熊野詣(くまのもうで)
① 下野国の奈須兼基の子、花若は、和泉国真木尾寺に預けられ、学問を学んでいた。真木尾寺の僧のもとに、花若の両親が熊野参詣の途中に立ち寄るとの知らせが伝わる。僧は能力に兼基夫婦を出迎える準備を言いつけ、花若を呼び出すように命じる。
② 能力が花若を僧の前に連れてくると、僧は花若に両親の来訪を伝え、学問の進み具合を尋ねる。しかし花若は他の坊の稚児と遊び学問はおろそかになっていると答える。怒った僧は、花若に坊を出ていくように言う。
③ 我が身を情けなく思った花若は、ついに池に身を投げてしまう。
④ 能力が花若の入水を僧に伝え、花若の遺体が持仏堂に安置される。
⑤ 兼基夫婦が先達の山伏と共に熊野参詣を志し、その途中で寺にいる花若に会うために真木尾寺に立ち寄る。
⑥ 寺に到着した兼基は、案内に従者を遣わす。従者は能力に案内を乞い、能力は僧に兼基の到着を告げる。僧は面目のなさに対面を渋るが、能力にうながされ、兼基と対面する。兼基は能力に花若を連れてくるように命じ、再会を心待ちにする。僧が花若の入水を明かすと、兼基は驚き悲しむが、師匠が弟子を叱るのは当然のことであり、花若に問題があったことを口にする。
⑦ 花若の母が遺体と対面したいと言い、能力が持仏堂へ案内する。すると先達のが、遺体に触れてしまうと熊野参詣が叶わないと注意をする。母はこのまま故郷に帰ることになっても遺体と対面することを望む。そこで山伏は、夫婦に参詣のための浄衣を着替えて遺体と対面するように言う。
⑧ 妻は遺体にすがりつき、兼基は大きくなった息子に驚き、土産に持ってきた太刀や小袖を遺体に添え、夫婦ともに声をあげて泣き悲しむ。
⑨ 悲しむ夫婦の姿を見た山伏は同情し、不動明王に祈って花若の命を蘇生させることにする。寺の僧も祈祷に加わり、兼基に祈祷がおこなわれることを伝える。
⑩ 山伏が勤行を始めると、護法善神が出現する。護法善神は花若を生き返らせ消え去っていった。

