能舞台上での謡曲の三次元放射特性の解明(2025~27年度)
- 研究代表者:木谷俊介(北陸先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科講師)
- 研究分担者:西村聡(公立小松大学国際文化交流学部教授)
- 研究分担者:蘆原郁(同志社大学研究開発推進機構嘱託研究員)
- 研究分担者:棚橋重仁(新潟大学自然科学系助教)
- 研究協力者:宝生和英(シテ方宝生流宗家)
- 研究協力者:木谷哲也(シテ方宝生流能楽師)
【研究目的】
能楽は様々な方向から鑑賞ができる舞台芸術である。つまり、空間の芸術である。これは、視覚面だけでなく、聴覚面でも言える。研究代表者は、これまでに2回にわたって、本共同研究において謡曲の良さに関わる音響特徴を明らかにしてきた。その研究の一環で、口唇から放射された音声が歌唱方法(謡曲やオペラ)によって異なることを示した。この結果は、耳に音がどの方向から到来するかといった空間情報も謡曲の良さに関わる音響特徴となり得ることを示唆している。しかし、現状では、左右上下方向のみの分析にとどまっており、三次元状に広がる謡曲の放射特性までは明らかにできていない。
そこで本研究の目的は、三次元に広がる謡曲の放射特性を明らかにすることである。42 ch 球状マイクロホンアレイの中心に話者を配置して計測した発話/歌唱データの分析を行い、謡曲の放射特性を明らかにすることを目指す。全体の平均の放射特性だけでなく、周波数ごとの放射特性を明らかにする。
さらに、謡曲の広がりが能舞台上でどのように変化するのか、その変化によって能楽師あるいは鑑賞者が知覚する謡曲に変化があるのかについても検討する。このために、能舞台上の音響特性をコンピュータ上で再現することを目指す。また、フォトグラメトリ技術を用いて、能舞台を視覚的にも詳細にコンピュータ上に再現し、舞台上の音響特性を組み合わせることで、舞台上での謡曲の広がりによる知覚の変化を詳細に評価することを目指す。