リ物出ル也 一〽初僧ノなのり。道行ハなし。「水をくミて来り候、けふも来り候ハヽ、いかなるもの   そと名を尋はやと存候」ひしき老女次第。「我跡とひてたひ給へと、夕ま暮して   失にけり、〳〵」中入有。「かけに庵りのともしひの、ほのかにミゆるふしき   さよ、〳〵」ひしき一セイ。ひしく不可候 尤一セイノふへも不可吹候「袂を月や上るらん」くりニ成也。「ひかきの女   の身のはてお」序舞也。老女ノ舞也。いかにもうつくしく吹也。手なともさたまりたり。     ▲ 〽ひたちおひ(別曲の記述が混入か) 一 〽初かんぬしなのり。「おの〳〵へ其よしあひふれ候へ」「畏て候」。ひしき次第。「なむゆ   ふれいしやうとうしやうかくしゆつりしやうしこんせうほたい」ひしかす   一セイ。つくりもの出る。「あらゑんふこいしや」。かけり有。     ▲ 〽もみちかり 一 〽初女次第。道行「よものこすへとなかめて、しハらくやすミ給へや」きやうけん出て  』   おんなともをなおしてひしき一セイ。むすふ音取吹也。少くらいはやし。「人ノこゝろ   さし、なさけに過たる事ハな□〔し〕、さらハ一つたへうするにて候」くりニ成也。「たへ   すこうよう」序ノ舞。「ゆめはしさましたもふなよ、〳〵」かへるを見合   ひしき一ツ吹さうの乱舞也。「まなこハ日月、をもてをむくへき、やうそなき」出羽   はたらき。又舞はたらきニも有。能々大夫ニとへし。「たちまち鬼神を」トめ。タカねノはねて     ▲ 〽もり久 一 〽初もり久なのり。「さらハ其夢のやうを御前にてまつすくに申上られ候へ」   くりニ成也。「人の国まて日ノ本の、もろこしか原も此所ろ」男舞。打上る「退出しけるもり久」   たかねノひしき又はねてトめ(右)/しうけん(左)     ▲ 〽せかひ 一 〽初山伏次第。道行有。「大しやうのいりきを、いよ〳〵あんしつらねたり」くりニ成也。   「わしのお山のくもやかすミも、嵐とともに失にけり、〳〵」かへるを見合ひしき一ツ   にて   吹て乱舞有きやうけん出る。「そのふん心へ候へ、〳〵」といふて帰る。かへるをミ合。ひしき   一セイ吹出す。一セイのうちにくるま出る。やかて僧てう出る。「きもたましいを   くらまかす、こハそもなにのゆへやらん、〳〵」静かなる早笛有。打上る あと吹そらす。   あくせうして面也。静かなるへし。「是をふとうと名付たり」。はたらき有。   「ミさきおはらツておハします」舞はたらき有。「こくうにのこツて□□〔すか〕たハ」トめ。はねて一ツ又吹返す』     ▲ 〽せいくわん寺 序 一 〽初僧ノ次第。道行有。「ひかりとともに失にけり、〳〵」中入。「かねうちならしたうおんに、な   むあミたふつミた如来」ひしき。かつらむきノ出羽吹也。「さなから爰もこくらく   世界に、生れけるかと有難さよ」くりニ成也。「ふツちをなせる、こゝろかな」太こ(序)ノ舞。   つよくうつくしく吹也。手同前口伝。     ▲ 〽せきてら小町 一 〽初僧次第。「いなんとそ思ふはつかしや」くりニ成也。「ほしまつるくれたけの」児ノ舞   有。「狂人こそはしり候へ、もゝとせハ」序ノ舞有。ちこノ舞也。くらい破也。三段   まふ也。きやうかゝりハ児ノ舞なく候。いろへに□す事有。きやうかゝり   「もゝとせハ」の所。いろへノ舞也。くらい序ノ破。いろへノ吹出し下のゆりより吹出也。   舞ニなす時松風ノことくゆりかゝりにするやう□してひきちかへゆり   かゝり候ハすしてすくニ舞になすならい也。口伝。手なとみちかき手能候。   八十▲ 〽せつしやう石 つくり物出る。 一 〽初僧ノ次第。道行有。「たまものまへノ事、ねん比ニ御物語候へ」くりニ成也。「石にか   くれうせにけりや、いしにかくれ失にけり」中入。