「冥の会」の先駆的・越境的な協同創作に関する研究
- 研究代表者:新里直之(京都芸術大学舞台芸術研究センター研究職員・京都芸術大学芸術教養センター非常勤講師)
- 研究分担者:木ノ下裕一(木ノ下歌舞伎主宰・ まつもと市民芸術館芸術監督団団長)
- 研究協力者:天野文雄(大阪大学名誉教授)
【研究目的】
本研究課題は、1970年代の日本における能・狂言と現代演劇との協同創作に焦点をあて、演劇集団「冥の会」の上演活動に関する調査・研究を行うものである。
「冥の会」は、1970年、五人の能楽師(観世寿夫 、観世静夫、野村万之丞、野村万作、宝生閑)と三人の新劇俳優(関弘子、森塚敏、山岡久乃)、そして六人の演出家ないし演劇評論家(天野二郎、石沢秀二、観世榮夫、早野敏郎、山崎正和、渡邊守章)により結成され、1976年まで能・狂言の表現技法にもとづく独自の現代演劇の創造を行っている。伝統と現代の垣根を超える越境的な集団創作と、緊密な協同作業を特徴とする貴重な先駆的事例でありながらも、これまで充分な学術的検討はなされてはこなかった。
これに対して本研究では、資料調査・文献研究、聞き取り調査、研究会での共同討議を通じて、「冥の会」の創作理念と協同作業の内実を、詳細に把握・再検討することを試みる。「冥の会」の上演活動を、能・狂言と現代演劇の関係史に位置づけると同時に、その意義について今日の舞台芸術創造の実践を念頭において考究することを企図としている。
本研究課題が重点的に取り組むのは、能・狂言の表現を媒介としてギリシア古典劇の再創造を図った次の三作品の調査・研究である。
・『オイディプース王』(1971年|潤色=山崎正和|演出=観世榮夫|出演=観世寿夫、野村万作ほか)
・『アガメムノン』(1972年|翻訳・演出=渡邊守章|出演=観世寿夫、野村万之丞ほか)
・『メデア』(1975年|翻訳・潤色・演出=渡邊守章|出演=観世寿夫、野村万作ほか)