能楽伝書の国語学的研究
研究代表者 豊島正之(上智大学文学部教授)
研究分担者 岸本恵実(大阪大学文学研究科准教授)
白井純(広島大学文学研究科准教授)
竹村明日香(お茶の水女子大学文学部准教授)
高山知明(金沢大学文学研究科教授)
中野遙(上智大学大学院博士後期課程学生)
研究協力者 黒川茉莉(上智大学大学院博士前期課程学生)
【研究目的】
本研究は、謡・器楽伝書を中心に、能楽伝書類に見える言語に関する規範的記述を集成し、その解釈を通じて、言語規範の評価の方法を論ずる。規範的記述の集成のために、過年度から構築中の伝書類全文データベース https://joao-roiz.jp/NSS/ を今後も拡張し、それに基づいて、伝書特有語彙のシソーラス化を図る。非公開研究会を数次開催した上で、2020年度の公開シンポジウムに発展させる。
【研究計画・成果公開の方法】
2019年度
1. 既に構築中の能楽伝書データベース https://joao-roiz.jp/NSS/ の拡張。
a. 下間少進「童舞抄」「舞台抄」「叢伝抄」(以上「能楽資料集成」に拠るが、必要に応じて原本写真を参照する)、金春禅竹伝書類(「金春古伝書集成」に拠りたいが、著作権処理未了のため今後交渉を行なう)などの伝書類の文字列入力を行ない、或る程度自動単位切りを経た上で、手動校正を行なって、能楽伝書データベースに追加する。
b. 虎寛本狂言(笹野堅翻刻に拠る、過年度入力済)から、セリフ以外の演出指示部分を抜き出し、同上の処理を経て、能楽伝書データベースに追加する。可能な範囲で、虎明本・虎清本などの大蔵流台本の並行する演出指示部分を(新たに翻刻して)加えたいが、これは今年度中の完遂は困難であろう。
2. 上記データベースに基づいて、伝書特有語彙のシソーラス化を図る。
具体的には、規範的記述に使用される語彙の共起関係(語Aと語Bは共に用いられる)、上位下位関係(語Cは、語D・語Eを含む意で用いられる)などを統計的に処理した上で、語彙の階層関係に資する参照データを抽出する。
3. これらの情報リソースに基づいて、語彙・用字法・音韻論などの面からの、能楽伝書の規範的記述の整理を行ない、研究組織内部での非公開研究会を行なう。
2020年度
1. 上記の能楽伝書データベース、及びそれに基づく伝書特有語彙シソーラスの整備を続け、インタフェースを一新して公開する。
2. 前年度に引き続いて、能楽伝書の規範的記述の整理に関する非公開研究会を行ない、語彙・用字法・音韻論などの各分野に就て、これらの情報リソースに基づく論証手法の批判的検討を行なう。
3. これまでの研究成果に就ての公開シンポジウムを開催して、この研究分野と情報リソースの公知に努める。
4. 情報リソースとして、データベースは引き続き公開を続ける他、シンポジウム予稿集の公開、及び査読論文などによる研究成果の公表を行なう。
【2019年度 成果】
- 論文「キリシタン文献の典拠問題」豊島正之『国語と国文学』96巻05号、2019年5月、pp.74-87
- 論文「キリシタン版冒頭部の印刷順序」豊島正之『上智大学国文学論集』53、2020年1月、pp左1~12
- 論文「キリシタン版「日ポ辞書」のプロポジサン注記に就て」豊島正之『上智大学国文学科紀要』37、2020年3月、pp左1~14
- 国際シンポジウム招待講演
TOYOSHIMA,Masayuki(2019) Innovations in book production in the Early Jesuit Mission in Japan (International symposium : Historical legacies of christianity in east Asia, Sophia University, 5, Oct, 2019), Ricci Institute [ invited ] - 国際シンポジウム主催・convenor
TOYOSHIMA,Masayuki(2019) Convenor of : International symposia : Vocabulário da língua de Japão(1603) : a Missionary linguistic approach (21, Feb, 2020, Sophia University [Tokyo, Japan], & 23, Feb, 2020, Osaka Satelite campus of Sophia University [Osaka, Japan]) - 研究発表「キリシタン文献の典拠問題:聖人伝・奇跡譚の場合」豊島正之 第11回キリシタン語学研究会(中部大学名古屋キャンパス、2019年10月6日)