「木石心なしとハ申□〔せ〕   とも、仏体真女ノせんしんとなさん、せしゆせよ」ひしかす僧ノ出羽吹也。「あらわれ出たり□〔お〕 』   そろしや」大ゆり少吹也。     ▲ 〽せんしゆ 一 〽初僧ノなのり。「両事にて候程に、罷出重平卿を慰め申さはやと存候」ひしき   女次第。「らうゑいしてそかなへてけり」くりニ成也。又いろへもする也。と   うへし。「わすれめや」序ノ舞也。     ▲ 〽つねまさ 一 〽初僧なのり。道行。「きせんのミちもあまねしや、〳〵」たかね一返吹かけてシテ   出る。心かけ口伝有之。「あら名残しのやゆふやな」はたらき少有。     ▲ 〽ちねんこし 一 〽初けやうけん出て口伝有。雲居寺ノ者ふかくあひしらいなし。ちねんこし   出る。ゑほしをきせる。あいしらい有。「いやなにのつれなふ候へき」「しかから   さきの一松、つれなき人ノこゝろかな」舞有。かゝりはかゝり也。三段まふ。   吹上呂にてとむる也。「とてもの御事ニ、かつこをうつて御見せ候へ」   本よりツゝミハ、なミノおと」かつこ有。又舞にて一段とりてかつこになすも   在。よく〳〵大夫ニとうへし。舞打上る。     ▲ 〽けんしくやう  』 (欠葉あり)   ▲ ひむろ 一初大臣次第。道行有。「此所の人ヲ待、ひむろのいわれくわしく尋はやと思ひ候」ひしき一セイ。  *ノチニ呂カスリ/タカネ/中ノたカ□三ツ吹/也  「あらてハ、いかてかのこる雪ならん、〳〵」くりニ成也。「むろのうちに入にけり、ひむろのうちに  きやうけん帰ルミ合 以下墨滅□□~(左) 打上る(右)  入にけり」中入。見合候てひしき。僧ノ乱序。見合ひしき出は。「舞の袖こそゆるくなれ」天女ノ舞有。  「ひむろ神風、あらさむや、ひやゝかや」舞はたらき有。 ▲一弓八幡 初大臣次第。道行有。せりふ 「急候間、八幡山ニ付て候、心静ニしんはいを申さふ  するにて候」 ひしき一セイ。「ヨヲおサメシカタリナヲ〳〵申候へ」クリ。「ウタカウナトテ、カ  キケすヤウにウせニケリ」中入。「ケにアラタナル奇特哉、〳〵」ひしき出羽。「返す〳〵  も千代のこへ、〳〵 ウタフトカヤ」キウノ舞。打上る。 ▲一ようきひ 初次第。道行有。「ウイノ曲、〳〵、そそろにぬるゝ袂かな」ソトカ  ケリアリ。「アハレ小帳の舞成らん」クリに成。いろへ有候へし「ウイノ曲」マイ序。 ▲一はく楽天 初わきなのり。道行有。せりふ「小船一そうウカヘリ、かれ  を待て尋はやと存候」 ひしき一セイ。「あしはらの国もうこ  かし万代まてに」大夫入ヲミ合、ひしき乱序有。あいの入ミ  合ひしき出羽。「なミのツヽミのかいせい楽」 しんの序。 ▲にし木々 初僧次第有。道行□〔有〕。「ミちのくの、けふの里ニも着にけり、〳〵」ひしき女ノ次第。  「夜もすから、こゑふつじをやなしぬらん、〳〵」ひしか□〔す〕僧の□  出羽。「雪ヲめくらす舞の袖かな、〳〵」 はの舞打上る。 』 ▲ほとけのはら 初僧次第。道行有。「ほとけの御前ノいわれくわしく  御物語候へ」くり也。「さうとうのうちに入にけり、〳〵」中□〔入〕。「かねあととうそ  ありかたき、〳〵」ひしき一セイ。「草木もなひくけしきかな」序ノ舞有。 ▲吉野静か 初なのり。下かゝりハ次第か「いそきとをりおわすれけり」いろへ有。「しつやしつ」序/舞也。 ▲頼正 初僧なのり。道行有。比てロンキ也。「ゆふれいと、なのりもあへす失にけり、  〳〵」中入有。「夢ノちきりをまたふよ、〳〵」ひしき一セイ。「頼正か、仏果をゑん  そ有かたき」くり也。あとミなあしらへ也。 百▲なにハ 初大臣次第。道行有。せりふ聞合ひしき一セイ。本ノ音取を吹へし。「けに  道ひろき納なれ、〳〵」くりニ成也。