「冥の会」の先駆的・越境的な協同創作に関する研究(2025・26年度)
- 研究代表者:新里直之(京都芸術大学芸術教養センター専任講師)
- 研究分担者:木ノ下裕一(木ノ下歌舞伎主宰・ まつもと市民芸術館芸術監督団団長)
- 研究協力者:天野文雄(大阪大学名誉教授)
【研究目的】
本研究課題は、1970年代の日本における能・狂言と現代演劇との協同創作に焦点をあて、演劇集団「冥の会」の上演活動に関する調査・研究を行うものである。
「冥の会」は、1970年、五人の能楽師(観世寿夫、観世静夫、野村万之丞、野村万作、宝生閑)と三人の新劇俳優(関弘子、森塚敏、山岡久乃)、そして六人の演出家ないし演劇評論家(天野二郎、石澤秀二、観世榮夫、早野敏郎、山崎正和、渡邊守章)らにより結成され、1976年まで能・狂言の表現を媒介とし独自の現代演劇の創造を行っている。伝統と現代、もしくは実践と研究の垣根を超える集団創作と、緊密な協同作業を特徴とする貴重な先駆的事例でありながらも、これまで充分な学術的検討はなされてはこなかった。
これに対して本研究では、資料調査、文献研究、聞き取り調査、研究会での共同討議を通じて、創作理念と協同作業の特質を詳細に把握し、「冥の会」の創作活動、その全貌に迫ることを試みる。また最も太い幹をなす作品系列である次の古代悲劇(ギリシア悲劇、ローマ悲劇)の上演に関する作品分析を行う。
・『オイディプース王』(作=ソポクレス|潤色=山崎正和|演出=観世榮夫|出演=観世寿夫、山岡久乃ほか|1971年)
・『アガメムノーン』(作=アイスキュロス|訳・演出=渡邊守章|出演=観世寿夫、野村万之丞ほか|1972年)
・『メデア』(原作=セネカ|訳・潤色・演出=渡邊守章|出演=観世寿夫、野村万作ほか|1975年)