研究集会「国語学から見た能楽伝書」
テーマ型共同研究「能楽研究所所蔵資料に基づく文献学的・国語学的研究」(研究代表者:小林健二・宮本圭造)のひとつとして、能楽資料に基づく国語学的研究が上智大学の豊島正之教授を中心に進められている。その成果の一部公開を目的として、2016年10月16日に研究集会が開催された。プログラムは下記の通り。
於、法政大学市ヶ谷キャンパスボアソナードタワー26階A会議
14:00「能楽伝書をデータベースを用いて読む」豊島正之(上智大学)
14:50「江戸の音声記述と能楽伝書との関係」高山知明(金沢大学)
15:40「謡曲の音声――現代と室町期」坂本清恵(日本女子大学)
16:05 コメント 白井純(信州大学)、岸本恵実(京都府立大学)、竹村明日香(お茶の水女子大学)
豊島氏は、記事の関連性や言説の系統が見えにくい能楽伝書の整理・系統立てにはデータベース化が重要であることを指摘、データベース化の進捗状況の報告とともに、能楽伝書における「五音(ゴオン/ゴイン)」の混乱等を例にデータベースを活用した講演をされた。高山氏の講演は『蜆縮涼鼓集』に見える例語と謡曲の関係を中心とした「四つ仮名」の発音法をめぐるもの。坂本氏は、世阿弥自筆本・明和改正謡本・『謳曲英華抄』・現代の謡本から、謡の連声の変化を指摘する講演であった。国語学的知見での能楽伝書の有用性と広がりに期待が高まる研究集会となった。参加者35名。