新たな視点による国際・学際的能楽研究
「新たな視点による国際・学際的能楽研究」では、国内外の多分野の研究者との共同研究により、能楽研究の範囲を広げていくことを目標とします。従来とは異なる分野からの参加も積極的に促し、新たな切り口による能楽および能楽界の諸要素の解明と応用をめざします。
◆2023年度
・英語版能楽全書の刊行に向けての国際共同研究
“A Companion to Nō and Kyōgen” 刊行に向けて第一期より続けてきた共同研究。執筆関係者全38名の国籍は、日本15 名、米国 14 名、ドイツ 5 名、イタリア1名,チェコ1名、シンガポール1名,オーストラリア1名。令和4年にオランダ Brill 社と出版契約を結び、校閲・索引作成・画像キャプション校閲を進めた。令和6年8月末刊行予定。
・能の技芸伝承とメディアに関する共同研究(演劇学とスポーツ科学との学際研究)
スポーツ科学と演劇学の観点から能楽の技芸伝承プロセスの解明をめざす学際的研究。師弟間のコミュニケーション、メディア利用と技芸の上達の関係、演者の感覚と外から見える姿の差異等について総合的に追究する。昨年度撮影したシテ方宝生流の金井雄資氏と子息の賢郎氏の稽古をモーションキャプチャデータを分析結果をもとに、金井賢郎氏に再度インタビューを実施。報告集の刊行に向けた研究会を開催。横山太郎編『わざを伝える 能の技芸伝承の領域横断的研究』(能楽研究叢書9、能楽研究所、2024年3月25日)を刊行。
・謡曲や能楽伝書に特化したデータベース検索のための「単語切り分け辞書」の構築
テキストデータの一部をXML形式に変換し、既存の辞書(中世文語UniDic)を用いた形態素解析を試行。一部のコーパス整備と能楽用の辞書の試作。国立国語研究所との共同研究。
◆2022年度
・英語版能楽全書の刊行に向けての国際共同研究
“A Companion to Nō and Kyōgen” 刊行に向けて第一期より続けてきた共同研究。執筆関係者全38名の国籍は、日本15 名、米国 14 名、ドイツ 5 名、イタリア1名,チェコ1名、シンガポール1名,オーストラリア1名。令和4年にオランダ Brill 社と出版契約を結び、現在、最終的な校閲作業中。
・江戸期版行謡本 500 曲の全文検索データベース構築
能楽と情報言語学の研究者 12 名による共同研究。他の公募型共同研究の成果と合わせ、能の「ことば」の包括的・領域横断的研究に向けたオンライン・リソース構築をめざす。今年度までに江戸期版行謡本 400 曲のデータ処理を終えた。なお、この共同研究および、若手研究者共同研究「情報処理技術を活用した室町期能楽伝書キーワード集成の作成」を円滑に進めていくため、国立国語研究所と「学術交流・協力に関する基本協定書」を交わした。
◆2021年度
・英語版能楽全書の刊行に向けての国際共同研究
“A Companion to Nō and Kyōgen” 刊行に向けて第一期より続けてきた共同研究。執筆者の国籍は、日本15名、米国14名、ドイツ5名、イタリア1名,チェコ1名、シンガポール1名,オーストラリア1名。原稿整理・編集等を進め、令和4(2022)年2月2日にオランダBrill社に全900ページに及ぶ原稿を送付した(令和4年5月に査読を通過し、現在、契約準備中)。刊行に合わせたシンポジウムは令和4(2022)年度に延期。
・江戸期版行謡本500曲の全文検索データベース構築
能楽と情報言語学の研究者12名による共同研究。他の公募型共同研究の成果と合わせ、能の「ことば」の包括的・領域横断的研究に向けたオンライン・リソース構築をめざす。江戸期版行謡本200曲のデータ処理を終えた。
・東京2020オリンピック・パラリンピック能楽祭パンフレットへの能楽解説執筆(日本語・英語)
英語版能楽全書刊行に向けての共同研究でできたネットワークを利用。能楽研究所の日本人メンバー4名、外国人研究者2名により、能と狂言の基礎知識・歴史・演技・装束・面等についての解説を執筆した。同解説は、能楽協会のウェブサイトからも閲覧可能。
・世阿弥伝書のデジタル写本の作成および書承・伝播・受容の分析
外国人特別研究員として来日中のハナ・ミガーヒ氏と拠点の山中とでおこなう共同研究。コロナウイルス感染拡大のためミガーヒ氏の来日が遅れたが、初年度は世阿弥伝書の本文テキストの打ち込みと、世阿弥伝書の記事による能作品の作者情報の確認までをおこなった。
◆2020年度
・英語版能楽全書の刊行に向けての国際共同研究
内外の研究者約40名による国際協働プロジェクトの最終段階として、『英語版能楽全書』(序:総説。1:能楽の演技・演出。2:能の歴史。3:現代の能楽を成り立たせているシステム。4:能の文化・能と文化。5:能の受容。6:作者研究。7:能楽伝書と評論。8:能楽のマテリアルカルチャー。9:狂言。付:用語リスト・参考文献リスト等)の刊行をめざし、原稿の補訂および編集作業を進めていましたが、コロナ禍の中、資料の最終確認や掲載画像の選定などが予定通り進められず、また編集メンバーの入院や家族の感染などの事例もあり、完成にいたりませんでした。刊行に合わせておこなう予定のシンポジウムも延期となりました。ただし、各セクションの研究自体は深化し、編集作業も継続中です。一部はウェブ上での試験公開(公開範囲限定)をおこないました。
◆2019年度
・英語版能楽全書の刊行に向けての共同研究
内外の研究者約40名による国際共同研究を進めました。「文化史的視点の導入による能楽史の再編制」と「比較演劇的観点による能楽の分析」を二本の柱とし、能楽論や作品の分析、歴史的過渡期(戦国期・明治維新・軍国主義の時代等)の能楽のあり方、能楽の宗教的背景等、資料に基づく従来型の研究を強力に進めるとともに、現代の能楽の経済基盤や人材育成、素人の問題、近現代の知識階級と能楽の関係、能楽に関わるマテリアル研究等、多くの新しい問題にも取り組みました。
2019年度はその成果としての『英語版能楽全書』(序:総説。1能楽の演技・演出。2能の歴史。3現代の能楽を成り立たせているシステム。4能の文化・能と文化。5能の受容。6作者研究。7能楽伝書と評論。8能楽のマテリアルカルチャー。9狂言。付:用語リスト・参考文献リスト等)の英語原稿がほぼ完成し、編集段階に入りました。