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野上記念法政大学能楽研究所 能楽の国際・学際的研究拠点

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野上記念法政大学能楽研究所
〒102-8160 東京都千代田区富士見2-17-1
TEL 03 (3264) 9815 FAX 03 (3264) 9607
© The Nogami Memorial Noh Theatre Research Institute of Hosei University. All Rights Reserved.

公募型共同研究 活動報告

演劇雑誌における能楽記事の調査研究

研究代表者 児玉竜一 早稲田大学文学部教授
研究分担者 飯島満 東京文化財研究所無形文化遺産部室長
今岡謙太郎 武蔵野美術大学造形学部教授
中尾薫 大阪大学文学部専任講師
寺田詩麻 早稲田大学非常勤講師
井川繭子 松竹大谷図書館館員
別府真理子 武蔵野大学能楽資料センター研究室員

【研究目的】
本研究は、能楽研究プロパーではない研究者によって、外側から見た能楽をめぐる調査・研究を行う。
日本の演劇・芸能史の上においても、現代の演劇シーンにおいても、能楽が持つ意義と価値はゆるぎない。その一方で、能楽とまったく関わりを持たない層、能楽を鑑賞する機会をまったく持たない層も多く存在する。そのような場合でも、たとえば「能面のような表情」といえば、それが能面に対する正しい理解であるか否かはさておき、ともかくもなにがしかのイメージを念頭に浮かべることが可能である程度には、能楽に対するなんらかの認識を有している。それは能楽という巨大な存在が、きわめて広範な層にわたって文化としての影響力を発信し得ていることの証左でもあるが、他方から言えば、能楽に対するイメージは広範囲にわたって散乱しているとも言える。
本研究では、そうした、能楽の周縁にあらわれるイメージ・認識を対象としたい。茶の湯に精進する方々が、落語「茶の湯」をおそらくは愉快に思わないのと同様に、周縁的イメージに正面から取り組む能楽プロパーの研究者は少なかろう。そこで、能楽研究プロパーではない研究者によって、そうした外部における能楽のイメージを広い範囲にわたって収集・分析することを最終的な目標としようというのである。その範囲となる能楽イメージが反映・表象されている対象は、芸能、文字資料、映像音声資料など、多岐にわたることが予想されるが、2年間という限られた時間を前提とするために、さしあたってまず演劇雑誌(とくに能楽雑誌以外の雑誌)を主対象とすることとする。
演劇に関わる定期刊行物は、能楽を主たる対象としたものを含め、膨大な数がある。その中に、能楽の記事がどのように現れるかは、演劇全般の中での能楽のイメージを反映する。能楽はいつから「演劇」の範疇に加えられることになるのかをめぐる、検証にもつながるだろう。能楽専門誌以外からの記事の論者、論法等、様々な角度からの検証により、外部からの視線、外部への視線をめぐる、さまざまな要素を抽出できるものと考えられる。さらにこのための作業を通じて、能楽と後継芸能との関連にまつわる資料の調査を進めることが期待される。

【2015年度 研究活動】
本研究では、能楽の周縁にあらわれるイメージ・認識を対象として、後続の芸能、文字資料、映像音声資料などの諸分野を調査対象とした。
中でも
1) 能楽雑誌以外の演劇雑誌における能楽記事の整理・調査
2) 能楽と関わりある後継芸能資料の整理・調査
の2点を中心に調査研究を行った。
演劇雑誌が能楽をどのように取り扱うかという問題は、能楽が演劇全般の中でどのように認識されていたかという課題に直結するため、能楽からは一見遠い雑誌で能を扱うものを選定し、雑誌『歌舞音曲』『演藝』『藝界』および『芸能』のデジタル化を行った。また『演藝画報』の総目次入力に着手したが、これは明治40年から昭和18年にまで至る膨大な全冊を入力完成するには至らず、今後も継続してゆく案件となった。
また、以上のような作業の前提として、従来まったく手つかずで、研究者の利便を妨げていた松竹大谷図書館の雑誌目録のデータ化を行い、約32,000件のデータを完成した。
また、松竹大谷図書館との連携では、同館が所蔵する歌舞伎書抜等(松羽目物等を含む)の整理とデータベース化を行うことができた。
他機関との連携では、別に、東京文化財研究所無形文化遺産部が所蔵するスクラップブックの内、能楽と舞楽に関するものについてデジタル化を行った。昭和期を中心にさまざまに製作されたスクラップは、各機関でその整理法を見いだしあぐねている事例が多いが、デジタル化によって研究者間で共有する方法が有効と考えられる。これについては、各種機関との連携を継続させてゆきたいと考えている。
映像音声資料については、『伝統芸能放送85年史』の記事から、能楽番組を演目・演者・流派などから検索できるように再整理して、NHK放送の能楽番組の整理・調査に使用できるデータベースが構築可能であることを見いだし、これに着手した。膨大な件数に及ぶためにこれも継続案件となったが、能楽の放送映像資料に関する必携データベースとしたい。