「下ふしして待たまへ、花ノ下ふしに待ちたまへ」大夫入いるヲ見合 かと  まふり僧ノ乱序也。 一かなてして きやうけん出る シカ〳〵云 出は ひしき一セイ 也 「あそひたハふれ、色々のふ  かくハ、おもしろや」天女ノ舞。打上す 天女なき時ハ舞なし。「かむこ苔生、なにハのとりも、  お〔と〕ろかぬ御代なり、ありかたや」神舞きう。今春方ハかく也。打上る。 ▲くらま天工 初きく僧なのり。「大そうしやうかたにをわけて、雲をふんてとんて行、  たつき〔雲〕をふんてとんて行」 かとまふり有。のち一セイニてシやな王出る。「花やか  なりける出立かな」大へしミ有。打上る 天工たおしハおひたゝしや」はやしはたらき也。 ▲やうろう 初大臣次第。道行有。せりふ聞合ひしき一セイ。「なかれのすへの我等まて、  ゆたかにすめるうれしさよ、〳〵」 くりニ成。「おんかくきこへ花ふり□(ぬ)、是たゝことゝおもハれ  す、〳〵」 かとまほり有。のちひしき出羽。「たきつ心をさましつゝ、しよ□□〔てん〕らい  』  きやうの、やうかうかな」神舞有。きうの舞 打上す。 ▲松の山かゝミ 初なのり。「めんほくかゝミなるらん」 はや笛有。一たんきう□ 打上る。 「つミとかよ」舞□ 働在之候。 ▲せミ丸 さかゝミとも云。初女ノ次第。「ふしまろひてそなき給ふ、〳〵」ひしき一セイ。さうの音取。  「是皆しゆんきやくの二ツ也、おもしろや」かけり有。「せきあへぬ御なミた、たかひニ袖や   しほるらん」くりニ成也。 ▲七騎おち 初男次第。爰より舟出ス様ニ申合べし とひたつ斗に思ひ子の、わかれハあハれなりけり、〳〵」  かたひしきニてはやき一セイ。「心嬉しキしゆゑんかな」「いかにさねひら、か程め  てたきおりな□□〔れハ〕、一さし御まいへ」舞候へ 「畏候、心ろうれしきしゆゑんかな」男舞也。打上る。 ▲かも 初大臣次第。道行有。せりふ聞合ひしき一セイ。「神かくれに失にケリ、  〳〵」中入。大夫入るヲ見合、門まふりきやうけん ニてかんぬし 出る。「ミな〳〵そうとめたち  出られ候へ〳〵」ニてさかりはニてそうとめ出て シカ〳〵云。いさみたうへ  打上る「ミタウヘイツカ」ニサカリハ打上る     とミふれりや〳〵ニて  にてしやきり□(ニ)てそうとめかへる。カンぬし入ル時其まゝひしき出は吹也。  いて□□候ニテ  「さうかうしやうこん、まのあたりに、有かたや」 天女ノ舞打上る。三段まふ。とうへし(左)  「しんたいらいけんしたまへり」はや笛かる〳〵と。「あらありかたの御事や」舞  はたらき有。又す□□□〔はたらき〕ニも有。とうへし。 ▲くまさか 初僧次第。ミなあひしらひ也。 』  「夜ヲあかしくるふしきさよ〳〵」中入。「こゑ仏事ヲやなしぬらん〳〵」ひしき出は。/又早笛ニも 又はたらきニも有。 ▲夜うちそか 初次第。道行有。「なけく事こそあハれさよ、〳〵」 たん三郎  きやうたいかへる。はやツヽミうつ。はやツヽミのうち大ゆり吹。あいのもの出る。  四人出てはしかゝりにて「ときヲツくつてさわきける」ト言よりツヽミかしらヲ打申ハヤ笛ニ/成候  かへるヲ見合ひしき一セイ。 「時ヲツくてさハきけり」はや笛かる〳〵と。太  このあいたニもかけり有候。とふへし。  こハなく候。「からとのわきへそ待かけケル」かけり有。 ▲園城寺 かねひきとも云。初なのり。道行有。そのまゝひしき一セイ。「水  うミのなミもたうやうせり」はや笛少かる〳〵と。「三井寺のしゆらうに  ひき上たり、まのあたりなるきとくかな」 舞はたらきあり。 十▲せうき 初なのり。道行有。「かたちハさなから山ひこの、こゑはかりして   失にけり、〳〵」 はや笛かる〳〵と打上る。 ▲うのは 初大臣次第。道行有。せりふ聞合ひしき一セイあり。二ノ句あり。くせマイハなし。  