シンポジウム「近世大名の能道具が語るモノガタリ」
2016年3月6日13:00~17:30
法政大学ボアソナードタワー26階スカイホール
「近世大名家の能道具は何を語るか―能面を中心に―」宮本圭造(法政大学)
「岡山藩主池田家の能楽関係資料―伝来と「有銘能面」を中心に―」浅利尚民(林原美術館)
「野崎家塩業歴史館の能面コレクションと岡山藩池田家」山内麻衣子(金沢能楽美術館)
「加賀藩前田家―12 代斉広・13 代斉泰―の能装束の場合」村上尚子(石川県立美術館)
「能道具の伝来はどう探るか―高島屋コレクションを遡る―」門脇幸恵(日本芸術文化振興会)
*同時開催:国立能楽堂企画展示「近世大名家の能楽」2016年1月6日~3月27日
宮本氏は、大名家の能面コレクションの形成過程を諸藩の古記録や面裏の記述をもとに明らかにし、所属品目録にあたる道具帳、面裏に記された所有者の情報、近代の売立目録をつき合わせることによって、コレクションの実態が解明できることを発表しました。福島相馬藩、青森弘前藩、越後長岡藩、盛岡南部藩等に伝来する能面とコレクションの実例をあげ、能面・装束の伝来についてのシンポジウムの導入としました。
浅利氏は岡山藩池田家では、藩が什器(宝物)管理する部署を作り、明治以降も規則を定めて厳重に管理していたことを『調度記』等の資料を示し指摘。池田家旧蔵能面には「春像」「藤波」等の特殊な銘がつけられたものがあり、これらの銘の由来は『御面控』等の資料から判明することも明らかにされました。山内氏は、幕末から塩業と新田開発で財を成した野崎家が、明治以降に収集した能面狂言面の紹介。コレクション中に、元来は岡山藩池田家伝来の「悪鬼」が所蔵されていることなどを解説されました。村上氏の発表は、能を愛好した加賀藩前田家の二人の藩主が自らの演能や主催の能にあたって作らせた能装束について。畳紙の墨書の内容と藩の記録等をつき合わせることによって、藩主の祝賀能に使用された装束を特定しました。門脇氏は、現在高島屋コレクションとなっている能装束の裏地の貼紙、付け札、印章や付属の畳紙を手がかりに伝来を特定したことを、具体例をあげて報告しました。高島屋コレクションには、高島屋謹製のほか、毛利家、井伊家伝来の装束があること、さらにその井伊家伝来分には前田家、西本願寺、越前松平家伝来のものが含まれていることを指摘されました。参加者約90名。