【2015年度 成果】

  • 論文「明治期の黙阿弥作品に見る「世話物」の展開」今岡謙太郎、『日本文学』2015年10月号
  • 論文「デニショーン舞踊団と七代目松本幸四郎――リンカーン・センター所蔵フィルムから」児玉竜一、図録『Who Dance?』早稲田大学演劇博物館 2015年12月
  • 評論「記録にみる戦後70年の歌舞伎」児玉竜一、『演劇界』2015年7月号
  • 解説「松竹大谷図書館所蔵・GHQ検閲台本」児玉竜一、松竹大谷図書館ホームページ2015年9月
  • 監修・評論「文楽人形遣い二代目吉田玉男 新たな舞台へ」飯島満、『伝統と文化』39号 2016年1月
  • 研究発表「歌舞伎のメディア/歌舞伎というメディア(嶋崎聡子・埋忠美沙)」児玉竜一、日本演劇学会 桜美林大学2015年6月20日
  • 研究発表「蝋管による音声・芸能記録とその再現(松本夏樹・清水康行)」児玉竜一、楽劇学会例会 早稲田大学2016年11月20日
  • 研究発表「1926年10月31日撮影映像より――七代目松本幸四郎とデニショーン舞踊団」児玉竜一、歌舞伎学会 共立女子大学2015年12月13日

 

【2014年度 研究活動】
本研究では、能楽の周縁にあらわれるイメージ・認識を対象として、後続の芸能、文字資料、映像音声資料などを念頭に置きつつも、さしあたってまず演劇雑誌(とくに能楽雑誌以外の雑誌)を主対象としている。
演劇に関わる定期刊行物において、能楽がどのように扱われるかという課題は、演劇全般の中での能楽のイメージを反映するものであり、能楽がいつから「演劇」の範疇に加えられることになるのかをめぐる検証にもつながる。能楽に対する外部からの視線をめぐるさまざまな要素や、後継芸能との関連にまつわる資料の調査を進めることが期待される。この調査・研究作業を通して、演劇に関わる定期刊行物の相互利用と相互補完のための体制を築き、諸機関の互恵的連関をはかり、演劇に関わる定期刊行物の総合目録化と総目次化のための基礎作業への一助ともなればと遠望している。
この観点から、本年度最大の成果は、CiNiiでも検索不可能であった松竹大谷図書館の、雑誌収蔵状況をデータ化し得たことである(約32,000件強)。また、雑誌『歌舞音曲』『演藝』『藝界』のデジタル化、『演藝画報』の総目次化に着手した。武蔵野大学能楽資料センターでデータ化が果たされていない、一般雑誌記事スクラップの入力にも着手した。次年度は雑誌『能楽画報』の欠本をデジタル化データによって補完するとともに、諸機関で整理しあぐねていることが予想されるスクラップブックの整理も検討したい。

【2014年度 成果】

  • 論文「新舞踊と歌舞伎舞踊」児玉竜一、片岡康子監修『日本の現代舞踊のパイオニア』新国立劇場情報センター 2015年3月
  • 論文「フィルモン音帯一覧」飯島満、『無形文化遺産研究報告』9号 2015年3月
  • 論文「近世演劇の上演と写本」児玉竜一、『日本演劇』 2014年10月号
  • 対談掲載「楽劇・舞台と放送(葛西聖司)」児玉竜一、『楽劇学』21号 2014年5月
  • シンポジウム掲載「放送と楽劇(葛西聖司・羽田昶・安田信一)」児玉竜一、『楽劇学』21号
  • シンポジウム掲載「演劇・芸能アーカイブの歴史と展望――演博・立命館・東文研を事例として」(飯島満・赤間亮・岡室美奈子)児玉竜一、『演劇学論集』59
  • 研究発表「日本における劇場の分布と演劇の階層化」児玉竜一、日仏演劇学会 ストラスブール大学2014年10月16日
  • 研究発表「「物着」の身体――人格変化の演技法からみる能の演劇性」中尾 薫、日仏演劇学会 ストラスブール大学2014年10月16日
  • 研究発表「A Media Hisotry of Kabuki and Actor’s Body(嶋崎聡子、埋忠美沙、Yasar Kerim、Jonathan Zwicker)」児玉竜一、AAS=アジア学会 シカゴ2015年3月28日
  • 研究発表「「夢幻能」という用語の使用例から能の近代史をたどる」中尾 薫、東アジア古典演劇の「伝統」と「近代」研究會
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