「かいしやうにたツてうせにけり、〳〵」あひハつねのことし。あひノうたひ有てひしきにて出は  「神のつけをも待て見ん、〳〵」ひしき出は。「けにたへなれや、あら在かたや」神マイ。□□ 打上る「はまの  はかゝりノ舞一段打上る(右)。一段打上ル(左)。  まさこハへい〳〵たり。舞有。吹とめ呂ニてとむる。口伝。五段打上ル。 ▲うかい 初次第。道行有。せりフ聞合ひしき一セイ。「此身の、なこりヲ  シサヲイカにせン、〳〵」中入。「なとかわうかまさるへき、〳〵」「真女ノ月や出ぬらん」出ははたらき有(左)打上る。(右) きうの早笛有 ▲はん女 初シカ〳〵。女サシコヘニテ出る。道行 「袖の露、其まゝきへぬ身そつら□〔き〕、〳〵」  ひしき男次第。「我宿願の子細あれと〔は〕是よりすくにたゝすへまいら□する  にて候 皆々参□〔候へ〕」 ひしき一セイ。むすふ音取也。女出る。「しるしのなかるへき、 』  きんしやうさいはい」かけり有。「さひしき枕して、ねやの月をながめん、〳〵」くり。  「絵にかける」序ノマイ有。 ▲かねひら 初僧ノ次第。道行有。セリフ聞合ひしき一セイ。僧出る。「粟津にはやク  付ニケリ、〳〵」中入。「なきあと猶も弔ハん、〳〵」ひしき一セイ。のちシテかねひら「我ヲ  又かの岸ニわたしてたはせたまへや」くり成也。あとあひしらひ也。 ▲ふしと 初男次第。道行有。セリフ聞合ひしき一セイ「先我やに帰候へ」中入。「三かいふたくしう」ひしき  一セイ。あとあひしらい也。 ▲くわこ  ぬへ 初僧次第。道行有。せりフ「津の国あしやの里ニ付て候、日暮候テ  候程、やとをからハやと思ひ候」 ひしき一セイ。むすふ音取にて「其時有様  くわしくカタリ候へ」くり。「おそろしやすさましや、あらおそろしやすさま  しや」中入。「御経ヲとくしゆする、〳〵」ひしき出は。「おとつれケレハ大臣とりあへ  ス」 はたらき有。 ▲かうう 初次第。道行有。せリフ聞合ひしき一セイ。「かううカゆふれイあらハれ  たり、あととふらいてたひ給へ、〳〵」中入。「コヘヲアケ」 「一セイゆふせい〔一切有情〕せツかい三かいふた  あくしゆ」 ひしき出はアリ。「あらくるしのくけんやな」まいはたらき有。 』 ▲小袖そか 初次第。道行ハなし。「能々ものをあんするに」くり。「時宗と共に  祝言の、うたふ声」*男マイ。あとうたい出ス。打上ル也(左)  *ト言テ「雪ヲ見くらす舞のかさし」せりふ少あつて又「ゆきをめくらす舞のかさし」トうたひ/かへす也/爰ニ而おと/こ舞ヒ/シキテ/かゝる ▲はし弁慶 初弁慶ナノリ。「待居たり〳〵」はやツヽミニてきやうけん出る。きやうけん  帰る時ひしき一セイ。「待居たり、〳〵」ひしき一セイ。かけりも有。とうへし。 ▲花かた見 初メノなのり不可吹候。シテハうたいかけにて出ル。「いだきてさとにかへりける、〳〵」中入シテ  がくやへはいりたるおミ合、ひしきおとこノ次第。道行ノやうなるも有。そのすへに「みゆき  のくるまはやめん、〳〵」ト言てわき衆皆々座えなおる。そのうたい過てもせりふなし也。そこお  ミ合うたい過てから少相おおき床えなおる時分ニひしぐべし。さて一セイ吹たす也。「われおもともニ  つれてゆけ」ト言てかけり有也。のちに「みさきおはらふたもとかな」ト言ていろへニ成。又  舞ニもする也。大夫ニとふべし。さて又初メノ一セイノ所、居前ニせりふ言事も有げに候。  大かたハなし也。ゆふ時ハ「みゆきのくるまはやめん、〳〵」ト言てそのまゝ「皆々くぶ仕候へ」とわき  せりふ言よしニ候。大かたハせりふな□よしニて候。市右衛門吹申候時もせりふハ無ニて候。わきハ新之丞被致候。  上の方                                             下の方  』